月曜日、今日から学校だ。


昨日の日曜日は飛雄さんと色々な決め事やルールを決めた。


家事は基本全般私がやる、でも出来る範囲でいい。あくまで学校優先で。


買い物は極力一緒に行くこと。1人じゃあんまり買って来れないから。


帰るのが遅くなる時は飛雄さんに連絡する。逆も然り。


などなど。色々な約束をした。


また飛雄さんの練習所も教えてもらった。試合で無ければそこにいる事が多いそうで、急ぎの時は来てもらっていいとの事


今日から平日。学校に家事に、頑張るぞ!





「おはよう!名前!」


「おはよう!」


学校は好きだ、友達は優しいから。


あの家にいる時も、学校で友達に会えることが大きな支えになっていた。

「……………名前」


「へ?」


「シャンプー変えたでしょ」


「え!?なんで気づくの!?」


「なんか匂い違うし……髪ツヤツヤだし……あれ?洗剤も?」


制服を嗅がれる、ちょっと!!


「洗剤もだよね?前と全然匂い違う!!どうしたの?」


「あー、えーっと………………色々あって、」


家の事情も全て話している友人だったので、今回の事も話した


「…………それってさ、なんて言う名前の選手?」


「え?影山飛雄さんって言う人だけど……」


「!!!今めっちゃ有名なイケメン選手だよ、その人!!」


「!!?」


いや確かにイケメンだけども


そんな有名人だったの!?テレビとか見ないので知らなかった……


「他の人には言わない方がいいと思う、なんか……大変な事になりそう」


「そうだね……黙っておく」


「それにしてもいいなぁ!イケメンとの同居!!」


「そんな……イケメンはイケメンだけど、それより恩人って感じの方が強いし」


「イケメンなのに優しいとかもうやばいじゃんそれ、モテる要素しかねぇ。」


「ほんとにね……あれ、彼女いるのかな」


「確かに。いたら、なんか、修羅場になりそうで怖いよね」


「怖い、めっちゃ怖い。」


何あんたうちの彼氏に言いよってるわけ??ふざけんじゃないわよ!!パーン!って打たれるんだろう、きっとそうだ。昔そんなシーンを見たことがある。


「確認しておいたら?」


「うん…帰ったら聞いてみる」





「か、影山…………」


「あ?」


「お前、弁当……!」


「あー、おう……」


「いいなぁ!!美味そう!!」


「やらんからな」


「んだとぉ!?ケチー!!」


「うっせぇぞボケ!!」


「お?翔陽くん、どしたん?」


「侑さん!!影山が弁当持ってきてるんですよ!」


「なにぃ!?」


「………なんひゅか」


「美味そうやないか………美味いか?」


「美味いっす」


「誰に作ってもらったん」


「誰?…………………………居候。」


「「は?」」


「居候…………家出人………なんかそんな感じっす」


「いやそんな感じって全くわからんけども」


「何?フリーターでも拾ったん?」


「いや、高校生っす」


「!?!?………まさか飛雄くん、女子じゃないやろな?」


「女子っす」


「影山、自首した方が早くここに戻って来れるぞ」


「あ!?」


「飛雄くん、警察行こか?誘拐やろ?それ」


「誘拐じゃないっすよ!!ちゃんと話して、向こうの親御さんの了承も得て、うちに来たんです」


「え、何それ…すっげぇ気になるんだけど。今日練習終わったらお前の家行っていい?」


「俺も俺も」


「いや駄目っすよ」


「「えぇー!?」」


「いいじゃん!!俺も会ってみたい!!美味い弁当作ってくれる女の子!!」


「俺も俺も!!!生の女子高生見たい!!」


「侑さんは犯罪臭がするから絶対駄目っす」


「ごめんて!!!」





慣れない道を歩いて、家に帰る


大きなマンションを見上げ、まだまだこれが家だなんで思えない……と苦笑いを浮かべて中に入った


影山、と書かれた表札を眺め、いつまでもお世話になっていられないからねと自分を戒める。


「あ、………おかえり、名前。…その、悪い。」


「ただいまです。??何がですか」


「人が来てる、………たぶんうるさい」


「え?」


「あ!!帰ってきた!!」


「!?」


「うっわぁ、ほんまもんのJKやないか!!制服着とるで!!!」


「!!?」


大きな声を上げてこちらに駆け寄ってくる2人


え、誰。ちょ、怖い!!


ぎゅうっ


「名前が怖がるんで辞めてください」


私を守ろうと抱き締め、隠す飛雄さん


こここ、これはこれで………心臓が痛い!!ドキドキが止まらない


「ご、ごめんね?怖かったかな?」


オレンジ色の髪をした人が優しく声をかけてくれる


あれ、優しそうだ


「い、いえ!!飛雄さん、もう、大丈夫ですよ!」


「ん、」


飛雄さんから解放され、改めて向き直る


「俺、日向翔陽!影山とは高校から同じ!よろしくね」


「よろしくお願いします!苗字名前です」



「俺は宮侑。ごめんな?急に駆け寄って」


「いえ!よろしくお願いします、宮さん」


「ほら、会ったんだから帰ってください」


「「はーい」」


どうやら私を見ることが目的だったらしい。満足した彼らは帰って行った。


「ごめん、何も言わず連れてきて」


「いえいえ!!飛雄さんの家ですし」


「でも今は2人の家だから。それに見にだけ来るなんて失礼だよな」


私よりずっと飛雄さんの方がむすっと怒っていらっしゃる


「私は気にしてないので、大丈夫ですよ!ご飯にしましょう?」


「………ん。」


今日は唐揚げ。下味は朝つけていったので、揚げるだけ。直ぐにでき上がる。


「美味そう、今日弁当も美味かった、ありがとう」


「本当ですか!良かった!」


「でもその弁当であの二人が釣れてきて、面倒なことになった……」


「いつもはお弁当じゃないんですか?」


「いつもは食堂」


「そうだったんですか、どっちがいいですか?食堂とお弁当」


てっきり何か用意して行ってるのかと思ってた。食堂があるならお弁当はいらないかも。


「弁当が良い。美味かった。」


心做しか目がキラキラしてる。か、可愛いぞ、この人。


自分が作ったものを選んでもらえるなんて、嬉しい。にやにやしてしまう。


「ありがとうございます、明日からも頑張りますね!」


「ん、唐揚げ食べていいか?」


「はい、どうぞ!」


美味しそうに唐揚げを頬張る飛雄さん。私よりずっとずっと大人だけど、嬉しそうな表情は少しだけ子供っぽく見えた。
日常に溶け込む


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