ありがとう
影山くんの発言に赤くなったり青くなったりしてる間にショッピングモールに到着した。
買い物はこれからなのにもう疲れた…高校生怖い…イケメン怖い…
まずはサポーターを見るためにスポーツ用品店に行くことにした。
「じゃあ、私適当に見てるからゆっくり選んでね」
「あざっす!」
さて、私はどうしようか。私自身他人に待たれながら買い物するのが苦手なので勝手に離れてしまったが、影山くんはどうなのだろう?
ずんずんと1人で店の奥へ歩いていくのを見る辺り割とどうでも良さそうだ。
影山くんが終わったら声をかけてくれるだろう。そう思い、特に興味も無いが店の中をふらふらと散策する
普段立ち入らない雰囲気の店であるためきょろきょろと周りを見回し、前を見ないで歩いていたのが悪かった
「うわっ!」
「!!」
誰かにぶつかってしまった
「す、すいません!!」
「いやいや、大丈夫ですよ!お姉さんは大丈夫ですか?」
にっこり笑って情けなくも転げてしまった私に手を差し伸べてくれる男性
よく見ればかなりのイケメンだ。うわー!!
「あ、ありがとうございます。」
「大丈夫ですか?足とかくじいてないですか?」
「大丈夫です!そちらは…?」
「大丈夫ですよ!すいません、僕の不注意で」
「いやいや!私がふらふら歩いてたのがいけなかったです、本当にすいません。」
イケメンな上に物腰柔らかで身長高くて見下ろされてるのに何故か威圧感を感じさせない、The・優男って感じの人だ。
大学生か何かだろうか。私よりは少し年下に感じる。
「何か探してたんですか?僕ここ何回も来てるんで案内出来ますよ」
「あ、いや!人を待ってる間の暇潰しに歩き回ってただけなので…」
ぶつかってきた相手に案内しましょうかなんて言い出せる優しさに驚いてしまった。
そして最近よく思うことだが、何故そんなによくしてくれるのか…とまた考えてしまった
「そうなんですか…お姉さん美人なので少しでもご一緒出来たらな、なんて思ったんですけど」
ふふっと笑いながらそう言った優男
「いやいやいやいや…本当、すいませんでした。買い物中お邪魔してしまって申し訳ない、失礼します」
まさかの口説き文句にかあぁっと顔が熱くなる。最近こんなんばっかだ。
冷静さが欠けてきてしまった為、一刻も早くこの人から離れるべきだ!と立ち去ろうとした時
「あ、じゃあ連絡先だけでも教えて貰えませんか?…今度はちゃんと会いたいです」
にっこり。そう笑いながら言う彼。ついでに強い力ではないが服の裾を掴まれている。あざとい。ずるい。
だがしかし、私はからかわれているという可能性を捨てない。そんな私は自分の容姿が優れているとは思わない。思えない。自信なんかない。
それがどうしてこんなイケメンに連絡先を聞かれる?理由は簡単。遊ばれるからだ!!!!
丁重にお断りしよう。そもそも私がぶつかったのがいけないのだから。そう思い彼に伝えようとした時
「何してるんすか及川さん。」
えっ?
