それから私はちょこちょこ烏野高校の体育館に顔を出すようになった。


とは言っても定時上がりで毎日行こうと思えば行けるが、毎日行っても特に皆にも影山くんにも変化がある訳でも無いので、


大体平日に1回、休みの日に1回の週に2回程度、特に曜日は決めずに通っていた。


当初影山くんは大変不服そうにしていたが、いつ来てもかっこいい影山くんを見せれるようにして欲しい。なんてふざけて言ってみたら今まで以上に練習に取り組んでくれてるようで嬉しいような恥ずかしいような複雑だ


ちなみに最初に行った日に武田先生とは連絡先を交換して、行く前日にはショートメールで連絡して許可証を準備してもらうようにしている。ありがたい!


そして今日は土曜日。今日は行くと連絡した日だ。





「苗字さん!」


「こんにちは!」


「「「ちわっす!」」」


体育館へ入ると影山くんが真っ先に気づいてくれ、嬉しそうに名前を呼んでくれた。それだけで私も嬉しくなる、可愛い。


「これ、この間の分です、どうぞ」


「あぁ!助かる。いつもありがとな」


「いえいえ全然。少しでもお役に立てれば!」


最近はただの見学だけではなく、マネージャーの清水さんがとった皆のデータを表計算ソフトを使ってグラフや表にして見やすくしたデータを作成し、それを烏養コーチに渡すようにしている。


元は頼まれて始めた事とはいえ、やはり役割をもらえるとここにいていいのだという理由にもなって嬉しくなる。


そして今日もいつも通り練習を見学して、休憩中話しかけてくれる皆とお話する。たまに体調悪いのを隠してる人とかいるのでそれにも注意しながら見るようにしている。


帰り道、じゃあまた今度。と皆に別れを告げて駐車場へ向かう


「苗字さん!!」


「あれ、影山くんどうしたの?」


「あの、明日って暇っすか」


明日は特に何も無い。家でごろごろ堕落した1日を過ごすか、1人で買い物にでも行こうかと思ってた所だ。


「特に何も無いよ、あ。でも週に2回って決めてるから明日も来て欲しいって言うのは…」


「いや、違います。明日はオーバーワーク対策でオフなんです。…あの、明日買い物付き合ってくれませんか。」


フリーズ


時が止まった。か、買い物?お出かけ?…デート?


いやいやいや全然付き合ってなんかないし違うし何勘違いしてるんだよばーか!


「買い物?何買いに行くの?」


「サポーター新しくしたくて。…あと最近服のサイズ合わなくなってきて新しいの欲しいんすけど、周りに服のセンス無いって言われて…」


「あぁ…」

影山くんの私服は見たことがないけど、確かに日頃着てるTシャツとかはあれはないなーと思うことが多々ある


「だから、一緒に選んでもらえないかなって思ったんすけど…だめですか?」


しゅんっ、としながら首を傾げながら聞いてくる。あっあざとい…!


「全然いいよ!私なんかで良ければ。どこに買いに行きたいとか決まってる?」


「あの、割と最近できた大型のショッピングモール、あそこどうですか」


「いいと思うよ!ちょっと遠いし電車乗ってくのめんどくさいから明日の朝車で迎えに行くね?家の住所教えて貰ってもいい?」


「いや!悪いっすよ!現地集合でも大丈夫ですし…」


「いやいや、私もこの辺の家だし、影山くんも歩いて来るくらいだから近いでしょ?変わんないよ!」


「…すいません誘ったの俺なのに迎え頼んじゃって」


「気にしないで?こう言う時は大人を頼るものだよ!」


どやぁっ!!!渾身のドヤ顔を決めた。日頃バレーを全力でやって皆の方が格段にかっこいい為、たまには自分もかっこつけたくなる。


「じゃあ明日10時くらいに迎えに行くね、気をつけて帰るんだよ。」


「はい、お願いします!」


そう言って私は家路に着いた。


そして私が去った後1人で笑いながらふらふらと歩く影山くんが目撃されたらしい。






顔面おっけー。髪の毛おっけー。服装おっけー。


これでイケメンの隣を歩けるか?…自信もって歩けると信じたい。


極力女子力を強化した私は傍から見れば彼氏とのデートに臨む女にでも見えるのだろうか。


そう自分自身で意識してしまい、鏡に映る私はみるみるうちに顔が赤くなる。まてまて落ち着け。デートじゃない、買い物にお付き合いするだけだから。相手もそういう気持ちだから、期待しちゃだめだ。

10時頃に迎えに行く、と影山くんには伝えた為そろそろ家を出よう


「いってきます!!」


気合いを入れる為に誰もいない部屋に向かってそう叫んだ。





そういえば影山くんの連絡先を知らないから家に着いても連絡が出来ない…不覚だった…


とりあえず指定された住所に着いたけど、どれが影山邸なのかわからない、困ったな。


ハザードランプをつけた車を道路の端に寄せて停める。車を離れる訳にもいかないし…と周りを見回した時、影山くんがこちらへ走ってくるのが見えた


え、ちょ、待って。全然私服センス悪くないじゃん、私は狼狽えてしまった。


こちらへ走ってくる影山くんはシンプルではあるが白のTシャツに黒のスキニーパンツ、黒のショルダーバッグを肩から提げていた。スタイルがはっきりと見えるコーディネートに脚の長さが際立って見えた。


か、かっこいい…!今だけは高校生だとかそんなの気にならないくらい影山くんにメロメロになっていた


「す、すいませんっ…待ちましたか?」


「いや、全然!どうぞ、乗ってください!」


や、やばい近づくと更にかっこいい。心臓が痛い。あまりのイケメンオーラに直視が出来ない。あれ、こんなに私ってイケメンに耐性無かったっけ。


「お邪魔します。お願いします。」


「はい!!シートベルトしてね、出発するよ。…ぜ、全然私服のセンス悪くないと思うよ影山くん」


「え!?…少なくとも一緒に歩く苗字さんが恥かかねぇように無難にってしてきました。そう言って貰えると嬉しいっす」


これまたふわっと笑った影山くん。私の心臓はトドメをさされそうだ。まだ目的地にも着いてないのに。


私の車は赤い5人乗り普通車である、後部座席が3人乗りになってるので運転席と助手席は多少ゆとりがある為


体の大きな影山くんでも特に狭そうでもなく安心した。乗る時に頭は若干ぶつけそうになっていたが、それはどうしようもない、ごめんよ影山くん


目的地に着くまでの間、影山くんと雑談をしながら過ごした。割と口数が少ない影山くんだがその分私がお喋りの為丁度いいバランスで私は楽しく過ごせた。しかし話してる途中途中で影山くんはじっ。とこちらを見つめる時があり


「えっと、どうかした?」


「あ。…えっと、俺苗字さんより背高いしいつも見下ろしてて。小柄な印象っていうか普段話してても俺達と同じようにはしゃいだり笑ったりしてるからそんなに年の差とか気にならなくて、」


「でもこうやって車運転してるのとか見ると大人なんだな、って感じて。ちょっと遠く感じるんすけど、かっけぇなって思って…見とれてたって言うか…」


バキューン!


影山くんのとんでも正直素直おだて発言は私の胸を貫いた。ど、どうしたらこんな素直というか言葉に全て出すような子に育てられるんだ(悟り)


「あっありがとう…照れちゃうな」


「…っす」


気づけばお互い顔が真っ赤になっていて、まだまだ到着には時間がかかるのに私のHPは残り僅かになっていた。


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