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「やっと来たのかよ〜お前自分の所属言えるか?」
「夜久先輩なら私投げれますよ」
「おま、俺一応貴重なリベロだぞ?!やめてくれる?!!」
「さーて仕事仕事〜」
「ナマエこのヤロー……」
烏野陣営から連行された先で一番に口を開いたのは夜久先輩だった。けらけらと小馬鹿にしてくるので、笑顔で背負い投げのモーションをやってみせた。
言われたら言い返す、そんなことさえ出来なかったあの頃の私は、今の私を見たらどんな風に思うのだろうか。いつも通りざっと参加校のノートに目を通してから、ミニタブレットにペンを走らせる。こういった合同練習、特に合宿では座って書くなんて暇は無いので、電子機器をフル稼働させて後でノートにまとめ直すのが私式だ。試合の動画も記録出来るし、高くはついたが今後の為の投資と思えばなんてことは無い。
ふと視線を感じて顔を上げると、見慣れた満面の笑みが近づいてくる。どうやら今日の練習試合は、彼にとって調子良く終われたようだ。
「あー!ナマエいんじゃん!俺撮って俺!!」
「木兎さんお疲れ様です。赤葦くんは?」
「今日の試合全部終わったからアイシングしに行った!俺はナマエに会いにきた!」
「いつも言ってるじゃないですか、赤葦くん不在時は面会謝絶ですって」
「そんなこと言うなよ〜!」
タブレットで顔を隠すようにして木兎さんと対面する。嫌いなわけではないのだけれど、どうもこの人のこの勢いには慣れない。そういう意味では影山くんのあの勢いがもう少し加速したら……うん、考えないでおこう。きっとスガさんか澤村さん必須になりそうだ。
そんな現実逃避をしていると身体中を浮遊感が襲った。不思議なことに見上げてたはずの木兎さんと視線がかちりと合う。
「モー、目を離すとすぐ他校に絡まれちゃってこの子は」
「クロ先輩お、降ろしてください!」
「え?お姫様抱っこがいい?イイヨー」
「違います!!」
ひょいと横抱きにされて近づいた表情に汗が止まらない。そんな光景を、何が面白いのか木兎さんはゲラゲラ笑うしクロ先輩はいつもの悪い笑みを浮かべてるし、居心地が悪いったらありゃしない。私は視線だけで研磨くんに助けを求めてみたけど、木兎さんが苦手な彼は即座に目を逸らした。……見捨てられた!
「木兎さん、ナマエさんには後で一緒にって言ったじゃないですか」
「赤葦くんんん!もうこの人たちやだ、赤葦くん助けて」
跳ねるようにクロ先輩の手から逃れて素早く赤葦くんの背に隠れる。木兎さん対策は赤葦くんしか居ないのだ。研磨くんのように見捨てることはないと経験上知っているけれど、差し出されることがないようにガッチリと彼の上ジャージを掴む。
「あー……えっと、逃げないから流石に離してくれないか?殺される……」
「木兎さんそんな物騒じゃないでしょ」
「いや、じゃなくて黒尾さんが……」
「ヘェ……"赤葦クン"には、隠れるんだ?」
いつもより数段低い声は、いつの間にか私の背後から耳元で囁くように発された。何も言えずにそっと掴んでいたジャージを離すと、今度は俵担ぎで再び連行された。だからなんで?!!