付き合って直に半年となる彼女の家に、初めて泊まることになった。
彼女は今頃、壁一枚挟んだ向こうのキッチンで洗い物中だろう。
節約で普段湯船に湯を張らないと言っていたのに、今日は私が来るからと入浴剤まで入れた豪華な風呂を用意してくれた。
少し前に届け物で仕事終わりに自宅に寄った時の彼女から香っていた、あの風呂上がりの匂いが私からもするのだと思うとくすぐったい気持ちになる。
テスト期間明け、採点の山で疲れた背中をほぐすように湯船で深呼吸していると、微かなメロディーが聞こえてきた。
耳をそば立てると、どうやら彼女が洗い物をしながら歌っているようだ。
一人で暮らしていると、風呂場にどれほど他の部屋から音が漏れるかなどあまり分からないのだろう。
最近流行りのしっとりとした恋愛ソングを、結構しっかり目に歌い込んでいる。
彼女は移動中や、一人の時は、サブスクアプリで音楽を流しっぱなしにしていると言っていた。
私という話し相手がいなくなり、洗い物のお供にきっと音楽を流しているのだろう。
そろそろ出ようかと思っていたけど、今出てはこの歌声が扉の開閉音に釣られて聞こえなくなり勿体無い。
私は湯船を波立たせないよう動きを鎮め、彼女の歌声に耳を傾けた。
最初の曲以外は私の知らない曲だった。
アップテンポでノリの良い曲調が4曲程続いたところで、ぴたりと声がやむ。
贅沢なバスタイムもここまで。
おかげで久々にこんなに長く湯船に浸かれた。
普段シャワーだけでサッと済ませてしまうが故に、立ち上がると少しくらっとして、服を着たらすぐに水分を取りに行くことを決意する。
この先君との関係が長く続いたら。
同棲や結婚をして、同じ家に暮らす時、再びこうしてひっそりと彼女の歌声を楽しむ事ができるのだろう。
そんな事を考えて、そんな未来が来る日が、今から楽しみになった。