ゴリラのようでゴリラじゃない


「ヘイヘイヘエエエイ!!来たなおチビちゃん2号!!」


「んだとコラァア!?私の方が圧倒的に翔陽より小さいですけどぉ!?」


「苗字、それは堂々と言うことではない」


あれ?違った?


現在地、東京。我々は都会に住むシティボーイ達と合宿をする事になりこちらに来ていた。


私をおチビちゃん2号と呼ぶこの人は木兎さん。凄いスパイカーだけど、私にはヘイヘイ人にしか見えない。


赤葦は木兎さんのストッパーだ。胃薬を飲んでそう。むしろもう体が胃薬で出来てるんじゃない?


「じゃあ名前ちゃんはドリンク作りお願い」


「合点承知です!」


荷物を持って、炎天下の中水道まで走る


皆はペナルティに練習に大変そうだ。それでも充実した練習が出来ていそうなので安心する。


一方私はシティボーイ達の中にイケメンを探す日々だ。赤葦はかっこいいと思う。でも1度、胃薬の塊じゃんって思ってしまったらそれまでだった。センサーの反応は消えた。


それにしても暑い。小柄な私は皆より太陽から遠いはずなのに全然暑い、なんでだ


「んー?あれ、烏野のチビマネージャーちゃんじゃん。どしたの?こんなとこに1人で」


「ぅえ!?あ、と、音駒の…」


「黒尾だよ。何?1人でドリンク作りやってんの?」


「あ、はい。1人でも出来る量だったんで…」


「……この量1人で持って行ける?中身入れても」


「はい、腕っ節には自信があるので」


「へぇ、小さな体なのにパワーはゴリラって感じ?」


………。


「あ!!まずい!!音駒のキャプテンが苗字と!!」


「な、なんだって!?黒尾は煽ることに定評あるから…!」


「あ、苗字さん飛びかかった」


「……そして捕まった」



「んぎゃー!!!離せぇオラぁぁぁ!!!?」


「どうどう、大丈夫だぞー怖くないぞー」


「怖い!!顔が悪い!!怖い!!」


「ゴリラって言った俺も中々だけど、お前も大概だな??」


脇に手を差し込まれてぐるぐる回られる、よ、酔う…!!


「こ、こんのぉ……巨人めぇ……呪ってやるぅ……!!」


「あ、おーい澤村ー。お前んとこのマネージャーが俺を呪おうとしてるから止めてくんね?」


「!?何してるんだ苗字!!」



「あ、大地が回収に行った」


「うわぁ苗字暴れ倒してますね……」


「あいつが悪い!!ってこっちまで聞こえるなぁ」


「あ、帰ってきた」


「苗字!他校の奴に絡むな!!」


「だって!ゴリラって!!私の事パワーはゴリラって!!」


「事実だろ!!」


「!?」


酷い……ちょっと腕っ節が強くて頼れる女の子なだけなのに……


「あ、ちょ、苗字…!」


「あーぁ、大地やっちゃった」


「苗字行っちゃいましたね……たまに落ち込むんですよね」


「流石に酷かったかな……謝ってくる」


「いやもう見えないよ?」


「はや!?」





「ねぇ、仁花ちゃん。私ってゴリラなのかな」


「!?(見た目は絶対違うけど、中身はそうだと思ってしまった…!)」


「ち、違いますよ!!人ですよ!!」


「……本当に?」


「はい!!私にはかろうじてですが、人に見えますよ!!」


「……。(仁花ちゃんも勇気あるなぁ)」


「……かろうじて」


「え、あ、あの!すいません、つい…!」


「ううん、大丈夫……ちょっと外出てくる……」


「あ、名前さん…!」


「仁花ちゃん、今はそっとしといてあげて?」


「……私、酷いこと」


「いや、割と事実だから仕方ないよ。……でも、澤村にも音駒のキャプテンにも言われてきたから、ちょっと今日は傷ついちゃったかもしれないね」


「……やっぱり謝ってきます!!」


「ううん、それは後からでも大丈夫だと思う。今ご飯食べてるだろうし」


「え?外行くって」


「名前ちゃんはね、落ち込むとご飯沢山食べるの。そうしたら元気になって帰ってくるから。それを待とう?」


「そ、そうなんですか……わかりました」





食料を管理しているマネージャーさんに聞いたところ、あまり過ぎるほどに準備してあるから、米5号ぐらいまでなら食べてもいいと言われた。


5号か……ちょっと足りないな……


でも私のせいで合宿を食糧難に陥れる訳にはいかない。炊けていた米5号分取り出し、追加で5号炊いておく。


約半分に割り、2個の巨大なおにぎりを作って、食べる。うん米が上手い。日本人で良かった!!


これだけご飯を食べるから私はゴリラなのだろうか


言われた言葉に少しだけ悲しくなる。別に腕っ節が強い事は自分の長所だと思っている。自分で自分の身や周りの人の身を守れるのはいい事だ。この考えは変わらない。


でもゴリラて。ゴリラはもう人じゃないじゃん。そういう種別じゃん。


しかも3人にまで言われてしまった。紛うことなきゴリラじゃん。仁花ちゃんはかろうじて人だって言ってくれたけど、……いやいや言ってくれたって表現もおかしいでしょ。私は人の子だから、母親は知らないけど


……え?待てよ?実は私はゴリラと人のハーフだったりする?お父さんは人で母はゴリラとか??え??


「……いや、そのサイズのおにぎりなんなんですか。」


「ツッキー……私ゴリラかもしれない……」


「は?今更?」


「違う違う!!ほんとに!!私母親知らないんだけど、皆がゴリラって言ってくるから……ほんとは母がゴリラで父が人間のハーフかも知れない……!」


「冗談はそのおにぎりまでにしといたらどうです。ゴリラだったらたぶん、もっと顔からゴリラですよ」


「え、でも人とゴリラって同じ感じじゃん」


「……同じ人間でも外国人とのハーフって見て分かりますよね?」


「…確かに!!リエーフとかわかりやすい!!」


「それなら流石に人間と人間じゃないやつのハーフなんてわかるでしょ」


「確かに!!凄い!!ツッキー頭いいね!?」


「……。そのおにぎり、食べ切るんですか?」


「当たり前じゃん、食べ物は粗末にしないよ?」


「…合宿の食糧大丈夫?」


「うん、ちゃんと聞いた。5号までは食べていいって」


「…………そう。」


なんだその目は、いっぱい食べる君が好きとか言うじゃん。


「ツッキーはもう寝るの?」


「…はい、でも谷地さんが苗字さん落ち込ませてしまったって言ってたから、ちょっとトドメ刺しておこうと思って来たんですけど」


「やんのかコラ??」


「そんな米粒大量につけて言われても」


「おっと」


「もう元気ならトドメ刺せないんで寝ます。おやすみなさい。」


「うん、おやすみー!」


いつか私はツッキーに殺されるのだろうか??

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