呼び方


「ん?あれ、君烏野のマネージャーだよね?小さ過ぎて覚えてるよ」


こ、こいつは……!青城の及川!!……さんだ!!


今日はオーバーワーク対策でオフなのだ。その為買い物に来たのだが、及川さんに会ってしまった。


インハイ予選で我々烏野を負かしたナルシスト系のやばい人だ。女の子にキャーキャーされるのを生業としてる人。


「こんにちは、さようなら」


ヤバいやつと話すつもりなんて無い。さっさとこの場を去ろう、彼の顔に私の拳がめり込む前に。


「ちょっと待ってよ、少しくらい話さない?」


「何をですか、どこを殴って黙らせるかについてですか。」


「何の話!?」


なんで会話なんてしなきゃいけないんだ。こっちが青城に負けて悔し過ぎる思いをしたなんてわかってるだろう。ぶん殴るぞ馬鹿野郎。先輩達の為に先にやっておこうか。


「君、本当に小さいよね?身長何センチ?」


「…145cmです」


「ちっさ!?バレー部の中にいると小人扱いでしょ!?」


「バレー部どころか社会的に小人ですけど。」


「あはは!君面白いね!!名前教えてよ」


「嫌です」


「即答!?」


「仲良くする気は無いですから!!」


「えぇー?せっかく可愛いのに、その口の悪さは勿体ないねぇ」


な、可愛いなんて言われても動じないからな!!


「…苗字さん?」


「げっ…飛雄ちゃんじゃないか、何してんのここで」


「か、影山くん!!!」


「!?」


急いで彼に飛びつく。そして大きな彼に隠れた。なんか、あの人怖い。


「……うちのマネージャーに何したんすか」


「何もしてないよ!?話しただけ!」


「嘘つけ!!」


「嘘ついてないよ!?いや、君が1番わかってるよね!?」


「行きましょう、苗字さん。あの人危ないんで話しちゃダメですよ」


「なんなのその言い方!飛雄のくせに生意気な!!」


私の手を取り及川さんから離れる影山くん。やーい後輩に散々馬鹿にされてやんの、やーいやーい!


「大丈夫でした?なんかされました?」


「いや、大丈夫!ホントに話しただけ!」


「(話しただけだったのか…及川さん嘘ついてなかった…)」


「影山くんも買い物?」


「はい、苗字さんも?」


「うん!もう帰るけどね、……え、もうこんな時間!?ごめん帰る!また明日ね!」


「あ、はい…」


時計を見て驚く。もう16時ではないか。夕飯の材料も買って帰らないといけないのに。


影山くんに嵐のような人だと思われてるなんて知らない私は、今日も風になって家に帰った。






「影山くん!!」


「……っ、おはざっす」


「おはよう!!……ね、飛雄ちゃんって呼んでもいい?」


「は!?」


「ダメ?ダメって言っても呼ぶけどね??」


「なんで、急に」


「及川さんが呼んでるの見て羨ましくなった」


影山くんに飛びついたまま言う。戸惑い、若干眉間に皺を寄せた影山くんもしっかりかっこいい。頭から丸呑み出来るくらいにはかっこいい。


「……しょうがないっすね」


「ありがとう!飛雄ちゃん!!」


「おはざーっす!」


「おはよう!日向くん!……待てよ、影山くんの事飛雄ちゃんって呼ぶなら、日向くんも変えなきゃ」


「なんでっすか!?」


「2人はセットでしょ?」


2人はプリ○ュアでしょ?


「日向くんは……ノヤっさんが翔陽って呼んでるから、私も真似しようかな!?日向くーん!!今日から翔陽って呼ぶねー!!」


「えっ!?」


「(本当自由人だなこの人…。)」


「ダメ?翔陽って呼ぶの。ダメって言っても呼ぶけど。」


「(いや聞く意味!!)いいですけど、急ですね!?」


「影山くんを飛雄ちゃんにグレードアップさせたから、そのついでで。」


「ついで!?……それに飛雄ちゃんとはグレードアップなのだろうか…」


「あ!おはよう!!ツッキー!!」


「……おはようございます」


「え?なんで逃げるの?」


「飛びつかれるから」


「飛雄ちゃんはもう飛びつかれるの慣れてるよ?もはやルーティーンよ?」


「……呼び方と言い内容と言いツッコミどころ満載だけど、何も言わないから」


そう言って走り去ってしまったツッキー。酷いな、腰と顔を触るくらいいいじゃないか。


「おはよう、名前ちゃん」


「潔子さん!!おはようございます!」


「今日は記録の方お願いしてもいい?」


「合点承知です!!」


今日も美人な潔子さんとマネージャー業務に従事出来るなんて、幸せだ!!

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