「で?その話を僕にしてどうしたい訳?」


「誰かに聞いて欲しかったんです……うちの影山飛雄がとんでもないって……!」


「あっそ、宇宙一どうでもいいよ。」


「今日も酷いね??」


東京から戻ってきた週の金曜日、私はツッキーに惚気散らかしていた。ごめん、罪悪感はある。でも誰かに話したかったんだ……!!ちなみに里香には報告済みで、


話してる私も聞いてる里香もお互いに悶え苦しんだ。イケメンで高収入言わずもなが高身長。ステータスだけで見てもしんどいのに、優しくて一途で、とても私の事を愛していてくれている。こんな彼氏いるだろうか??


「まぁ順調ならいいんじゃない。お互いしぶとく忘れられなかったかいがあったよね」


「うん、本当に。諦められなくて良かった!」


「……うん。次はいつ東京行くの?」


「2週間後、金曜に仕事終えてから行こうかなーって!」


「夜10時くらいに向こう着くんじゃない?大丈夫?事故らない?」


「……ツッキーが素直に私の事心配してる…!!」


「死なれたら後味悪いからね」


「言い方!?大丈夫、もう結構慣れてきたし眠たくなったら飛雄くんに電話するって約束してる」


「そう。まぁ気をつけて。」


「うん、ありがとう!」





そしてツッキーとの会話から2週間後の金曜日、


私は床に伏せっていた。あれ??


朝から38度の発熱。会社も行ける状態では無いため休み、一人暮らしで買い物も行けそうにないので里香に仕事帰りでいいので買い物を頼んだところだ。


風邪を引いたのなんていつぶりだ……しかもよりによって飛雄くんに会いに行く日だなんて。会いに行くのが楽しみすぎて浮かれてしまっただろうか


そうだ、飛雄くんにも謝罪のメールをしなければ


『おはよう、ごめん。今日行けなくなっちゃった。』


『おはよう。どうかしたのか。』


『風邪引いて、熱出ちゃって……会社も今日休んだの、そっちに行ける体力も無いから行けない。ごめんね。』


『大丈夫か?一人暮らしだろ?飯とか薬用意できるのか』


『買い物には行けそうにもないから、友達に頼んだ。何とかなりそう、心配かけてごめんなさい、また改めてそっち遊びに行くね!』


『気にするな、まずは休んでくれ。』


『ありがとう、そうするね』


『こういう時、そばにいられねぇのきついな』


うっ!!文章からでもイケメン力を感じる。なんなんだこの彼氏!!婚約者!!うわああ!!!


『その気持ちだけでも嬉しい!じゃあ寝ます、おやすみ』


『おやすみ』


会話が終わった事を確認して、ベットに横になる。頭が痛い、しんどいなぁ。もう若くもないし治りも遅いかもしれない…。


そう言えば、今日は金曜日だ。ツッキーにも連絡しなければ。


『おはよう、今日熱出したから夜行けない。ごめん。』


『おはよう、名前さんって風邪引くんだね』


え?馬鹿だって言いたいのかな?


『ちゃんと引きます!また来週ね』


『今日影山に会いに行く日じゃないの』


『うん、でも行けないから断った』


『そう、お大事に。』


珍しく素直に言われると調子が狂う。私はツッキーの事なんだと思ってるんだ…





喉が乾いて目が覚める、時刻は現在17時半。そろそろ里香から連絡があってもおかしくはない


水を飲み、携帯を開くと里香から今から買い物してくる!!と5分前にメッセージが届いていた


危ない、せっかく来てくれるのに寝てたら失礼すぎる。もう寝たら危ないから起きておこう


恐らく30分以内には来るだろうと考え、私はリビングのソファに腰掛けた





軽いご飯に薬に水。あとはゼリーくらいかな?風邪引いた日って他に何が欲しいんだろう?


名前から頼まれた物の他に何がいるのか考えてみる。しかしそれくらいしか思い当たらない、明日からの分も買っといてあげよう、1人なんだから大変だろうし!


会計を済ませてここから歩いてすぐの名前の家を目指す


先程のメッセージ、すぐには既読つかなかったけど起きてるかな?と携帯を見ればありがとう!と返信があり安心した。鍵なんて持ってないから入れないしね。


明日から休みだー!何しようかな、名前の様子も1日1回くらい来てあげようかな、なんて考えながら歩いていると遠目にでもわかるくらい、大きな人がいた


大きい、と言うのは縦にも横にも。あ、横にもと言うのは太ってるって事じゃなくて肩幅とか、筋肉質でってこと。


そして日向選手のファンである私からしたら見覚えがあるシルエット。もしかして、わざわざ来てあげたのだろうか。


しかし、彼はきょろきょろと辺りを見回している。家の場所、聞いてないのかな?


「あの、」


「!?は、はい」


「影山飛雄選手ですか?」


「あっ……うす、どうも」


「わぁ!やっぱり!!いつも見てます!」


「あざっす、……あの、今は写真とかはちょっと、」


気まずそうにそう言う影山選手、当たり前だ今はとーってもプライベートな時間だろう。愛しの彼女に会いに来る、なんてこれ以上無いプライベートだ!


「あ、それは勿論!!……もしかして名前の家探してます?」


「え!?」


「申し遅れました!私、名前の同僚兼親友の里香です!今からこれ届けに行こうと思ってたんです」


そう言ってスーパーの袋を見せる、びっくりして目がまんまるになった影山選手は少し可愛く見えた。日向選手には叶わないけどね!


