ちょっと待ってよ!
「私さ、飛雄ちゃんは翔陽と結婚したらいいと思うんだ?」
「あ………でもそれちょっとわかります」
「わかるのかよ、やっちゃん!?」
「日向も、影山くんの事ばっかり話してて…」
「ね??飛雄ちゃんも。日向に負けらんねぇ、とか日向がもうすぐ日本に来るとか。翔陽戻ってくる前からずーっとこれだよ!?」
「うわぁ……やっちまってるなー影山…」
「いや別に嫌いになったとかそんなんじゃないですけど、純粋に飛雄ちゃんの幸せには翔陽がセットなのでは?と思うのですよ私は」
「……それ、王様に言ったことあります?」
「無いけど?次会ったら言おうかな」
「「やめとけ!?」」
「なんで!?」
「いや、ちょっと想像すればわかるだろ!?」
「何がだ。」
「あいつ怒ると思うなー…?苗字の事めっちゃ好きだし…」
「いやいや、冗談でですよ!?私だって飛雄ちゃん渡す気無いですし!!」
「苗字……!」
「大人になったなお前…高校生の時は全然そう言う感情影山に対して言えなかったのに……!」
「5年経ってるんですよ!?成長しますよ私だって!」
◇
『今日家行っていいっすか』
飛雄ちゃんからメッセージ。今日は散々元烏野高校排球部のメンツで飲んだくれた結果、飛雄ちゃんへの愚痴を吐き出してしまったため、
微妙に罪悪感に駆られて、あまり会う気が起きなかった
『今日は疲れたからダメ!!もーすぐ私に会いたくなるんだから!』
『駄目ですか、彼女に会いたくなるのは』
「ぐぅうううう!!!」
文面でもイケメンって何?は??キレそう
『私は!!絶対!イケメンに屈しない!!』
『そっすか。今から行きますね』
あれ??文章上での会話が成立してないんだが?
飛雄ちゃんは今東京で一人暮らしをしている
超絶人気なイケメンバレーボーラーだからね!!都会に住んでいないと色々不便なんだそうだ
それに対して私は宮城から出ておらず、実家から通える距離の運動施設の職員となったが、
父の再婚を期に家を出た
別段新しい母親と仲が悪い訳では無いけれど、いかんせん成人してから母親が出来たと言われても受け入れられないのが現実で。
母親、と言うより父の再婚相手としか見れなかったため、二人の時間を邪魔する気もないので家を出ることとした
父は酷く寂しがったが、たまに会いに来ると約束して宥めたのだ
それからと言うもの、飛雄ちゃんは度々宮城に帰ってくるのだが、その度に私の家へ寄ったり寄らなかったり。
月に一度は必ず会うが、それ以外の時は飛雄ちゃんや私のスケジュールを鑑みて、会うかどうかを決めてるのだ
ピンポーン
早!?何?ロードワーク中だったの!?
急いで玄関へ向かう
「こんばんは!飛雄ちゃん!」
「今覗き穴から俺って確認しました?」
「へ?してないけど。飛雄ちゃん以外いないし、宅配もたのんでな」
「そういうの、辞めてくださいって言いましたよね?」
「ひょぇっ」
「女の一人暮らしなんだし、気をつけてくださいって言いましたよね?」
「い、イイマシタ……」
飛雄ちゃんが真顔で怒る。めっちゃ怖い。美人だからすげぇ怖い。ノヤっさんじゃないが、ちびりそうだ。
飛雄ちゃんはこうして私が一人暮らしを始めてからや、彼自身がイケメンバレーボーラーと有名になってから口うるさくなった
以前聞いたところ、先輩選手の彼女や家族が過激なファンに襲われた事があると聞き、充分用心して欲しいとの事だ
しかし襲われた所で私がやり返すと私が刑務所行きになる可能性が高いので、そもそも遭遇しないように気をつけろと言われた。
おめぇ自分の彼女に対して「?名前さんが刑務所行くんでやり返すのは辞めてくださいね?」とかよく言えるな、と当時飛びかかった覚えがある。
「……すんません、会って早々」
「いやいや!言われた事守れてない私が悪いし!心配してくれてるんでしょ?」
襲ってきた相手の方をな
「はい、………?酔ってます?」
「うん、ちょっと!!今日烏野高校のメンツで飲んでた!」
「えっそうなんすか」
「飛雄ちゃんも呼ぼうか?ってなってたけど、私も会わないくらいだし、時間無いんじゃないかってなってね。次宮城来た時誘おうねってなったよ!」
「そうなんすか、やる事すぐ終わったんで呼んでもらって良かったのに」
「ごめんね!!!そんな寂しそうな顔しないで!!性癖に刺さる!!」
憂いを帯びた瞳まで美人って何??食べちゃうよ?頭から丸呑みしちゃうよ?
