遠くからたしなむ程度に


「という事で、苗字にイケメン耐性を付けよう作戦ー!」


「「「いぇーい!!」」」


いぇーい???


「初耳の企画なんですが?」


「この間ノリで考えたからね」


素晴らしい笑顔のスガさん。こういう笑顔の時は大抵やばい人だ。


「苗字、キモいくらいにイケメン好きなのに、相手から来られると引くほどのスピードで意識飛ぶじゃん??」


「いや引くほど今ディスられてますね??」


精神的なダメージ凄いけど!?


「この問題はな、苗字の将来にも影響を及ぼす可能性がある。だから、高校生のうちに治そう!!」


「……本心は?」


「とりま面白そうだからやってみんべ!!」


「いやノリが凄い!!」


人の真剣な悩みを弄ぶテンションが酷い!!


「大丈夫、大丈夫!ちゃんと西谷と月島、影山に頼んだから!」


「よく頼まれてくれましたね…?ノヤっさんはともかくあとの二人…」


「翔陽?それはどういう意味?小人にもわかるように教えて?」


「ひぃっ!!」


「わかるぞ日向、苗字に関わるとあの二人はろくな目にあってないのに何故協力してくれるんだって話だよな?」


「そ、そうです……田中さん…俺の気持ちを代弁して……大丈夫でしたか……」


「おう……俺のことは気にせず……俺の屍を越えてゆけ……!」


「確かに1部異論はありますけど、なんで協力してくれるんですか?と言うか私はこの企画自体批判したいのですけど?」


「その迷いなく田中にヘッドロックキメてる腕が怖くて仕方ない……」


「旭ー?今更だぞー?」


「あの??質問してるんですが??」


「あぁ!簡単に協力してくれたぞ!頼みを聞いてくれたら、1週間苗字から抱きつく事は禁止するからって言ったら!」


「は!?!?そんなの辞めれる訳ないじゃないですか!!」


「えー?いいだろー?先輩の顔立ててくれよー?」


「いやあからさまにかわいこぶらないでくださいよ、スガさん。」


「顔怖いぞー☆」


「誰かあの人止めてください!?……旭さん!!」


「む、無理だよ!!あの笑顔のスガは何考えてるかわからないんだよ!!」


「この根性無しィ!!」


「どっから沸いた!?西谷!?」


「……既に阿鼻叫喚ですね」


「おっ!来たなー月島!」


「ちゃんと協力したら1週間、この珍獣から解放されるんですよね?」


「おう!その光の速さで飛びついた珍獣から自由を与えよう!!」


「与えぬ!!!」


「……なんかおかしな言葉が聞こえたんですけど」


「おっかしーなー、さっき苗字から承諾得たんだけどなぁ」


いつ!?


「まぁ、なんとかするから!手伝ってくれよ!」


「そもそもなんで耐性つけなきゃいけないんです?別にこのままでも生きていけますよね?この人。アマゾンにでも放り出しとけばイケメンになんて遭遇しないでしょ」


「んだとゴルァ!?」


「っそれに、本人望んでるんです?っ、そうは見えないんですけど」


「すっげぇ月島……苗字さん引っ付いた状態で殴りかかってきてるのに、全部避けてる……!」


「日向、あれは恐らく苗字に耐性をつけた逞しい背中だ……覚えておけよ……!」


「うす、田中さん……!」


「ふざけるのも大概にしてもらえます??慣れただけなんですよ、この人すぐ殴りかかって来るから」


「ひぎゃ!!」


頭をツッキーに掴まれる。デケェ手だなおい!!


「本人はそんな望んで無いけど、これから一応日本社会の中で生活していく予定だからな。先輩としてもしイケメンと出会ってしまった時に対応できない後輩なんて……っ可哀想で…っ!」


「本心は?」


「とりま面白そうだからやってみんべ!!」


「……後輩が後輩なら先輩は先輩ですね」


「お前自分がその後輩の後輩だってわかってんのか?お?」


「うるさいですよ、小人ゴリラ」


「ゴリラならゴリラらしく、ツッキーの腕1本折ったろか??お??なんなら腰から半分に折ったろか??」


「ゴリラに失礼ですよ」


「はいはい、いい加減にしなさい」


猫の子宜しく大地さんに捕まった


「苗字も。これはそもそも清水の提案なんだ」


「…………?」


潔子さんが?私の為に?脳みそ使ってくれて?行動に?移してくれたと??


