咲いてみてもここは黄泉

『色の異なるトリオン兵が増えてる……』
「今撃破したばっかなのに?!」

 無線越しに聴こえた情報に耳を疑った。その後すぐに撃破してもまた増えたという。つまり、常に二体の強いトリオン兵が存在するということ。操縦者が2人いるのだろうか。手元は変わらず盾持ちトリオン兵の腕だけを落としていたが、瞬間、ぞわりと嫌な予感が襲った。

「こちらナマエです!屋上に飛ばしてください!」
『冬島了解、いくぞ!』

 屋上へとワープすれば目の前に門が開かれる。ワープ直後、まだ足元が安定しない中でもなんとかスナイパー陣を庇うように立ち塞がろうとすると、目前の犬型トリオン兵が一刀両断された。

「ったく犬は嫌いなんだよ俺は!噛まねーよなこいつら!!」
「あ、荒船さん!」
「お前がワープしてきたから背後に気づけた。よくやった」
「レイジさん!」

 スナイパー陣に参戦していた荒船さんとレイジさんが既にライフルから近接武器に切り替えていて、私もそれに続くように湧き出る小型兵を擬似孤月で倒していく。一瞬膝がカクついたがなんとか踏ん張るが、それを見逃してくれる皆ではなかった。

「ナマエ!オメー生身でずっと戦いっぱなしだろ、怪我する前に一旦退がれ!!」
「あ、荒船さんでも!」
「でももクソもねぇ!!お前は死んでいい奴じゃねーだろうが!!!」
「……っ、こちらナマエ、一時退却します」

 ぱっと視界が変わる。途端に張り詰めていた緊張が緩んだのかドッと汗が流れて、その場に思わず崩れるように座り込む。自覚がないだけで相当足や腕はキていたようだ。あのまま荒船さんの言葉を無視して戦っていたらと思い、ひゅっと喉が鳴る。なんて愚かだったのだろう。私だけならまだ良い。私に巻き込まれる人がいたらと思うと、浅慮な判断だったと思わず両の手で顔を覆う。すると通信越しに聞こえたのは荒船さん達の声。

『一旦は凌いだ、次が来る時まで少しでも休んでさっさと戻って来い!』
「………!了解です!!」
「ほらとりあえず床座ってないで椅子置いで椅子」
「冬島さん、すいません……」
「おいちゃんなーんも責めてねぇよ。頑張ったな。ほれ、水飲め水」

 画面の向こうで、戦いはまだ行われている。それでも今は休めと優しい声を誰もがかけてくれることに気づけば視界が歪んでいたが、少しでも早く戻らなきゃと気にせず目を瞑れば、その勢いで水滴は頬を伝ってぽたりと落ちていった。



「未来がひとつ消えた……よかったぁ〜……」

 迅には視えていた。今回の襲撃で死に至るナマエの姿が。しかしそれが今、見渡す限りの未来の何処にも存在しない。誰かが分岐を絶ってくれたのだろう。己では変えようのない未来だったこともありホッと胸を撫で下ろしながら、緩めていた歩を再び速める。向かう先はお子様の居る場所。

「頼むから大人しくしててくれよ……」

 浮かぶのは雷神丸の姿。陽太郎を守ろうと街を火の海にしかねないその存在に、お子様の未来の読めなさに改めて落胆するのであった。
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