「……名前、…おい、名前」


とんとんと叩かれる


誰………?


うっすらと瞼を開けば綺麗なお顔


か、かっこいい。だ、誰………あ、飛雄さんだ。


昨日は飛雄さんの家に泊めてもらったのだった


人の家なのにぐっすり熟睡してしまった、そして起こしてもらってしまった…!


「お、おはようございます!!!!!!」


「お、おう。おはよう。」


「あ、名前ちゃん起きた?」


ひょっこり、美羽さんが現れる


「おはようございます、美羽さん!」


「おはよう、ぐっすりだったね?」


クスクス笑われる。は、恥ずかしい……!


「名前ちゃん、こっちおいで。これからの事話そう?」


「…はい」


これから。どうしよう。


家に戻って………お金は全部無くなってしまった。現在高校三年生。進学はたぶんさせてもらえない。


高卒で就職。……それで家を出るしかない。


まだ高校三年生になったばかりと言うのに、一刻も早く卒業したくなる。


「ねぇ、名前ちゃん。昨日も言ったけどこのまま飛雄の家にいない?」


「は?」


声を上げたのは飛雄さん。あれ。


「何?駄目なの?」


「いや、駄目って言うか………駄目だろ。」


「なんで?」


「誘拐だろそれ。」


「違うわよ!やるならちゃんと、親戚さんに承諾得てやるに決まってるでしょ!」


「あぁ………いやでも駄目だろ」


「何よ、他に何かあるの」


「……知らない男と一緒に生活するなんて、駄目だろ」


「泊めたくせに?」


「1日泊めるのと暫くいるのじゃ話が違ぇだろ!!」


「じゃあ、名前ちゃんをあの家に戻すの?」


「……………………それも、駄目だろ」


「わかってんじゃない。じゃあ飛雄の家に居候ね、はい決まり。」


「名前はそれでいいのか?」


影山姉弟の攻防戦を見ているだけだった私に、飛雄さんは目を向けた


「わ、私は……家に戻った方がいいかと」


「本当に?ここにいるよりあの家がいいの?」


「……………っ。」


そんなのこっちの方がいい。


優しい飛雄さんと美羽さんがいるこっちの方がいい。


でもまだ私は学費を払ってもらわないといけないし、生活費だって自分で充分に稼げない。


色んな面でお金や面倒をかけてしまう。


「………私まだ学生なので、学費も生活費も自分で稼ぎ切れないです」


「そんなのわかってるわよ」


「……?」


「飛雄が全部払うわ」


「おう」


おう!?


「な、え、ちょ!?どういう事ですか!?」


「言ったでしょ、飛雄は日本代表にも選ばれるくらいのアスリート。しっかり高給取りだから、お金の面は気にしないで!」


「だからって、たまたま会っただけの私の学費を援助してくれるなんて、そんな、悪いです」


「俺が良いって言ってんだ。………受け取らねぇのか?」


ぐぬぬ………どんどん魅力的な話になっていく


そしてどんどん影山姉弟がニヤニヤ悪い顔になっていく、助けてくれてるのに何故。


「………いいんですか?」


「おう………あ、でも」


「?」


「あぁ、そうそう。名前ちゃん家事出来る?」


「……人並みなら。親がほとんど仕事でいなかったのでとりあえず出来る程度ですけど…?」


「じゃあいいわね!決まり!」


「??」


「これから飛雄の面倒見てね、名前ちゃん」


「え!?」


「俺、家事出来ねぇから……家に居候させてやるから頼む。」


「そんな事で良ければ、喜んでやります!」


むしろこんな事だけでいいんですか、とさえ思う


「よし、話纏まったわね!!じゃあ…………飛雄、行くわよ」


「ん。」


「名前ちゃんはちょっと留守番してて?」


「え?」


「イロイロ、やってくるから」


なんて言って綺麗に笑った美羽さんは、飛雄さんを引き連れて出ていってしまった。


イロイロ………?
1歩前に進め


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