私の頭の中には宇宙が広がった。スペース。


「帰ってこーい、苗字ー」


「っ!な、何故潔子さんが?」


「お前、すぐ無茶するからな。怒ってくれるやつが必要だろって」


「?そうですか?」


「そうっすよ、もう忘れたんすか」


「びゃっっっ!!!」


「おい影山、気をつけてやれよ。まだ耐性無いんだから。……ほら苗字が転げてった床がちょっと焦げただろ」


「すんません、気をつけます」


「……え?これって誰も突っ込まないの?僕しか違和感感じてない訳?」


「飛雄ちゃんに……いつか殺される気がする……!」


「何言ってるんすか!?」


「お前は影山みたいに怒ってくれるやつ、心配してくれるやつが将来的にいる方がいい。それがイケメンだろうとそうでなかろうと。その時困らないで欲しいからってのが清水の考えだ。」


「………好き。」


「わかるぞ苗字。」


「伝わるぞ苗字。」


私は潔子さんの優しさに召された。頭の中でチャペルの鐘が鳴る、無事入籍した。


「お前らまじでブレねぇよなぁ」


「今更だろ……苗字と田中と西谷のトリオは」


「……名前ちゃん」


「!!潔子さん……結婚しましょう」


「うん、無理だから。……頑張ってみない?」


「頑張ります、潔子さんが応援してくれるなら!!結婚しましょう!!」


「うん、無理。ありがとう、頑張ろ!」


「……清水さん流し方がプロだね」


「言い寄られた数が桁違いなんじゃない?」


「よし、じゃあ月島!!苗字と面と向かって目線合わせて目を合わせてくれ!」


「………。」


う、うお、い、いけめ、うわぁ、ちょまつ毛なが、かっこ、かっこよ


「この人瞬きの数えぐいですけど大丈夫です?」


「ちゃんと見ろ苗字!!!」


む、むりですよ、直視するのなんてしぬ、しにます


「だ、ど、っどぅあああああ!!!!」


「逃げた!!」


「縁下!!」


「はい!!」


なんなの?この鮮やかな捕獲フォーメーション


トータルディフェンスか??バレー以外でも有効なの?


力に運ばれ元の場所に返される


「じゃあ……この間気絶したのやってみるか。影山、苗字持ちあげろ」


「うす」


「だ、く、くるな!!触るな!!!シャー!!」


「いやもう猫じゃん」


「俺猫に嫌われやすいんで」


「あ、もう猫扱いなんだ」


軽々長い手で捕まり、持ち上げられる


「苗字さん、こっちみて下さい」


「無理、気絶するし」


「…名前ちゃん、頑張って!」


「きき、潔子ざん……!」


「うわ泣いてる……」


「ツッキー顔が凄いよ…」


潔子さんが応援してくれてるのに答えないわけにはいかない!!


「ううう、ふんっ!!」


「………。」


はーーーー無理、かっこよ、はーーーーーはーーー???


目がさ、もうさ、もうなに?かっこよ、切れ長ってこんな良いもんでしたっけ??


肌綺麗だし、顔ちっちゃいし、なに?神に愛されし者か??お???頭悪いからそれはないか



「お!!耐えてる!!耐えてるぞ苗字!!!」


「頑張れ苗字!!!美形ビームに負けるな!!」


「ぬ、ぬん…ううっうぬん……」


「なんか変な鳴き声出始めたけど」


「苗字さんも頑張ってるんだ…!!頑張れ苗字さん!!」


うああああかっこいいよおおおおおうわぁぁぁああああ!!!


「泣き始めた!!」


「頑張れ苗字!!!美形ビームが痛いのか!!!」


「いだいいいいい」


「クソ、影山!ちょっと美形ビーム弱められんのか!!」


「いや俺ただ苗字さん見てるだけっすけど」


あっ声までいい


「………あ」


「「「あ。」」」


「気絶したな……鼻血出して」


「これが限界かぁ……先は長そうだ」


「影山、名前ちゃん降ろして」


「うす」


「なんだろうな、これ。もはやアレルギーの一種だったりするのか……!?」


「なるほど、名推理だなノヤっさん……!!」

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