「んも〜〜〜〜う!久々の女子会なんだからもうちょっと嬉しそうにしなさいよねェ」
「アリギュラ、お招きいただけるのは光栄だけどさ……女子会じゃなくてただの拉致なんだよね、毎度思ってたけど」
こんにちは、本日晴天、今日も今日とて拉致まっしぐら。どうもナマエです。ツェッドくんと共にHLに戻ってきてから暫く、慌ただしかったのが漸く落ち着いたので休暇を満喫しよう!と街中を歩いてましたところ、まあ、釣られてたよね。んでもってそのまま拉致られたよね。私だってたまには平和に過ごしたいよ。そんな気持ちを知ってか知らずか、百面相してるけど大丈夫?とアリギュラが訊ねてきた。ぜんっぜん大丈夫じゃないです。
「婚姻届なんかちゃちゃっとサインして出しちゃいなさいよぉ〜……あ、日付とかこだわる派だったァ?ごめぇ〜〜ん」
「毎回そうだけどなんで私のプライベート筒抜けなのおぉ〜〜〜……別にこだわってないですうぅ……」
もうヤダ、と私は顔を突っ伏したい気持ちでいっぱいだったが、これでも英才教育を受けた身、TPOは弁えられるのだ。此処は新異界料理店『モルツォグァッツァ』、世界から多くのVIPが訪ねることで有名なHL屈指のレストランだ。最低限のマナーは守らんと反射的に背筋がのびる。
「もー!せっかく帰って来たから奮発したんだから、お料理もお喋りも楽しみましょ〜よぉ?」
「拉致犯がそれ言うの?」
「やだ、オトモダチじゃなぁ〜〜い」
ツレないわねぇ、とボヤいたアリギュラは慣れた手つきでパスタを巻いて口に運ぶ。私もつられてパスタを食べる。……料理長また腕上げたな。
「……あ、そういえば」
「何々?!ガールズトーク???」
「違うワァ……来月辺りに此処で食事会入ってたなって思って」
確か何処かの国王様が来るとかで、スティーブンさんがすごい必死の形相してたなぁ……と思い浮かべ、僅かに残っていた前菜を完食する。下げられていく食器を眺めながら、私は果たしてザップやレオ達にこの料理を与えるのは危険すぎやしないかと思った。いっそ留守番させた方がいい気がしないでもない。
「あー……考えるのをやめよう。美食に浸ろう。拉致なんてなかったんや……」
「ちょっと急に現実逃避しないで怖いワヨ」
「……ずっと気になってたんだけど、」
続きを言葉にしてどうなるのだろう。迷う私をチラリと見て一瞬だけアリギュラの食事の手が止まった。数秒の沈黙。今更である事には変わりないし、彼女たちのような異次元の存在に訊くだけ無駄だと分かりきっているが、訊かずにはいられなかった。
「どうして私なの?」
「……フーン、そこ、気になっちゃう?」
「更に言うなら、毎回丁寧に生かして帰すのも、貴方達みたいな存在からしたら手間のように思うのだけど」
「……前に言わなかった?アナタは私達の特別でお気に入りなの」
まァ、フェムトの奴は単にモルモット的な認識かもしれないけど!と言いながら足を組み直す姿は、それでも威厳を感じさせる。やはり彼女は王と呼ばれる一人である事に変わりないのだ。私は運ばれてきたデザートを見て、ようやっと解放されるな、なんて呑気に考えているから、感覚が麻痺しているなと自嘲せずにはいられない。
「……アナタ、混血じゃなくなったのね」
「体内で毎日殺し合う血なんてたまったもんじゃないからね」
「フェムトが残念がってたわ」
「ほんとにモルモット扱いじゃん……」
「でもアナタの寿命を心配してたのは嘘じゃないわよ。私達だってお気に入りを無下にするほど良心捨ててないから」
それを言ったら、私はこれだけ拉致だの何だのされてる相手と普通に卓を囲む事を許してしまう程度には狂っている。それだけ彼女達ー特にアリギュラとは関わってきたし、異質な存在であろうと、無害でさえあればただの恋愛話が好きなだけの少女なのである。愛が行き過ぎているだけで。そしてその行き過ぎた愛を実現出来てしまう知性と能力を持ってしまっただけで。
最後のひと口を口に運び、私はそっとデザートスプーンを置いた。先に食べ終えていた彼女は楽しそうに頬杖をついて此方を見ている。
「届を出した日には盛大に祝わなくちゃ。また此処が良いかしら?」
「大人しく放っておいてくれたら最高なんだけど……」
「混血じゃなくなった人間に会いたいってフェムトの奴言ってたから祝わなくてもまた呼ばれるわよアナタ」
「最悪な次回予告じゃん」
アリギュラの次は堕落王なのかよ、と内心毒吐きながら肩を落とした。今回のガールズトークはまたもや、油断した私の飲んだ眠剤入りのアップルティーで終幕となった。
(またね?可愛い可愛い私達のお気に入り)
幕間の新異界ティータイム