「お…おいか…?」
「及川さんです。」
「オイカワサン」
「はい。」
「え、何でこんなとこにいんのさ飛雄」
「飛雄!?」
うげーっという顔をしたオイカワサンが影山くんのことを飛雄、と呼んだ。え、え、どういう関係よ…名前で呼ぶ関係って何…
「俺の名前です。」
「知ってます!」
「え、まさかお姉さん飛雄の彼女?俺飛雄がこんな美女と付き合ってるのなんか認めないからね??」
「別に及川さんに認められなくてもいいです」
「きーーーっ!!相変わらず生意気!!」
えっと…
及川さんはなんかさっきまでの印象と違い、凄く幼く見える。駄々こねてる。
というかどういう関係なんだこの2人は。
「あの、付き合ってないですからね!!…2人のご関係を聞いても?」
「なぁーんだ!彼女じゃないんだ!まぁ飛雄がそう簡単に彼女作れるとも思わないしね!なんせバレー馬鹿だし!」
ハーンっと盛大に鼻で笑い飛ばす及川さん、いっそ清々しいな
それに対してムッとしている影山くん。ちょっと可愛い。
「中学の時の先輩です。俺が1年の時3年でした。」
「そう!俺は飛雄より2個も年上なの!お姉さん、こんなバレー馬鹿辞めといて俺にしない?」
「あの及川さん。苗字さんは俺の買い物に付き合ってくれてるんです。勝手なこと言わないでください。」
「苗字さんって言うの?仲良くしたいな。連絡先やっぱり交換しない?」
うわあお互いに話聞いてないなぁ。というか及川さんはなんでこんなコミュニケーションお化けなんだ。最初こそ印象良かったがここまで来ると怖い
「ごめんなさい、私高校生とは連絡先交換しないって約束にしてるんです」
「え、なんで?」
「まぁ色々と…各方面に心配事は増やしたくないし…」
親御さんとか…先生とか…友人とか…見知らぬ大人と繋がってるのは知らない人からしたら心配になること。それが自分にとって大切な人なら尚更
私だってそうだ。学生の時に友人が見知らぬ大人とご飯行った。なんて聞いた時は心配した。その子は知ってる人でも親族でも教師でも無い人と個人的に繋がっているというのは心配になる
そんな心配を彼らの周りにさせたくない。せめて迷惑でない存在でありたい
「ふーん…じゃあ付き合ったら教えてくれるの?」
「はぁ!?」
「えぇ!?」
影山くんと同時に驚く。連絡先教えない時点でその先にどう進むんだ。
「う、うーん…まぁそもそも学生とは極力お付き合いはしないようにするかな。」
「…。」
「そっかぁ、苗字さん美人だからあわよくばーなんてあったけどそう決めてるなら仕方ないね。じゃあ今日も飛雄のお守りなんだ」
「お守りって!!…そんなんじゃないよ。私も楽しんでお買い物に付き合ってるの」
「そいつ、めんどくさいし生意気だから大変だと思うよ?せいぜい飛雄も苗字さんに愛想つかされないよう頑張れば?」
じゃーねー、そう言って及川さんは歩いていってしまった。
なんだか色々引っ掻き回されたような気分だ
「…苗字さん」
「ん?どうしたの?」
「絶対に及川さんのことは好きにならないでください」
「んん!?」
どうしてそうなった
「苗字さんの選んだ人なら仕方ないって思えますけど、及川さんだけはやめてください。あと出来れば日向も、月島も。」
「な、なんでそうなるの?学生とは付き合わないようにするって言ったよ?」
「…絶対に、付き合わないんですか」
切なそうにそう聞いてくる影山くん
周りは騒がしいはずなのに今だけは二人の間だけは音がないように感じた。
「…好きになっちゃったら仕方ないと思う。でもお付き合いまでは私が踏み切れない。」
「っ、俺、苗字さんのこと好きです」
……えっ、
◇
告白をされてしまった。しかもこんな所で。嬉しいけど、は、恥ずかしい
「でも俺、好かれる自信なんか無いです。だけどそれで苗字さんが俺の事好きになってくれなくても誰のものにもならないならまだ希望あるからいいんです、」
「でも、及川さんとか同じ高校生で学生とは付き合わないって決めてるのに付き合ったりしたら、俺とも可能性があったのに、チャンスがあったのにものに出来なかったって後悔するのは嫌なんです」
「だから、だから俺とも付き合えないなら、せめて他のやつのことも好きにならないで欲しいです…」
そこまで言い切って影山くんは俯いた
こんな風に考えていたなんて、想像出来ていなかった。影山くんの気持ちを考えてあげられていなかったなぁ
「影山くん、」
「はい。」
「好きになってくれてありがとう」
色々と思う所はあるけれど、とにかくこれが1番だ。ありがとう。私なんかのこと好きになってくれて、他の人のものにならないでなんて考えるほど好きになってくれてありがとう。
「でも、やっぱりお付き合いは出来ない」
「なんでなんですか。ずっと、そう言っているけど理由はなんですか?」