「ちゃんと影山選手との事名前から聞いてますよ!そりゃあもう幸せそうに話すもんだからこっちまで嬉しくなります」


「…俺の事、話してくれてるんですね」


「はい!なんなら高校生の時から聞いてましたよ?」


「え!?」


「高校生の影山くんの話も面白かったけど、今の影山選手との話も私は大好きです。昔よりずっと名前が幸せそうだから!」


「……あざっす、なんか自信つきました」


「えぇ?不安に思うことなんかあります?」


「名前美人だから、……やっぱり心配なもんは心配です」


「確かにね、でも大丈夫!私毎日名前と一緒にいるけど、影山選手以外のこと目に入ってないですから!」


それも高校生の時からずっと!と付け加える。それはもう可哀想になるくらい忘れられなかったのだから。


「嬉しいっす。…名前には、良い親友がいるんすね」


「えぇ!?そんな!大袈裟なー!!まぁでも名前の親友の座は誰にも渡す気無いですけど!」


それくらい、彼女は一緒にいて楽しい人だ。影山選手以外には渡さない!!


「あ、そうだ!家教えるんでこれ、代わりに届けてきて貰えませんか?」


「え、いいんすか?」


「いいですよ!むしろそっちの方が名前も元気になるでしょうし!」


「でも、その、里香、さんも会いたいんじゃ」


「私なんかいつでも会えるんで!わざわざ東京から来てくれたんでしょ?会ってあげてください!」


「……すんません、あざっす。あの、タメ口でいいっすよ、名前と同い歳ぐらいっすよね?」


「え!?いいの!?じゃー遠慮なく!同い歳!立派なアラサーですよぉ」


「あの、ほんとありがとうございます。またなんかお礼します、俺が出来ることならなんでも」


「え!?なんでも!?いいの!?……実は私日向選手のファンで……」


「日向?…じゃあ今度あいつ連れてきましょうか?」


「えぇっ!?いいの!?」


「いいっすよ、そんなんで良ければ。あいつ誘えば大抵来るんで。」


「嬉しい!!それならこんな道案内なんて安いわ!!こっちだよ!おいで影山少年!!」


「少年ではないっすよ」





訪問者を知らせるベルが鳴る


里香かな?時間的見てもその可能性が高いだろう


「はーい」


「こんばんは」


「!?!?!?」


「熱、大丈夫か」


「えっ、ちょ、なんで飛雄くんいるの」


「心配で、明日オフだったから来た。でも、家わかんなくて道端で困ってたら里香さんに助けてもらった」


「え?里香?ええ?知り合いだったの?」


「いや、今日知り合った。これ、里香さんから。道も教えて貰って。」


スーパーの袋を見せる飛雄くん。な、なんと……物凄い偶然だ



と言うか心配で東京から来てくれたと言う事実が嬉し過ぎる。昇天しそう。


「あ、ありがとう、来てくれて……凄く嬉しい。…あ、マスク!!マスクする!!」


スポーツ選手に風邪なんか移せられない。急いでマスクを装着し、飛雄くんにも渡した


「あざっす、熱は測ったか?」


「うん、さっき起きて測って37度ぐらいに下がってた」


心做しか体も楽になった気がする


「良かった……飯、食べて、薬飲まないと」


「うん、ありがとうもらうね?」


「…礼なら里香さんに言ってくれ。買ってきたの俺じゃない。」


「うん。また里香にはお礼しなきゃだなぁ…」


「それなら大丈夫だ、日向に会いたいらしいから約束取り付けた」


「え!?!?そんな私用で呼んじゃっていいの!?」


というか里香も遠慮無いなぁ……そういう人だけど


「?日向にも名前の友達に助けられて、お前のファンらしいから会ってくれって言ったらすぐいいぞ!!って返ってきたぞ」


あれ、アイドル的人気を誇るプロバレーボーラー達よそんなんでいいのか


「そ、そかそか……ありがとう、里香凄い喜ぶと思う」


「おう、よく話す人だな」


「ほんとに……失礼な事言われてない?あの人遠慮が無いから」


「いや。………俺の事、高校生の時から話してくれてたんだな」


「え、あ、……うん、事ある毎に報告してた、ごめん嫌だった?」


「いや!むしろ逆。すげぇ嬉しい。俺の話してる時幸せそうだって聞いた」


「え!?そ、そうなんだ……幸せだもん、顔に出てたのかな」


自分で言って恥ずかしくなる。う、うう……熱が上がりそう


「俺も、幸せだ。」


そう微笑んで顔を近づけてくる飛雄くん


いや、ちょ!!


「だ、駄目!!」


「!?」


「風邪移るでしょ!!」


「俺は風邪引かない」


「!?」


「だから安心しろ」


飛雄くん……ドヤ顔で言ってるけどそれは……いや黙っておこう


「でも駄目、また元気になって会ったらにしよう?」


「目の前にいるのに我慢できるか」


「駄目!我慢しなさい!!」


「無理言うな」


そう言って互いのマスクを外し、私の後頭部へ手を回した飛雄くんはひと息に私の唇を奪った


「………っもう!!」


「俺の勝ちだな」


「なにが!?!?もう駄目、ほんとに。寝る!!」


ご飯も食べて薬も飲めたので早く寝て回復に努めよう。


「飛雄くんはいつまでこっちにいる……?」


「今日は実家に泊まって明日の朝東京に戻る」


「そっか、」


「……明日の朝、また来てもいいか?」


「!!……うん、来て欲しい」


私が欲しい言葉をすぐにくれる飛雄くんには、私の感情が筒抜けなのではないかと錯覚する時さえある


「おう、……また明日な、よく休めよ」


そう言っておでこにちゅーして彼は帰ってしまった


鍵を閉めて、悶える。ううう、少ししか会ってないのに心臓ばっくばく。何度見てもかっこいいし、惚れ直す。


ベットに戻ってからもしばらくは飛雄くんの顔が頭から離れず、挙句の果てにその日の夜は夢にまで出てきた。影響力……!


back
top