「楽しかったっすか?」
「うん!!飛雄ちゃんの話も沢山したよ、仁花ちゃんもいたから翔陽の話も聞いたし」
「日向?いつも俺が日向の話はしてるじゃないっすか」
「聞き飽きるくらいにね。仁花ちゃんはプレー以外の翔陽の話を聞かせてくれたよ、ブラジルでの話とか!」
その話のくだりで思い出す。飛雄ちゃんは翔陽とのプレーが1番楽しそうだってこと
「それでねー、飛雄ちゃんは翔陽と結婚するのがいいんだろうなーって思ったんだぁ」
なーんちゃって
「は?」
………………。
ま、まずい、顔がマジでキレてる
冗談だよ!って言える雰囲気は泣いて逃げ出した
「何気持ち悪いこと言ってんすか?」
「ひぇっじょ、じょうだ」
「あんたいい加減にして下さいよ?まだ俺が名前さんの事どれくらい好きかわかってないんすか?」
「い、いや、そんなこと」
「愛してます、心から。何より大事です。わかってます?頭の中叩き込んでありますか?」
頭を大きな手で掴まれる、ここここ怖いよおおお!!!うわぁあああ!!
ぷるぷる産まれたての小鹿のように震える私を見て、飛雄ちゃんがため息をつく
こんな状況だが、ため息をついてる飛雄ちゃんもかっこいい。ほんとにこの人私の彼氏かよ
「……すんません。…俺、余裕無くて」
「イ、イエ。大丈夫デス」
「名前さん誰にでも笑うから。かっこいいとかすぐ言うし。飛びつくのは辞めて貰えたけどその他のスキンシップ多いから、いつも心配になります」
「ご、ごめんね!?」
そんなスキンシップ多くとってる自覚は無いが……あれか?田中の毛根を根絶やそうとして頭を触るとか?
ツッキーのメガネを結局高校生のうちにかち割れ無かったから、奪い取ろうとするやつとか?
「私だって飛雄ちゃんの事大好きだよ?伝わってない?」
「……伝わってます、俺の為に色々してくれるし頑張ってくれてるのわかってます」
「でも心配になるの?」
「…………だって、名前さん綺麗になり過ぎました」
「は?」
何言ってんだろこの巨人
「背だって少し伸びたし、もうそんな小人じゃねぇし、大人っぽくなって綺麗になって……不安になります」
「なんじゃそりゃ!?伸びたって言っても必死にカルシウム取って縄跳びしまくって5cm伸びた程度よ!?150cmよ!?」
「でも!子供っぽさは無くなったし!……化粧すると普通に綺麗な女の人だから!!」
「う、うぐっ……そ、そりゃ、飛雄ちゃんの隣歩くんだったら多少なりとも綺麗になりたかったんだもん!!」
「……え?」
「化粧とか苦手だし、服だって適当なやつしか持ってなかったけど……飛雄ちゃんが自慢できる彼女に少しでもなりたかったんだよ!」
あぁああああ言ってしまったああああ!!
激重発言?これは激重発言認定される???ベストオブ激重??
私、ひたむきに頑張ってきたの…!アピールで賞!!受賞!!!!
「……ほんと可愛いっすね」
「えっ」
真っ青になる私に対して、心底嬉しそうに笑う飛雄ちゃん
「俺の為にそんな事まで……そういうとこめっちゃ好きです。俺が見てない所でまで頑張ってくれるの」
「いや、その、……う、ううう」
「照れてます?」
「照れるわそりゃぁ!?やんのかゴルァ!?」
「やりません、好きっす。名前さん」
ぎゅーっと抱きしめられる
何度も感じた温もりに落ち着く。飛雄ちゃんに抱きしめられると眠くなるんだよなぁ
「名前さん、今日泊まってってもいいっすか?」
「?いいよー、明日何時に帰るの?」
「昼ぐらいっす。時間あるんで大丈夫ですよ」
「そかそか!………?飛雄ちゃん?何してんの?」
徐に私を抱き上げる飛雄ちゃん
「俺ほんと名前さん好きです」
「??あ、ありがとう?」
「だから、お風呂上がりでパジャマ着て脚出してる名前さん見たら止まれねぇっす」
「!?!?」
ま、まずい。喰われる!?そんな事するまで考えてなかった。安直に泊めることを許可してしまった
目をギラつかせる飛雄ちゃん。頭ではそんなつもりじゃ!なんて考えてるのに捕食者の顔をした飛雄ちゃんにきゅんきゅんしっ放しだ
ベットに私を降ろして、組み敷く
「いただきます」
「え、ちょ!!」
「愛してる、名前」
強気になると敬語が抜けるのやめてくれ
私は骨抜きにされてしまうから!!!
なんて言いたい私の唇は飛雄ちゃんに塞がれた
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