折れる折れる


「ちわっす」


「あ…………」


「?どうしたんすか苗字さん」


「あ、まずい!!ノヤっさん!!」


「影山!!逃げろ!!」


「は?」


「飛雄ちゃぁあああああん!!!!」


「うわぁ!?」


1週間ぶりの飛雄ちゃんに飛びつく。たまらん……たまらんよこの腰……美人なお顔……会いたかったよ飛雄ちゃん……


「うぉいおいおいおい……毎日のルーティーンである飛雄ちゃんの腰と顔を拝む事が出来ない1週間……辛すぎて……」


「(…泣くほど俺の事、)」


「毎日泣きながら東京行くの止められてた……」


「!?」


「影山……嘘だと思うだろ…でもこいつ目離すと駅に向かって走り出すんだぜ……」


「お陰で俺ら2年は休み時間も昼休憩も部活中も見張らなければならなくなったのだ……」


「……お疲れ様です、もう俺戻ってきたんで大丈夫っすよ」


「は?かっこよ」


「なんで苗字さんがキレてるんすか」


私にはそんな優しい言葉かけてくれないくせに


「ちわっす!」


「……ちわっす」


「!!!」


「やべぇ!!月島!!逃げろ!!」


「は、ってうぐっ!!!」


「いやお前今どうやって移動した……?影山から飛び移ってなかったか…?」


「ヅッギィィイイイ!!!ひざじぶりぃい……」


「うわ泣いてる……ちょ、離れてくださいよ、鼻水つくでしょ」


「私の涙と一緒にうげどっでぇ?」


「嫌に決まってるでしょ、ちょ、うわ汚なっ!!」


「苗字さん!ツッキーが苗字さんの事殴る前に離れてください!!」


「嫌だぁぁ!」


「ちょ!!誰か手伝ってください!!」


「「任せろ!!」」


「田中さん!西谷さん!!…いきます、せーの!!」


「いだだだだ!!ちょ、僕が折れる!!なんであなたは平然としてるの!?千切れそうだけど!?」


「物理には強いんで、私」


「クソっ苗字のやつ謎の余裕を見せてやがる……」


「流石だな、苗字。…でも負けねぇぞ!お前ら!男見せろ!!」


「おう!」


「はい!」


「いや、はいじゃなくて。僕が折れるって…ちょ、きいて、いでででで!?」


「月島!!もう少しの辛抱だ!!」


「どこが!?この人顔色ひとつ変えてないですけど!?」


「絶対離れないマン」


「なんか意味不明なこと言うくらい余裕ありますよ!?」


「男3人がかりでも太刀打ちできないって……」


「…おい!影山!手伝え!!」


ふっ、飛雄ちゃん1人増えようと私は離れんぞ!


「……苗字さん」


すっと顔に手を添えられ、飛雄ちゃんの方を向かされる


するとそこには至近距離の飛雄ちゃんの綺麗な綺麗なお顔


「離れてください、月島折れるんで」


「あ、離れた」


「と言うかこれ……」


「気絶してる……流石だな影山……苗字の扱いに慣れてきてる……」


「とりあえず俺の顔が好きなんだなって、やっと理解出来ました。なので扱い方もなんとなく。」


「俺たち狙われる側は扱いさえ覚えればなんとかなる!!」


「いやいやそもそもあの人の行動を止めようとは思わないんですか」


「「無理だろ」」


「そうやって甘やかすから……」

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