悔いのないものに


現在地 東京


全国大会の舞台へとやってきた私達烏野高校


皆の集中力も凄いけど、慣れない環境でのサポートに私達マネージャーや先生、コーチも緊張が走る


絶対、勝つ。皆は勝ってくる。その信じる力だけが私達を突き動かすのだ。


会場に入り、開会式を待つ


多くの選手でごった返したエントランスでは飛雄ちゃんは日本代表合宿で知り合った人などがいて、話しかけられている


他にも東京の悪人猫主将や翔陽の師匠ことヘイヘイ人などがおり、見慣れた顔に少しだけ安堵する


安堵するが、やはり全国大会の会場。沢山の傷を負ってでも皆をここに誰一人欠けることなく、連れてくる事が出来たことが1番嬉しかった。


ここに来て、初めてあの時踏ん張って良かったと感じる


しかしまだまだ油断はできない。不慮のトラブルなんてつきものだ。選手達から目を離さないようにしなければ


なんて意気込むのに対して、体は冬の寒さも相まって冷えており、


手足の先が氷のように冷たかった。自分が思っている以上に、緊張しているらしい。


手を組み、少しだけ願う、どうか3年生の皆さんが笑って宮城に帰れますように。


「…何してるんすか」


「うわっ飛雄ちゃん」


「神頼みなんかしなくても、必ず勝ちます。」


「わ、分かってる!!ずっと見てきたし」


「……ふ、ならいつも通り笑っててください。応援席で苗字さんが笑っててくれるだけで、多分皆元気もらえます」


「……ほんと?」


「珍しく弱気ですね、……手も冷えてる」


そっと手を握られる。そもそも緊張していた為か、いつもよりもずっと落ち着いていられた


「苗字さんは皆の元気の塊です、応援されると元気になります。ちゃんと、俺たちのプレー最後まで見届けてください」


「…もちろん!!応援は任せて!!」


にっと笑った飛雄ちゃん


励まされたのなんて初めてだった。ドキドキ胸がうるさい、特別なんてそんなの知らない。恋なんて知らないしこれはそんなんじゃない。


彼はうちの大事なセッターだ。そう、それだけ。なのに、誰に言われるより勝ちますという言葉を信じたくなるのは何故だろう。





いよいよ試合が始まる


ここからは、私と仁花ちゃんはコート外からの応援。少しだけ寂しい。


「おい!応援団長!!」


「……へ!?私ですか!?」


「おう!お前の元気な声が聞こえないと、違和感がすごいんだよ!今日も頼むぞ!」


「…っはい!!」


私だって、私たちだってコートの中にはいないけど一緒に戦ってるんだ


それを認めて貰えた気がして、嬉しくて、ぽろっと涙が溢れ出た


「………。」


「……うわぁああああ!!!大地が苗字泣かせたー!!」


「う、うわ、ご、ごめん苗字!!なんか嫌なこと言ったか!?」


「あ、ち、ちが」


「この人よく泣いてるじゃないですか、影山がかっこよすぎてーとかで」


「いや明らかにそういうのじゃないよね…!大丈夫?苗字どっか痛いのか?」


「い、いや違います!!その、私たちは応援席までしか行けないから、コートに入れないから。それでも今まで皆と過ごした時間は同じだから!!一緒に、戦ってるんだって……!」


涙を拭く、皆の前で最高の笑顔を


それが私に出来る最高の鼓舞だ


「っ後ろから、応援してます!!辛くなったらこっち見て!!誰よりも、全世界の誰よりも皆の味方がここにいますから!!」


「苗字…!」


「お前真面目な事も言えるんだな…」


「や、やんのかコラー!!」


「…苗字の応援に応えるぞ、……いくぞ!!」


「「「おう!!」」」


コートに向かう皆の背中を見送る


ふと、こちらを振り向く飛雄ちゃん


じっと見つめて拳をこちらに突き出す


飛雄ちゃんのくせに何可愛いことしてるんだ、と思いながら私も彼に拳を突き出した


頑張れ、頑張れ。努力は時間はいっぱいかけた。


お願いします。どうか悔いの無い全国大会になりますように。

back
top