無題:とある日の少女

 目を瞑れば、冷たい夜風と無機質な存在だけがそこにあった。着実に間合いを詰めてくる無機質なソレはもう何体壊してきたかも分からない。けれど、その数を考える事が無駄だとあっさり思考を投げる程度には、この戦地の前線に立っていたことは彼女が誰よりも知っていた。内線越しの支援は得ようと思えばいくらでも得られるが、彼女はそれをしないきらいがあった。最後に信じられるのは己の感覚と研いできた刃、そして少しの勘。結局体が知らないことはやりようがないのだ。そう、亡き剣の師に教えられた。
 少しだけ圧の増した夜風に触れて、間も無く敵である無機質が間合いに入ると感じ取った少女は、そのあどけない外見には似つかわしくない太刀に手を掛ける。少しだけ腰を落としてから浅く息を吐いた、一瞬。それだけで事は足りていた。

「完了しました、回収班お願いします」

 人間の何倍もの大きさのトリオン兵を一瞬で両断した少女は、あどけない笑みで通話越しに伝えた。
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