「なーなー、ナマエサンって苦手なことねーの?」
「苦手なこと?というと?」
「なんかナマエサンって何つーかこー、何でも卒なくこなすタイプに見えるんだよね、俺。だから苦手なことってあんのかなーって」
五条先生はお酒ダメじゃん。さらりと言う悠仁くんは、本当にストレートだなぁと思いながら私は思考を逡巡させた。育ちのせいか苦手、という感情がそもそも欠落してる気もするが、折角の話題なので考えてみることにしよう。
「悠仁くんから見た私って、苦手なこと、ないの?」
「だって生活周り問題なし、勉強だって俺らの見てくれるし、食べ物の好き嫌いもないイメージ…」
「あるよー好き嫌い、食べ物の」
「わ、悟くんおかえり」
突如談話室に現れた悟くんは何処から聞いていたのか、音もなく私たちの会話に入り込んだ。流石の悠仁くんも驚いたのか、珍しく挨拶も忘れて口が半開きである。閑話休題。
「私何か残したことあったっけ?」
「うわこの子無自覚なの?怖いなぁ」
「ねね!先生教えて!ナマエさん何が苦手なの?」
「確証は無いけど、面白いから検証してみようか」
「「ケンショー?」」
「せっかくだから野薔薇と恵も呼んどいで。みんなでりっぱ寿司行こう」
「回転寿司……?」
怪訝な顔をする私を他所に、悠仁くんは何か思い至ったのか、ああ!と声を上げてから二人を呼びに行ってしまった。……一体なんだというんだ!
「……で、結局何だったの?私の苦手なもの」
りっぱ寿司でたらふく食べた生徒たちは、すっかりデザートタイムでケーキやアイスを食べている。私は残り少ないコーラを啜りながら、視線だけを悟くんに向けた。得意げに口角を上げるだけの彼に少しムッとしていると、悠仁くんたちが一斉に私を見た。……と、いうよりも、私の食べ終えた皿の山を見ていた。
「皿の縁の色で、さび抜きかどうか分かるんスけど、何故かナマエさんの取ったやつ、全部さび抜きなんスよ」