「「師匠のとこで戦い方を勉強してたぁ?!!」」
「うん。あ、あとスティーブンにはちゃんと定期連絡してたわよ」
「ちょっスティーブンさん聞いてないっすよ!」
「ああ、聞かれてないからな。」

あっけらかんと答えるスティーブンさんに思わず肩が落ちる。この人のことだ、俺を見てずいぶんと愉快に思ってたんだろ。旦那も口があきっぱなしなあたり、聞かされてなかったんだろう。(この人隠し事できねーしそもそも戦闘してるなんて止めに行きそうだもんな)

「レオおめーは」
「知ってたっす。ていうか普通に会いました」
「はァ?!!」
「血界の眷属の気配が視えたので駆けつけたら……なんか輸血パックを取りに来てたらしいっス」
「思わずやっべ!って言っちゃったわよあの時」
「うああああ気に入らねえ!!何が気に入らねえって陰毛は知ってた事実が!!!」
「陰毛じゃねーし!!!」





▼▼▼





ぎゃいぎゃいと騒ぎ立てる僕たちに向けて、スティーブンさんの「さて」の一言が緊張感を取り戻させた。不平不満を漏らしていたザップさんも、それを茶化していたナマエも、一瞬で顔つきが変わる。

「途中まで私も同乗していた航空機がHLに到達すると思う。そしたら真っ先に対象は引き千切られた下半身の回収をしに来るでしょうね、お師匠様?」
『うむ、さすれば奴は合体、反撃も視野の内じゃろう』
「ああン?合体?」

張り詰めた空気は、立つのがやっとなほど、重い。

『そんな事になれば、今度両断されるのは貴様らのうちの何人かじゃ。腹から裂かれて生き残る自信がなければ……せいぜい頑張る事じゃな』
「お師匠様、来るよ』

ナマエの言葉を合図にクラウスさんがGOサインを出す。僕は必死に諱名を視ようとするが、衝撃と靄で半分しか読み取れなかった。僕の状況を把握したクラウスさんが僕のことを抱え上げ……抱え上げ?

「レオ」
「ナマエ……?」
「うふ、頑張れ!」
「やっぱそういうことああああああああ?!!!」

クラウスさんに抱えられたまま、ザップさんも一緒にビルの屋上から真っ逆さまに落ちていく。無事着地したものの、ザップさんが敵の再生能力について不気味なことを言うから視るにみれない。
ふと眷属とは別の、不思議なオーラを視た。これは……何だ?中にいるのは人間なのか?「慌てず確実に」と宥めてくれたクラウスさんの言葉に我に返った僕は再び意識を眷属へと集中させた。





▼▼▼





『打ち合わせ無しの同時行動にしてはやりおるな……』
「……自慢の仲間たちですから」
『それは、彼奴もか』
「彼奴も、です。クズでもデブでも、彼奴も。」

お師匠様は私の言葉に驚いたのか、一拍置いてからそうか、と返した。今のライブラは、このメンバーだから良いのだ。だからクズでも何でも居てくれなきゃ困る。……じゃあ、私は?

『ナマエよ』
「……ん、はい?」
『老婆心から教えてやる。お前は考える前に動いた方が良いぞ。その方が良い結果を生むだろう』
「………肝に命じておきます」
『して、儂は去るとするか。片もつきそうじゃしの』
「え?ツェッドくんは?」
『置いてく。奴のことも頼んだぞ』
「いやそれ本人に確認した方が」

いいんじゃないっすか、と言い切る前に師匠の姿は消えてしまった。先程ザップが戦闘の最中、ツェッド君もお師匠様の被害者だと言った。……バカにしては強ち間違ってないコメントかもしれない。

「まあ、こんな理不尽もHLなら日常かぁ……」

そう呟いた私は、戻り着いた非日常が日常のこの場所に……ささやかな安心感を抱いたのだった。

ラストスパート

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