全部繋がる


「なので、是非また飛びついてもらって大丈夫です!!」


何が、どうして、なのでになった??


1年生のマネージャーの子曰く、もう飛雄ちゃんにフラれたし、今まで通りにしてもらっていいと言われた。


しかし今更元に戻すのも、どうかと思う。翔陽は仁花ちゃんとぜひぜひ仲良くして欲しいのでそっとしておこう。


飛雄ちゃんとツッキーは……まぁ嫌がらせにやっとくか、あとノヤっさんは普通に仲良しだから飛びつきに行こう


「ノヤっさーーーーん!!!」


「おぉーう!!苗字ー!!」


「どうした?復活したのか?」


「うん、人限定して復活した!!」


「なんだよそれ、仲悪いやつでも出来たのか?」


「違う!後輩の恋路を応援する先輩パート2!」


「……なるほどな、俺もそこはくっついて欲しいなって思ってたぜ!!」


「流石!!ノヤっさん!」


「ちわっす!」


「……。」


「あ!!山口くんとツッキー!!」


「………?あれ、僕もう珍獣のお守りは廃止になったって聞いたんですけど?」


たまらん!!細い腰、冷ややかな目、スベスベお肌!!たまらん!!


「うわ鼻息荒い……こわ……」


「廃止を廃止したの!!」


「聞いてないですけど??」


「今言った!!」


「いだだだだだ!!!!」


頭を手に掴まれる、痛い痛いぃぃぃい!!?


「あぁ、ほら、影山来ましたよ。さっさとあっち行ったらどうですか」

手でシッシッとしてくるツッキーの腹筋に頭突きしてから飛雄ちゃんの方へ向かった


「飛雄ちゃん!!ちわっす!」


「ちわっす、飛びつくのまた始めたんすか?」


「そう!いっきまーす!」


そう叫び、両手を広げて受けて立とうとする飛雄ちゃんに向かって走った、が、


脳裏によぎるこの間の言葉たち。覚悟しておいて下さい。なんの事か意味はわからない、わからないけれど、


その言葉が私の動きを止めてしまった


「…?どうしたんすか」


「え、わ……わかんない」


「え」


「なんか、飛びつけない…」


「……月島にはできるのに?」


「うん、なんか全然違う…」


「俺の事嫌いになりました?」


「そんな訳ないじゃん!!」

「俺の好きな人の事考えてます?」


「……?いや、それは考えてない」


「…嬉しいです、ありがとうございます」


え、なに、どういう事!?


「俺、1歩前進しました。」


「何が!?」


「じゃあ部活そろそろ始まるんで」


あれ!?また会話出来てなくない!?


「…?どうしたんですか?苗字さん」


「あ、翔陽……飛雄ちゃんが意味不明なの…」


「えぇ!?」


「なんか全然会話出来てないの、一方的に意味不明な事ばっかり言ってて」


「………頑張れ影山!!」


「!?」


え?翔陽まで会話できなくなってしまった。私が悩みを相談したのに何故影山くんを応援する。おい。




少し遅くなってしまった。今日はやる事が多くて片付けなどが後回しになっていたので、片付けに時間かかってしまった。


ほかの2人は暗くなる前に帰したので、私が最後になっている。鍵の管理も力から任された。


鍵をかけて、家路に着く。今日は幸いお父さんは外で食べてくる日だったのでのんびり校門へ向かう


「……お疲れっす」


「ぴぎゃっ!?」


校門からぬっと黒い大きな影、いや怖すぎるよ飛雄ちゃん。よく通報されなかったね??


流石に怖すぎて飛雄ちゃんの事をイケメンと判断出来なかった為、気絶は免れた。こんな所で気絶したらたまったもんじゃない。


「ど、どうしたの飛雄ちゃん」


「待ってました。もう暗いのに1人で帰るのかなって」


「あ、ありがとう!!でも私腕っ節強いし!!変質者に会ってもひとひねりよ!」


「……ダメです、自分のこと大事にしてください。」


「えぇ?自分で自分の身守れるから!大丈夫!」


「俺は心配っすよ、苗字さんの事。ちゃんと女の子として見てるんで。」


フリーズ


私の脳内に宇宙が広がる。


女の子……?ゴリラじゃなく…?破壊神じゃなく…!?


「苗字さん、苗字さん!!もう家着きますよ」


「ヘゥアッ!?あ、ほ、ホントだ。オウチカエル。」


「…すいません、最近困らせたり悩ませたりさせてる自覚はあります」


「あるならやめろやぁ!?」


こちとら悩みすぎて意味わからなさ過ぎて夜しか寝れねぇよ!?


「やめません、覚悟しておいて下さいって言ったじゃないですか」


「いや、それがどうして私が覚悟することに繋がるのか全然わかんないんだけど」


「……苗字さんから見て俺はなんですか」


「え?うーん……イケメンな可愛い後輩?」


「……。」


するとおもむろに飛雄ちゃんは私の両腕を取り、我が家の塀に体ごと押し付けた


「え?ちょ、え、なにどした」


「振り払ってみてください」


「え!?嫌だよ!!飛雄ちゃんの腕が飛ぶ!!」


「!?飛びませんよ!!」


「いやマジで!怖いからやめて!!」


「じゃあ抵抗してください、これから俺がすることに」


は?と思うと同時に、飛雄ちゃんは徐々に顔を近づけてきた


え、うわ、ちょ、まつ毛長い、月夜に照らされて美人具合がカンスト……好きだなぁ


「………あ。」


そして私はそんな美形ビームに勝てるはずも無く、無事気絶した。





「ん……?」


「あ、おはよう」


「……おはよう、あれ?」


「今ね11時だよ、夜の」


「??」

「名前家の外で気絶したみたいでね、黒髪の背の高い男の子に抱えられてね、」


「家の中にも入れず、ずっとお父さんが帰ってくるの待ってたみたいなんだよ」


「え!?」


と、飛雄ちゃんに申し訳ないことした…


「それでそのまま彼こんな時間なのに帰るって言うから、お父さん車で送ってきたよ。影山くんって言うんだね、いい子だねあの子」


にっこり、いつも通り優しく笑うお父さん。うん、いい子なんだよたまに引くほど失礼だけど。


「ところで影山くんは名前の彼氏?」


「ち、違うよ!?」


「そっかぁ……いいと思うなぁ影山くん」


「いやそりゃ影山くんはカッコイイし優しいし、バレーに対しての集中力も凄いし、天才的な部分もあるし、でも勉強出来ない可愛いとこもあるし……」


「ははは!!大好きじゃないか影山くんの事!」


「そりゃ好きだよ?!バレー部の皆大好きだよ!」


「んー?それは違うんじゃない?影山くん以外の話しても、そんな真っ赤にはならないだろ?」





急いで洗面所に行く、そこにはりんごにも負けずとも劣らないほど赤くなった私がいた


大好きじゃないか影山くんの事。言われた言葉を反芻する。


大好き、なのだろうか。恥ずかしくなって簡単に触れられなくなったのだろうか。


あの時、家の前で気絶する前、飛雄ちゃんは何をしようとしたんだ

考えるだけで意識を飛ばしそうになる。まさか、飛雄ちゃんの好きな人って


全部が繋がる、彼の意味不明な言葉も、一方的に言われた意味も。


「……うがぁぁぁああ…」


なんとも言えなくてとりあえず落ち着くまで洗面所で項垂れていた

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