「…私の夢を叶える為にはちょっとしんどいなって思っちゃうの。それで無理したら傷つくのは自分なんだろうなってわかってるの。」
「私ね、結婚したいの。でも勿論誰でもいいわけじゃないし早ければいい訳じゃない。大好きな人と結婚したいなって思えた時に結婚したいの、」
「それでその人と家庭を持ちたいの。普通だって思う?でもねその普通って凄く難しくて有難いことなんだよ。」
「私は大好きな人と一緒に生きていけて、暖かい家庭を持つことが出来たら、仕事が楽しくなくても生きていけるの。そういう考え方をしてきた。」
「でもその相手を高校生に置き換えてみる。男性はそもそも女性より結婚を意識し始めるのが遅い。そして及川さんが26歳や27歳になる時はもう私は30歳超えてる」
「影山くんは更に歳を重ねてしまうの。しょうもない事って思うかもしれない。30歳超えてでも結婚すればいいって思うかもしれない。確かにそうなの、出来るんだよ何歳でも」
「でも20代で子供を産んで30代で育てていく、こんな女性が素敵だって思っちゃったの。子供と同じように元気に遊んであげるお母さん。歳を重ねればどんどん難しくなる」
「これが私の夢。叶えたいから高校生とは付き合わない。」
ここまで言い切って思った。こんなの私の理想を語っただけだ。高校生からしたら重すぎる内容。
慌てて弁解をしようと声を上げた時
「…すいません、勝手なこと言って」
そう言って影山くんは頭を下げた
「…なんで、謝るの」
「…どうにかすれば、付き合ってもらえるんじゃないか。なんて考えてました。でも苗字さんはもっと先まで考えてるのに目先のことしか考えられなくて俺…」
そんなの当たり前だ。私が高校生の時だってそうだった。結婚なんて先の先。そう考えていた。
「当たり前だよ!!気にしないで、私の事好きになったことまで謝らないで欲しい。」
「それは、謝りません。」
「あ、そ、そっか」
「ちゃんと苗字さんの夢、断る理由を知れました。」
「うん」
「だからこれからはちゃんと俺も先のことまで考えて、苗字さんに俺の事好きになってもらいます。」
「………えっと?」
「諦めませんから、俺。苗字さんのこと口説き落として、俺の奥さんになってもらいます。」
そろそろ服見に行きましょう、なんて言って先に行ってしまった影山くん。耳まで真っ赤になってるのは隠しきれてないけど
え、こんな激重な話したのに、受け入れてくれるの?その上結婚まで見据えて口説きに来るって言った?
「カッコよすぎるよ…」
思わず呟いて膝に手をつく。今にも倒れそうだ。顔から火が出そうなくらい熱い。
こんな状態でまだデート続くの?私は最後まで倒れずにいられるか心配だ
◇
影山くんはいつの間にか気持ちが切り替わっていたようでさっきあんな話をしたとは思えないほど買い物に夢中だった
そんな彼につられて私も彼が似合いそうな服を選ぶのが楽しくていつも通りの私たちに戻れていた
「こんなの影山くん似合いそう!あーでもサイズどうかな?腰ってどこ?」
「ここです」
影山くんは私の想像より遥かに上を手で示す
たっか!!あしなっがぁ!!!
今日の朝も思ったがホントにスタイルがいい。モデルさんにでもなれそう
◇
影山くんが欲しかったものの買い物は終わり適当に休憩がてらご飯も食べて、少し散策したら夕方になっていた
「そろそろ帰ろうか?」
「そうっすね」
駐車場につき、車に乗り込む。その際も影山くんはお願いしますとお邪魔しますを忘れない良い子だ。
そして車を発進させしばらくした時
「……あ。」
「ん?」
「今日夜家に人いなくて。夕飯外で適当に食べて来いって言われてたの忘れてました」
「え!!そうなの?今から戻るにもなぁ…てかまだ夕飯には早いしねぇ」
「…まぁ大丈夫っす。なんとかします。」
「料理できるの?」
「いや、出来ません。適当にバナナとか、プロテインとか飲みます。」
うーん…影山くんは結構ご飯沢山食べるのにそんな夜ご飯で済ませていいのだろうか。体は資本って言うしなぁ
あ、それならば
「うち来る?ご飯なら私も家帰って作るからそれで良ければだけど…」
「な!?そ、そんな簡単に男家にあげちゃダメですよ!!」
「ぬぁっ!?」
そ、そんなこと言われるとは思わなかった…心配してくれてる…嬉しい…
「大丈夫、影山くんは私に何もしないでしょ?私が嫌がることするの?」
「…する訳ないじゃないっすか」
ムッとしたままそう言う影山くん。やはり良い子だ。
「じゃあうち来る?」
「…お邪魔します」
「はーい!」
こうして買い物の帰り道、行先は影山家から我が家へと変わった。
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