巡り巡って


全国大会での激闘を終え、あっという間に卒業式。


3年生の皆さんは卒業してしまった。


勿論悲しくて、寂しくてわんわん大泣きしてしまったが、皆また遊びに来るから、と約束してくれたのでなんとか笑顔で送り出せた。


潔子さんには最後まで、旦那の座は誰にも明け渡しませんから!!と言い続けた。冷ややかな視線がたまらなかった。





「えー主将の縁下です」


「よっ!!!」


「主将!!!」


「縁下ぁあああ??」


「「「ちからぁあああ!!!」」」


「…成田、木下。あの三馬鹿止めてくれ。」


「「了解」」


バレー部に新入生が入ってきた。昨年度の活躍もあってか、大量大量!!


さて、イケメンはいるかな……?お?あれ?あの彼良くない??


「……ねぇ、苗字さん狙ってない?」


「…狙ってるね、たぶんあの1年じゃないかな。かっこいいし」


「飛びかかるよあのままだと」


「ねぇ、君」


「あ、手遅れだった」


「うす!」


「名前と身長と腰骨の位置教えてくれる?」


「……へ、」


「ひぎゃ!!」


「…なんでもねぇ。気にすんな。」


「う、うす!!……あ、あの影山先輩!」


「?」


「俺、影山先輩に憧れて烏野に来ました!」


お、おぉ!!!と飛雄ちゃんに抱き上げられたまま感動する。先輩なら誰でも言われたら嬉しくなっちゃう発言だ。飛雄ちゃんも鼻高々だろう。


「そうか、頑張れよ」


「はい!!」


「へ?そんだけ?」


「何がっすか」


「飛雄ちゃん、あんな風に言われて嬉しくないの?」


「??……まぁ嬉しくない事は無いっすけど?」


「んなっ……お前、先輩なら誰でも嬉しい言葉をその程度にしか思わないとは……」


「やっぱ大物だなぁ!!影山!!」


「?あざっす」


「…くそー私も飛雄ちゃんのような先輩の余裕を見せたかった!!」


「……余裕と言うか。苗字さんは会った初日にはヤバい人だなって思いましたけど」


「そんなん嬉しくないわぁあ!!喧嘩売っとんのか!!」


「っいや、っ売ってないっすよ」


「…影山よ、お前も月島と同じ領域まで来たか」


「いや、あの人の動き読めるようになっても何も嬉しくないですからね?」


「とか言って月島ー、影山ばっかりじゃなくて苗字に構って欲しいんだろ??西谷先輩にはわかるぜ?」


「…………?」


「(あんなに感情がないツッキー初めて見た…!)」


「ぜぇぜぇ……クソ、全部避けよって…」


「危ないんで辞めてください」


「辞めないよ!バーカバーカ!!」


「ちょっとその感じ及川さん思い出すんで辞めてください」


「及川さん嫌われ過ぎてるね!?」


顔がマジだったよ飛雄ちゃん!!?


「あの、谷地先輩」


「はい!なんでしょう!?」


「影山先輩と苗字先輩って付き合ってるんですか?」


「えっ!?(凶暴な猫とその飼い主にしか見えないけど…)」


「違うんですか?仲良いのでてっきり…」


「ち、違うよ!!仲は悪くないと思うけど、そういう関係じゃないよ!」


「……じゃあ、私にもチャンスありますか?」


「えっ……、う、うん。無いことは無いと思うよ」


「良かった!!私、頑張ります!!」





「じゃあマネージャー希望は1人だね?よろしくね!改めまして、3年生の苗字です。」


「よろしくお願いします!」


「2年生の谷地です、お願いします!」


「お願いします!」


「じゃあーまずは、ドリンクから…」


「あの!!苗字先輩!!」


「は、ひゃい!?」


「(名前さん噛んだ…!)」


急に大声で声かけられてびっくりした。なんだなんだ、トイレか?


「影山先輩の事好きなんですか!!」


「え?好きだよ?」


「えっ」


「と言うかバレー部皆愛してるよ?それがどうかした?」


全然トイレじゃ無かった。何だ急に。好きじゃない人の世話なんて出来るかい。


「あ、……あの、私、影山先輩に憧れて、好きになっちゃって、それで烏野来ました。本気で付き合いたいって思ってます。」


そ  う  い  う  事  か  !


恋愛の方ですか!!私には縁のない事だ。察しが悪くて申し訳ない。


「そかそか!!いいと思う!飛雄ちゃんイケメンだしね!」


「……応援してくれるんですか?」


「え、もちろん!あーでも、飛雄ちゃんそもそも超モテるから、もう毎週のように告られてるから大変かもよ?ね?仁花ちゃん」


「ま、毎週のようにはちょっと言い過ぎかもですけど……月に何回かはたぶん。よく部活の前も声掛けられてるし!」


「そんなに…!……私、頑張ります。絶対負けません!!……?でも、影山先輩全部断ってるってことですよね?あれ、彼女いたりします…!?」


「え!!?知らない。聞いてない。……え、いるのかな」


彼女出来たら教えてとは言ったことあるけど、覚えてるだろうか。


今でも毎日引っ付いて細腰を堪能させて頂いてるけど、大丈夫か…?


いや、それ以前にこの可愛い1年生の恋を応援するなら、もう引っ付くのは辞めた方がいいのだろうか。


「確か、全部断ってるって聞きましたよ!理由は聞いてないですけど」


「そうなんだ!良かった、彼女いたら修羅場だよぉ」

「(修羅場!?)」


「まぁ、飛雄ちゃんの事は頑張れ!とりあえず仕事出来ないと飛雄ちゃんに近づけないし、覚えていってね!」


「はい!!」





「スパイク練やるぞー!」


「「あす!!」」


「あ、苗字さん!!ボール拾いお願いできますか?」


「任せな翔陽!!強烈なヤツ持ってこーーい!!」


「うす!!」


「ふっ……苗字の出番は無いぜ…俺が全部取っちまうからな…!」


「ほーー??ノヤっさん言ったな?肉まん賭けるか?」


「いいぜ!!俺が全部とったら奢れよ!」


「あいよー!!」


悪いなノヤっさん、私負ける勝負には賭けないのだよ…!


「……苗字さんってちょっと変だけど、可愛いよな」


「わかる。小さいし、元気いっぱいで。気遣いも出来るし優しいよな」


「彼氏いんのかな?」


「さぁ……いなかったら告る?」


「えぇ!…でもちょっと希望感じるな、告るかも。」


「マジか!!」


「……。」


「影山くん??かっげやーまーくん??かーげー」


「うっせぇ!日向ボゲェ!!」


「ひぃ!?お前がボーッとしてるから声掛けてやったのに!!」


「あ?してねぇよ」


「してたぞ!!」


「してねぇ」


「してた!!」

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