巡り巡って
全国大会での激闘を終え、あっという間に卒業式。
3年生の皆さんは卒業してしまった。
勿論悲しくて、寂しくてわんわん大泣きしてしまったが、皆また遊びに来るから、と約束してくれたのでなんとか笑顔で送り出せた。
潔子さんには最後まで、旦那の座は誰にも明け渡しませんから!!と言い続けた。冷ややかな視線がたまらなかった。
◇
「えー主将の縁下です」
「よっ!!!」
「主将!!!」
「縁下ぁあああ??」
「「「ちからぁあああ!!!」」」
「…成田、木下。あの三馬鹿止めてくれ。」
「「了解」」
バレー部に新入生が入ってきた。昨年度の活躍もあってか、大量大量!!
さて、イケメンはいるかな……?お?あれ?あの彼良くない??
「……ねぇ、苗字さん狙ってない?」
「…狙ってるね、たぶんあの1年じゃないかな。かっこいいし」
「飛びかかるよあのままだと」
「ねぇ、君」
「あ、手遅れだった」
「うす!」
「名前と身長と腰骨の位置教えてくれる?」
「……へ、」
「ひぎゃ!!」
「…なんでもねぇ。気にすんな。」
「う、うす!!……あ、あの影山先輩!」
「?」
「俺、影山先輩に憧れて烏野に来ました!」
お、おぉ!!!と飛雄ちゃんに抱き上げられたまま感動する。先輩なら誰でも言われたら嬉しくなっちゃう発言だ。飛雄ちゃんも鼻高々だろう。
「そうか、頑張れよ」
「はい!!」
「へ?そんだけ?」
「何がっすか」
「飛雄ちゃん、あんな風に言われて嬉しくないの?」
「??……まぁ嬉しくない事は無いっすけど?」
「んなっ……お前、先輩なら誰でも嬉しい言葉をその程度にしか思わないとは……」
「やっぱ大物だなぁ!!影山!!」
「?あざっす」
「…くそー私も飛雄ちゃんのような先輩の余裕を見せたかった!!」
「……余裕と言うか。苗字さんは会った初日にはヤバい人だなって思いましたけど」
「そんなん嬉しくないわぁあ!!喧嘩売っとんのか!!」
「っいや、っ売ってないっすよ」
「…影山よ、お前も月島と同じ領域まで来たか」
「いや、あの人の動き読めるようになっても何も嬉しくないですからね?」
「とか言って月島ー、影山ばっかりじゃなくて苗字に構って欲しいんだろ??西谷先輩にはわかるぜ?」
「…………?」
「(あんなに感情がないツッキー初めて見た…!)」
「ぜぇぜぇ……クソ、全部避けよって…」
「危ないんで辞めてください」
「辞めないよ!バーカバーカ!!」
「ちょっとその感じ及川さん思い出すんで辞めてください」
「及川さん嫌われ過ぎてるね!?」
顔がマジだったよ飛雄ちゃん!!?
「あの、谷地先輩」
「はい!なんでしょう!?」
「影山先輩と苗字先輩って付き合ってるんですか?」
「えっ!?(凶暴な猫とその飼い主にしか見えないけど…)」
「違うんですか?仲良いのでてっきり…」
「ち、違うよ!!仲は悪くないと思うけど、そういう関係じゃないよ!」
「……じゃあ、私にもチャンスありますか?」
「えっ……、う、うん。無いことは無いと思うよ」
「良かった!!私、頑張ります!!」
◇
「じゃあマネージャー希望は1人だね?よろしくね!改めまして、3年生の苗字です。」
「よろしくお願いします!」
「2年生の谷地です、お願いします!」
「お願いします!」
「じゃあーまずは、ドリンクから…」
「あの!!苗字先輩!!」
「は、ひゃい!?」
「(名前さん噛んだ…!)」
急に大声で声かけられてびっくりした。なんだなんだ、トイレか?
「影山先輩の事好きなんですか!!」
「え?好きだよ?」
「えっ」
「と言うかバレー部皆愛してるよ?それがどうかした?」
全然トイレじゃ無かった。何だ急に。好きじゃない人の世話なんて出来るかい。
「あ、……あの、私、影山先輩に憧れて、好きになっちゃって、それで烏野来ました。本気で付き合いたいって思ってます。」
そ う い う 事 か !
恋愛の方ですか!!私には縁のない事だ。察しが悪くて申し訳ない。
「そかそか!!いいと思う!飛雄ちゃんイケメンだしね!」
「……応援してくれるんですか?」
「え、もちろん!あーでも、飛雄ちゃんそもそも超モテるから、もう毎週のように告られてるから大変かもよ?ね?仁花ちゃん」
「ま、毎週のようにはちょっと言い過ぎかもですけど……月に何回かはたぶん。よく部活の前も声掛けられてるし!」
「そんなに…!……私、頑張ります。絶対負けません!!……?でも、影山先輩全部断ってるってことですよね?あれ、彼女いたりします…!?」
「え!!?知らない。聞いてない。……え、いるのかな」
彼女出来たら教えてとは言ったことあるけど、覚えてるだろうか。
今でも毎日引っ付いて細腰を堪能させて頂いてるけど、大丈夫か…?
いや、それ以前にこの可愛い1年生の恋を応援するなら、もう引っ付くのは辞めた方がいいのだろうか。
「確か、全部断ってるって聞きましたよ!理由は聞いてないですけど」
「そうなんだ!良かった、彼女いたら修羅場だよぉ」
「(修羅場!?)」
「まぁ、飛雄ちゃんの事は頑張れ!とりあえず仕事出来ないと飛雄ちゃんに近づけないし、覚えていってね!」
「はい!!」
◇
「スパイク練やるぞー!」
「「あす!!」」
「あ、苗字さん!!ボール拾いお願いできますか?」
「任せな翔陽!!強烈なヤツ持ってこーーい!!」
「うす!!」
「ふっ……苗字の出番は無いぜ…俺が全部取っちまうからな…!」
「ほーー??ノヤっさん言ったな?肉まん賭けるか?」
「いいぜ!!俺が全部とったら奢れよ!」
「あいよー!!」
悪いなノヤっさん、私負ける勝負には賭けないのだよ…!
「……苗字さんってちょっと変だけど、可愛いよな」
「わかる。小さいし、元気いっぱいで。気遣いも出来るし優しいよな」
「彼氏いんのかな?」
「さぁ……いなかったら告る?」
「えぇ!…でもちょっと希望感じるな、告るかも。」
「マジか!!」
「……。」
「影山くん??かっげやーまーくん??かーげー」
「うっせぇ!日向ボゲェ!!」
「ひぃ!?お前がボーッとしてるから声掛けてやったのに!!」
「あ?してねぇよ」
「してたぞ!!」
「してねぇ」
「してた!!」
back
top