小さくて丁度いい


「あ!飛雄ちゃん!!」


「!ちわっす」


部活じゃない時間に会うのは初めてだ!あまり来ない自販機に来て良かった


「いつも自販機来るの?」


「はい、これかこれ飲みに」


そう言ってぐんぐん達を指さす。どこまで伸びる気だ、木にでもなるのかな


「そっかぁ、私もそれ飲んだらもうちょっと伸びるかな?」


「……どうっすかね」


なんで目を合わせない?もう手遅れってか??お??美人でも手加減せんぞ、お??


「お、苗字!……え?なに?カツアゲ?」


「違ぇよ馬鹿!!部活の後輩だ!」


「あ、そうなん?…ごめんね、後輩くん!!」


「ごめんね、飛雄ちゃん。うちのクラスの男子で……」


「あ、いや。見た目はそう見えてもおかしくないかなと」


そんな馬鹿な、と思いながらぐんぐんヨーグルを買う


身長は別に伸びなくたっていい、……ちょっと不便がある程度だし


「やっほー!名前!!……え?もう伸びないでしょ」


「私何も言ってないよね??お??その可愛いお顔にエルボーめり込ませたろか??」


「嘘嘘!!まだ死にたくないし!じゃーね!!」


また死にたくないってそんな威力はまだ持ち合わせてないぞ


「……苗字さん、クラスの人たちと仲良いんすね」


「え?仲良く見える?煽られてるだけにしか思えないんだが?」


「そうっすか?仲良くないとあんな事言われないと思いますけど」


「そっかぁ…じゃあ仲良いんだな!飛雄ちゃんは?仲良しな人いる?」


「……俺は、あんまり人付き合い得意じゃないんで」


「あ、わかる!!苦手そう!!てか苦手だよね!仁花ちゃんと話してるの見てても言葉少ないもん!!」


「……。」


「あ、ごめん」


土足で彼のデリケートゾーンを歩き回ってしまった。もはやスキップまでしてしまった。


「でも飛雄ちゃんはそのままで良いと思うよ!バレー以外は不器用じゃないとずるいしね!」


「?何がっすか」


「だって、既にバレーに対する鋭い感性や打ち込める能力は持ってるじゃん!それに顔がいいでしょ?声もいいでしょ?身長もあって足も長いでしょ?いやいや、持ちすぎだよ!!」


「これで他の部分、例えば人付き合いが上手いとか勉強が出来るとかまで加えられたらそれはね、神様が能力の配分間違えてるよ」


「……なんすかそれ」


あ、ちょっと笑った。人付き合いが苦手なのは少し気にしてたのかな。


「いや、じゃあ逆に考えてみて??私は腕っ節が強い、人付き合いも恐らく得意。これでさ、顔も良くって身長もそこそこあってスラーっとしたスタイル持っててさ?」


「モデルさんみたいに美人で、でも取っ付きやすくて尚且つ物理に強いから人を守れる!なんてなったらそれはズルくない?頭良くなくてもなんかずるくない?」


「……ずるいっす」


「ね!?これは私がこんなちんちくりんだから成り立ってるけど、足スラーっと美人だったらね、きっともっと私はモテてるはずよ??」


だがしかし美人は人付き合いがさほど得意でなくともモテることは知ってる。何故なら私の傍に、潔子さんがいるからだ。


潔子さんの美人具合はやばい。正直飛雄ちゃんやツッキーを上回る。そのため容易に抱きつくなんてできない。


「苗字さんはそのままの身長でいいと思います」


「え?喧嘩売ってる?」


「あ、いや、違くて!!…その、たぶん身長伸びてもっと綺麗になったら、」


「?うん」


「……なんでもないっす」


「は!?」


いや、モヤァ!!モヤァってするよ!?


「ちょ、モヤッとするから言ってよ!!」


「言えないっす!!すんません!!」


そう言って逃げられた、なんなんだ、今日も電波ちゃんか?





「は?そりゃあお前、苗字がもしも、もしもだぞ?そんな身長も長い足も手に入れたら、たぶん美人になる。あいつ顔はそこそこいいもんな。」


「…うす」


「でも根本的にあいつの頭の中がやべぇやつだから、どう頑張ってもモテねぇだろ。だって毎日お前の腰に抱きついてる奴だぞ?ムカつくやつには光の速さでヘッドロックだぞ?いくら美人でも俺は無理だな」


「……!確かに」


「いや気づくの遅すぎでしょ、なんなの?苗字さんにモテて欲しく無いの?」


「いや、そもそも身長伸びる気がしないからそれはねぇんだけど」


「真顔で言っちゃうあたり煽ってすらねぇんだよなぁ……」


「ちわぁぁああっす!!」


「おーちわっす!お前今日ぐんぐんヨーグル飲んでただろ」


「な、何故知ってる!?そんな誰得な情報…飛雄ちゃんか!?」


「違いますよ!」


「クラスのやつが、苗字が自販機でぐんぐんヨーグル買ってたとか言ってたぞ。伸びる訳ねぇのになー!って」


「それどこのどいつだ、明日の朝日を拝めなくしてくる」


「おいやめろ!!お前が小さいのはもはやステータスだろうがぁ!!」


「んだとコラァアアア!!!」



「……また始まった」


「西谷さん呼んで来るか」


「いや、縁下さんの方がいいんじゃない?」


「確かに」



「おぉ……1年生達の苗字に対する扱いが慣れている…!」


「流石だな、冷静組は」


「俺は未だに苗字が威嚇モード入ると焦っちゃうんだよなぁ…」


「旭は苗字にビビり過ぎだろ!」


「だって、動き全く読めないし野生感凄いから扱えないよ」


「特に俺たち3年はイケメン扱いされないから、影山や月島、西谷のような止め方は出来ないからな…」


「その点、よく田中は苗字に喧嘩売れるよな?」


「いや、売ってるつもり無いんだろ。そう言う習性。」


「「あぁ…。」」

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