家に来る?なんて誘っといてなんだが家に材料何も無いことを思い出し、急遽スーパーへ寄った


「…?なんすか?」


いつも寄っているスーパーなのにその中に影山くんがいると言うのがなんだか嬉しくなる。新婚の妄想でもしてるのだろうか。


「ううん、なんでもない!!!…影山くん何食べたい?今うちなんにもないから、ここで材料揃えるんだけど…」


「…カレーが食べたいです」


「カレー?おっけー!お肉は何肉派?」


「豚です」


「えー!そうなんだぁ。私鶏肉しか入れたことないなぁ…じゃあ今日は豚にしようか!」





「私ね、子供っぽいって言われがちなんだけどカレーとかハンバーグとかに目玉焼き乗せたくなるんだよね」


「あ、わかります」

買い物袋を持って2人で駐車場から部屋まで向かう

とは言ってもほとんど影山くんが持っているのだけど…


「わかる!?なんか見た目だけでもわくわくするよね!」


「はい、俺目玉焼きも好きだけど、温玉も好きで」


「美味しいよねぇ、カレーに乗せる?」


「いいんですか…!」


おや、今日1番の目の輝きだ


よし、母の味には勝てないと思うがこれはこれで良い。と思って貰えるよう頑張りますか





「どうぞ、狭い家ですが」


「お邪魔します!」


汚くは無かった…はず。この間掃除したし、うん。


呼んどいてなんだが今更部屋の汚さが気になってしまった。


「じゃあもうご飯にいい時間だし作るね、適当に座って待ってて!」


「はい、ありがとうございます!」


酷く嬉しそうに笑う影山くん、可愛い。そういえば男の人に手料理を振る舞うのなんていつぶりだ…


とはいえカレールーの箱の裏側見て作るのだから私の拘りなんて何も無い手料理になるのだけど


「あの、いつも家では何してるんですか?」


「家ではねー、テレビ見たり漫画読んだり、携帯いじったり…ぐだぐだしてるよ」

あはは、お恥ずかしい…日頃からランニングやトレーニング、ストレッチ、そしてもちろんバレーの練習に明け暮れている影山くんに話すような内容ではないと話してから気づいた。もう遅い。


「そうなんですか…」


そう言って、なんだかそわそわしてる影山くん。やっぱり急に家連れてこられて落ち着かないよなぁ


「もっと楽にしてていいからね、まだ時間かかるし」


「あ、いえ、…あの家の中が凄く苗字さんの匂いでいっぱいで」


「!?」


臭い…?臭いでしょうか…?


