「場所はここでいいか?」
「…うん、そうだね」
私と蓮二が話をする場所に選んだのは、学校から少し離れた小さな公園。蓮二と付き合っていた時も二人でベンチに座ってよくここで色んなこと話したなぁ。告白された場所もここだった。
そんな思い入れのある場所をわざわざ選んだ蓮二が、一体何を考えているのか私は段々分からなくなってきていた。
「早速本題に入ってもいいか?」
「うん」
「これから俺が言う内容は言い訳にしか聞こえないと思う。だから、信じるかどうかは名前に任せる」
「…分かった」
「あれは…あのキスは、畠山さんに仕組まれたものだったんだ」
確かにそれは言い訳にしか聞こえなかった。だけど、その内容が気になり蓮二の次の言葉を待つ。
「俺は以前から何度も何度も言い寄ってくる畠山さんを断り続けていたんだが、ここ最近彼女の行動が段々とエスカレーターしてきていた」
「…」
「俺への行動がひどくなるのはまだいい。しかし、最近になって名前にまで嫌がらせをするようになってきた」
「…え、」
「最近、物がよく無くなったりすることはなかったか?」
思い返すと確かに教科書や上履きが無くなることもあったし、特に蓮二との思い出の品が無くなることが何度もあった。だから最近は、そういうものは全て家に置いて行くようにしていた。
あの日もちゃんとバックに入れたはずの課題が消え、翌日の今日、畠山さんからその課題を渡された。恐らく、蓮二の言っていることは本当なんだと思う。
「流石に名前に危害を加えるのは止めてくれと何度も頼んだ。しかし答えは名前と別れ、私と付き合えばやめるの一点張りだった」
「…それで?」
「そして昨日畠山さんから、放課後教室へ来て欲しいと言われた。来てくれればもう名前への嫌がらせも貴方のことも諦めるから…と」
「うん」
「もう少し疑うべきだった。恐らく名前が教室の前へ来るのを見計らって強引に俺に…、」
その先は言いたくないのか、蓮二は言葉を詰まらせた。
「…せめて、私に相談してくれればよかったのに」
「そうすべきだったと思う。本当にすまない。今となっては全てが遅く、取り返しのつかないことをしてしまった。名前が俺のことを嫌いになってしまっても仕方の無いことだと思う。しかし、無理なことを言っているのは承知で言わせてくれ。…もう一度、俺と最初からやり直してくれないだろうか」
蓮二は1ミリも悪くないと言ったら嘘になる。だけど私を守ろうとしてくれた結果のこと。蓮二を責める気になんてなれず、私は隣に座っている蓮二の手をぎゅっと握りしめた。
「名前…?」
「私こそ、蓮二の話も聞かずに勝手に突き放してごめん」
「…信じてくれるのか?」
「うん。これからは何かあったらちゃんと私に言って?」
「今回のことでそれは十分肝に銘じている」
そう言うと蓮二は小さく微笑んだ。ずっと辛そうな顔をしていたので、私は少しホッとする。
「改めて私には蓮二じゃなきゃダメだって今回分かった」
「それは俺も同じだ。昨夜の名前からのメールで何も手につかないような状態で、夜も眠れなかったくらいだ」
「えっ、それはごめん…」
「名前が謝ることではない。畠山さんには俺と名前、二人でちゃんと話しに行こう。分かるまで」
「…うん。そうだね。それが一番だと思う」
私がそう言うと蓮二は繋いだ手は離さずにベンチから立ち上がった。どうしたの?という表情で蓮二の方を見上げていると、
「たまには学校をサボってデートもいいかもしれないな」
「えっ?蓮二の口から出たとは思えない発言なんだけど」
「たまにはいいだろう?」
「でも…部活は?」
「それには行く」
「ふふ。それじゃ部活の時間まで何処か行こうか」
そう言って握っている手に力を入れて立ち上がると後頭部に手を回され、蓮二の顔が近付いてきたかと思えば、唇が一瞬塞がれた。
「…ち、ちょっと。ここ外だよ?」
「誰も居ないし、たまにはいいだろう?」
「ぅ…ま、まぁ」
私の顔は真っ赤だというのに、一方の蓮二は何食わぬ顔をして「ほら行くぞ」なんて言って私の手を引いて歩き始める。
この先どんなことがあっても、私達なら乗り越えていける気がする。蓮二の横顔を見つめ、そんなことを思いながら私を引く蓮二の手を強く握りしめた。