「なるほど、名前とサッカーやってたのか。ただな、お前ら家の鍵くらいかけて行けよな」
家に帰ったら土門くんと一之瀬くんは先に帰っていて、家に入るなり床に正座させられました。(一之瀬くんに)
それもそのはず、家の鍵を掛け忘れたまま外に行ってしまったからね…うぅ。
土門くんは穏やかに話すんだけど、一之瀬くんは完全にご立腹。
今時宇宙人でもUFOに鍵くらいかけるぞ!と一之瀬くんは熱く言う。そんなまさか。
「そんなことよりマークは名前の下着見たって言うじゃないか!どういうことなんだよ!ちゃんと説明しろ!」
「サッカーを、やってて…」
「そんなことは聞いていない!俺は色を聞いているんだ!」
「この変態野郎が!」
土門くんがツッコミを入れたけど、一之瀬くんは正座してるマークくんの前まで来て肩を掴み、そう、まるで拷問のように問い詰めている。
「カズヤ、苦しいぃ…」
「マーク!お前が見たものを事細かに話すんだ!マーク!」
「マーク、ミーも知りたいよ!教えて教えて!」
「はは、そんなの今スカートめくりしちゃえばいいじゃないか」
ドガッと危ない発言をしたフィディオくんの頭を、一之瀬くんとディランくんとマークくんが思いっきり殴った。
わーん!と言いながら私に抱きつくフィディオくんの頭をとりあえずよしよし、と撫でておいた。
なんで私撫でてるんだろう…本当は私も殴るべきなんじゃないのかな、とちょっとだけ考えた。
「で、マーク。早く言えよ」
「うっ…いや俺は、見た訳じゃなくて…」
「え、マーク見てないの?ミーはてっきり見ちゃったのかと!」
「えーじゃぁなんで鼻血まで出すのさー」
横に並んで正座してたディランくんと、私に抱きついたままのフィディオくんもマークくんに話しかける。
ねぇ君たち、その話題で私がすっごい恥ずかしい思いをしてるっていつ気づいてくれるのかな?
「た、ただ必要以上に名前の脚が見えただけだ、!」
「バカだなマーク!見えそうになったら屈むんだよ!ゴールなんてどうでもいい、ボールは所詮ゴールに入るものなんだからほっとけばいいんだ!」
「お前本当にサッカー好きなのか一之瀬」
またもや土門くんにツッコミを入れられて、「当たり前じゃないか!」と一之瀬くんは憤慨していた。
「名前」
「何?一之瀬くん」
一通り騒いで落ち着いた後、一之瀬くんが私の座るソファーの隣に座った。
マークくんたちは帰ってしまって、私はテレビでアメリカンコメディを見ている最中だったんだけど、気にせず一之瀬くんの方を向いた。
「俺も君とサッカーしたかった」
寂しそうに私の手を握る。
そういえば一之瀬くんとサッカーをしたことはなかったな…。日本にいた時も、こっちに来てからも、私とボールを蹴ったことはない。
「私は秋ちゃんみたいに上手じゃないから、きっと一之瀬くんが疲れちゃうよ」
「疲れたっていいさ、俺は名前と一緒に過ごす時間が欲しい。それだけだから」
寂しげに笑う一之瀬くんの手を握り返して、「ありがとう」と言った。
「…俺今どんな顔してる?」
「少しだけ、寂しそう」
「そうか。俺、寂しそうなのか」
今度は困ったように笑いながら頭をかいて、何ともなかったように私に笑いかけた。
あ、いつもの笑顔だ。
「次は土門にGKやらせような!」
「どうして?」
「きっと華麗に避けてくれるからさ」
「あはは、面白そう!」
2人で笑っていると土門くんがやってきて「お前ら笑いながら見るなんてすごいな」と言われた。
テレビを見たら番組はホラー映画に変わっていて、私は叫びながらクッションを一之瀬くんの顔面に投げつけていた。