「お、影山ぁ!!どうだった?昨日ついにストーカーもどきを撃退したんだろ?」
昨日練習終わりに、そうドヤ顔で言っていた相棒に聞いてみる。しかし、
「……あぁ。撃退、した。」
「いや、目死んでるぞ!?」
撃退出来て、これまた晴れ渡ったようなスッキリしたような表情を見せてくれると思ったのに、なんだその顔!?
「なんだ?また違う問題でも出てきたのか?」
大人になって多少マシになったものの、未だコミュニケーションが苦手な影山。ストレッチしている隣に座って、話を聞く体勢をとってやる。
「……名前が、」
「おう。」
「好きな奴が、いるって。」
「………え、まじ?」
こくん、と頷きまた死んだ目をする影山。
これは……告白する前にフラれてるじゃんか……。
彼氏かと思ったらそうじゃないと知った時あんなにご機嫌で練習に来てたのに、今度は好きな奴がいるって言われてこの有様。
本当に分かりやすいよな……。影山を操るのは名前ちゃんが1番上手いのかもしれない。
それにしても名前ちゃんには好きな人がいるのかぁ。まぁ高校生だもんな、あっちからしたら俺達なんておっさんに見えるかもだし。
「まぁ……仕方ねぇよ、すぐには諦められねぇかもしれんけど、ずっと落ち込んでる訳にもいかねぇだろ?」
「……まぁな。ただ、……胸が、痛くて。」
なんだこいつ、ピュアか!?純真か!?
と言うか、こいつ恋とかした事あんのか?このコミュニケーション能力の低さで。
もしかして、これが初恋…!?しかも本人よくわかってねぇけども…!?
なんとも苦い初恋なんだ、年下、しかも高校生。そして告白する前にフラれる。辛い…辛すぎる……!
「影山、今度飯奢ってやるよ……。」
「…お前に奢られるほど、落ちこぼれてねぇよ。」
「影山くん、そういう所ですよ!?」
◇
「あれから飛雄くん、大丈夫なんかなぁ?」
「さぁ……元々口数少ないっすけど、更に少なくなったままでしたね。」
アドラーズといつも一緒に練習している訳じゃない。他のチームとも練習するし、勿論うちのチームだけで練習もする。
アドラーズとの合同練習を終えて、影山の様子はその間変わらず落ち込んだままだったので、俺と侑さんは心配が残った。
「まぁプレーにはそこまで影響してなかったから、意外とケロッとしとんのかもな!」
「うーん……どうなんでしょう。あ、俺今日はもう上がりますね。」
「お、そうなん?お疲れ!」
「お疲れっす!」
今日は夏が部活終わってから電話で聞きたいことがある、と言っていたので早めに家に帰る。
しかしこのまま家に帰ると夏が部活始まる前に家に着いてしまう。流石に時間があり過ぎるな。
そう思い、家の方向から逸れて、適当に歩き出す。
するといつの間にか影山の家の近くに来ていて、そういえば大丈夫かって話を侑さんとしてたなぁ、と思い出す。
そのまま歩いて行くと、高校が見えてきて。夏の部活は何時に終わるんだったかな、とスマホを開いて夏のトークルームを探していると、
「…日向さん?」
「え?」
顔を上げるとそこにいたのは、影山を狂わせている少女こと名前ちゃん。
「こんにちは、…飛雄さんに用事ですか?」
「い、いやいや!違うよ!たまたま散歩してたらこの辺まで来ちゃっただけ!」
「あ、そうなんですか!」
「…名前ちゃん、ここの高校だったんだね。」
「はい、家から近いので助かってます。」
「そっか。」
そう話してて、ふと気になってしまう。
名前ちゃんの好きな奴、どんな人なんだろう。影山には1ミリ足りとも脈は無いのだろうか。
別にあいつの世話を焼きたい訳じゃない、断じて!!だけど、ずっとしょぼくれていると会った時に調子が狂う。
からかって楽しむのも悪くないが、やはり挑戦的に笑うあいつと闘うのが楽しいのだ。
「……ね、名前ちゃん。今からちょっと時間ある?」
「え?……うーん、夕飯の準備があるので少しだけですけど。」
「少しでいいよ!全然!」
むしろ影山の家で夕飯の支度しながらでもいいよ!と言いかけたが、流石に名前ちゃんと2人、家主のいない家に上がり込むのは気が引けるし、もしバレた時のことを考えると背筋が凍る。
それなら、と頷いてくれた名前ちゃんと並び歩いて、近くの喫茶店に入った。
◇
「あのね、ちょっと時間とってもらったのは少し聞きたいことがあって…。」
「聞きたいこと?」
頼んだココアを飲んで首を傾げる名前ちゃん。やっぱり可愛いよなぁ、影山が好きになっちゃうのもよく分かる。
「その、……影山からちょっと聞いちゃったんだけど、好きな奴いるって本当?」
「!!!」
そう聞いた瞬間、ぶわ、と赤くなる頬。うわぁ、可愛い。と思った時には名前ちゃんが声を震わせて、
「な、なんて、なんて飛雄さんは言って……!?」
あれ?
