11.5

 からり、と音を立てた方に振り返ると、片手間にスマホをいじる研磨が一人。はて。先ほど出て行った黒尾と未だ姿を見せないナマエは何処だろうか。てっきりナマエと研磨は一緒にいるものだと思っていた夜久は、少しだけ海と目を合わせてから研磨に訊ねた。

「研磨1人か?ナマエは?」
「ナマエならクロに預けた。少ししたら来ると思う」
「フーン、てっきり3人で来ると思ってたわ」
「流石にうっすら自覚したナマエに気遣う配慮ぐらい出来るし……」
「………は?ちょ、研磨お前なんつった?」
「ナマエとクロ、多分これから面白くなるよ」

 いつもなら便乗して囃し立てるところだったが、研磨の薄ら笑いに思わず背筋がゾッとした夜久はただただ閉口した。隣の海は優しい微笑みを浮かべている。強いな、お前。っていうか黒尾は分かっていたが、まさかナマエもだったとは「あ、恋愛じゃなくて男としてやっと認識したってことね」アッハイすいません。

「まぁ……でも進展はあったってことでしょ?」
「海くんはナマエとクロ、どうなると思う?」
「多分研磨と同じじゃないかなぁ」

 変わらず微笑みながら、部室に近づく足音の方へと視線を向けた海は言った。まあ俺も多分同じこと考えてたと思うし、どうせならそうなってくれたら良いと思う。腹立たしいが、なんだかんだでお似合いなのだ。あの二人は。特にこの一年の黒尾の頑張りを見てきたから尚更良い方向に向かってほしいとは、思う。ただ、なんだろう。

「……可愛がってた妹を嫁に出すみたいでヤだな」
「ははっ、夜っくんの言うことちょっと分かるよ」
「二人はいつからナマエの血縁になったのさ」

 猫又一族はもう増えなくていいと心底嫌そうな顔で吐き捨てた研磨に思わず苦笑が漏れた。まあ、確かにそれもそうだ。再びからりと音を立てたドアをもって、この話は終わりにするとしよう。オチは当の二人が近い未来にでも用意してくれるだろうから。




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