サァァァっと血の気が引く。見た目綺麗にしてあっても匂いは家の匂いとも言うし気づけなかったかもしれない。不覚だった…


「ご、ごめんね!?臭い?消臭スプレーいる??」


「いや!!違くて!!逆で!!!」


「逆?」


「凄く…いい匂いがして、落ち着かないっす」


そう言ってふぃっとそっぽ向いてしまった影山くん。わざわざ言わせんなって感じでしょうか…ごめんよ影山くん…大丈夫、私もしっかり照れてるから…


今日は何回顔が赤くなれば気が済むんだってくらいに顔色が忙しい。





「よし!出来た!」


「美味そうっす!!」


お皿に盛り、テーブルに並べる。スプーンを持ってきて影山くんに手渡す


「「いただきます!」」


本日二回目の影山くんと一緒に食べるご飯だ。


日頃は1人でこのテーブルで食べてるからか、目の前にいる影山くんを見て嬉しくなる。


やっぱりご飯は誰かと食べると美味しいなぁ、そう改めて感じさせてくれた。


「美味いです!」


「あ、ありがとう!作り方通りに作っただけだから大したことないかもだけど」


ひょんなことないでしゅ、とご飯を詰めながら言う影山くん


そんな慌てなくても逃げないのに、そう思ったら笑えてきてしまった。あぁ、幸せだなぁ今。


ただ一緒にご飯食べてるだけだけど、影山くんと一緒ってだけで凄く嬉しくなる。こう思ってしまう時点で私は影山くんに惹かれているのだろうな。


「あ、そういえば前々から聞きたかったんだけど、」


「…?なんすか?」


「日向くんとは中学から一緒なの?ずっと一緒にいるし息もぴったりだよね!」


「……違います。高校からでまだ合わせてから数ヶ月です。わざわざ一緒にいる訳じゃないっす、あいつには何も負けたくないから競ってるだけです」


ムムっと不服そうに言う影山くん。


「え!そうなんだ、いつ見ても近くにいるから暴言言いつつも仲良いのかと思ってた」


暴言を吐き散らす影山くんはよく見る。それに対して猫のようににゃ、にゃんだとう!?って威嚇する日向くんは可愛いので割とそのやり取りが好きだったりする


「違います。断じて。…でも、あいつはいてくれるんです。俺がトスを上げた先に。」


「…俺、中学の時にトラウマがあって。」


そう言って影山くんは中学生の時のこと、そして日向くんとの出会い、入学してからのことを教えてくれた。


バレーに対して常に完璧なイメージだった影山くんにトラウマがあったことに心底驚いた。そしてそのトラウマを抱えて第1志望の高校に落ちて、日向くんと出会った。


「そっか…話してくれてありがとう。それを聞いて尚更思った、日向くんと影山くんは運命的な出会いをした相棒なんだなーって」


「は!?そんなのやめてください。気持ちわりぃ…ただあの時誰も取ってくれなかったトスを日向は打ってくれる、それだけです」


ぷいっと顔を逸らしながらそう言った影山くんだったが、心無しか表情は綻んでいた。


「俺のことはもう散々話しました。俺は苗字さんのこともっと知りたいっす」


「私も自分のこと沢山話したよ?まだ知らないことある?」


「知らないことだらけです。苗字さんって何歳なんすか?」


「あれ?言ってなかったっけ?今年で22歳だよ」


「…6こうえ」


「そう、6個上。」


呆然とする影山くん。どういう意味なのそれは。幼く見えたのだろうか、確かに苗字さん俺たちと同じくらいはしゃいでますね、とか言われたことある気がする


でも!私はれっきとした!大人です!


「こう見えてもちゃんと大人ですよ!私!」


「あ、いや、大人には見えてます。けど、いざ6歳年上って言われると年の差あるんだなって思っただけです。」


「…諦めついた?」


「つく訳ないじゃないですか。俺はノリとか、気分とか、そんなんで苗字さんに恋してません。」


正直に言えば諦めないでいて欲しい、そんな思いが出てしまって恐る恐る聞いてしまった。


それに対して影山くんはきりっとイケメン全開な顔でイケメン全開なこと言ってる。むり、かっこいい


「…あ、ありがとう」


「…俺色々恥ずかしいこと言ってるんでそろそろ照れるのやめてください。」


!?そういう影山くんも照れてるじゃん!?真っ赤だよ!


そう言いたかったがそれを指摘しては可哀想なくらいに耳も頬も赤くなっていたので、言わないでおいた





しばらく一緒にテレビでも見ながらごろごろと過ごして、はっと気づく


「影山くん!そろそろおうち帰ろうか!?」


もうすぐ20時になろうとしてる、やばいやばい親御さんが心配する。部活でも無いのにこんな遅いのはおかしいだろう。


「嫌です」


「え!?」


「…だめですか?」


私が車の鍵と財布を手に影山くんに話しかけた状態、私は立ち上がっているのに対し、影山くんは未だ床に座り込んでいる


その為「だめですか?」と首を傾げてきた時こちらからは上目遣いに見えた。心臓が止まるかと思った。破壊力が今日もえぐい。いや、もはや私の防御力が低すぎるのだろうか。


「うっ…だ、だめ!!帰るよ!!」


「…わかりました」


見た目の暴力が強すぎてつい我儘を許してしまいそうになるが、ここは!私がしっかりしなくては!と足を踏ん張り言い切る。


しゅんっとしながら言う影山くんは実は計算して上目遣いとか首を傾げるとか使ってるのだろうか。なんて最もありえない推測を打ち消す。


車に乗りこみエンジンをかける


「あの、苗字さん」


「どうしたの?」


「また、手料理食べさせてください」


「私なんかので良ければいつでもどうぞ」


なんだ、そんなことかと笑いながら言う


「また家来てもいいですか?近いんですぐ来れます」


「いいよ、でもちゃんと親御さんに言ってくるのは忘れないでね。あと私がいるかどうかもわかんないからいなかったら来てもあげられないけど。」


「わかりました!!…まさかそれは許してもらえるとは思わなかったっす」


嬉しそうに笑う影山くん。最近本当によく笑うなぁ、なんて思って気づいた


確かに、連絡先教えるのはだめなのに家に来るのは良いっておかしくない!?


影山くんもそれに気づいててダメもとで聞いたら許可が出て嬉しそうにしてる。うわぁ…何も考えずに話してた。


でもこんなに嬉しそうに笑う影山くんを前にしてやっぱ無し。なんて言い出せず気づけば影山家に着いていた。


「今日はありがとうございました、楽しかったっす」


「こちらこそありがとう、楽しかったよ!じゃあまた学校でね」


「うす、失礼します」



こうして私と影山くんの初めてのデートもどきは終わった。


しかし私達の関係は以前より更に曖昧なものになってしまった


告白されて付き合わなくてでも諦められなくて家には来てもいい関係って何…


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