「い、いや、ただ名前ちゃんには好きな奴がいるみたいだ。としか……。」
「そ、そうですか……。」
んん?
「でも影山気にしてたよ?どんな奴だろーって。」
「え!?ど、どんなって……。」
これはー…俺の勘だけど、
「ねぇ、名前ちゃん。」
「は、はい?」
「名前ちゃんの好きな奴って、影山?」
じゃねぇかな?
「!!?」
またしても分かりやすく首まで赤くなる名前ちゃん。なるほど!!そうなのか!!
「そっかぁー!そうなのかー!」
「ぜぜぜ、絶対に、い、いわ、」
「言わないよ!安心して?」
安心するのは俺もだ。良かった、どうやら相棒の恋路は順調なようだ。
放っておいてもきっと最後は上手くいく。良かった良かった。
「そっかそっかぁ、どんなとこに惚れたの?」
「ど、どんなとこって……!?と言うか、日向さんの用事ってこれですか!?」
「え?うん、そう。」
「な、え、こんな事知って何になるんですか!?」
いやぁ凄い事になるよ、影山が知ったらとんでもなく喜ぶだろうし。
「まぁまぁ!お兄さんに聞かせてみな?影山くんのどこがかっこいいんだい?」
ついにやにやと笑って聞いてしまう。にーちゃん気持ち悪い!!と夏の声が聞こえた気がする。
「ど、どこって……や、優しい所です。」
「え?どこ?」
優しい所ってどこ?
……あ。そういえば名前ちゃんにはめちゃめちゃ優しいんだったなあいつ。
「や、優しくないですか!?」
「い、いや!?や、優しい時も無くも……無くも無い…?」
ごめん、俺に対しては無いんだ。名前ちゃん限定の優しさなんだよ。
「影山に伝えたりはしないの?」
「そんな、おこがましいですよ……私なんか子供扱いですし…。」
おいおい影山くんよ、全然好意が伝わってないじゃないか!
「そう?影山すっごい名前ちゃんの事大事にしてるし、子供扱いなんかしてないと思うけど……?」
「大事にして貰ってるのは分かるんです、伝わるんです。でも、それも含めて子供扱いされているようで…。」
うーん?とにかく、今の影山の愛情表現だと名前ちゃんからしたら、子供扱いされてるようにしか思えないみたいだなぁ。
うんうん、次影山に会った時に助言してやろう。もっと女の子として見てやれってな!
「そっかそっか。でも、影山のこともよく見てやって?意外と名前ちゃんにメロメロかもよ?」
「え!?そ、そんな事ないですよ!?……と言うか、日向さんは飛雄さんと仲が良いんですね。」
「はい!?どこが!?」
「え、だって、凄い飛雄さんの事見てるって言うか、飛雄さんとよく話さないと私の話も聞かないでしょうし、」
「……高校からの仲だからよく話すだけだよ、あいつとは!決して!仲良しでは無い!!」
そういう関係では無い!!友達か、と言われても首を捻ってしまう。
やはりしっくり来るのは相棒。ライバル。その辺だ。
「そ、そうなんですか……?」
「そうなんです!……あ、ごめん、結構引き止めちゃったね。そろそろ出ようか!」
夕飯の支度があるのに、悪いことをしてしまった。
「すいません、お金…。」
「気にしない気にしない!お兄さんだからね!……じゃあ俺帰るから、名前ちゃんも気をつけて帰ってね!」
「はい!」
「またねー!」
「はい、また!」
名前ちゃんに手を振り背を向ける。
いつの日か来るであろう、あの二人がくっつく未来を考えてて、それは俺の助言があったからだぞ!!と永久にいじり続ける為にも、
次影山と会った時に言ってやる助言を、頭の中で思い浮かべた。
お日様の思惑
back/
top