どこだどこだ


慣れない改札と見慣れぬ街並み


来たぜ!!!東京!!!!





「けんまぁあああああ!!!」


「うわ、ちょ、やめてよ苗字……」


「久しぶり!!!」


「うん、久しぶり。今日も元気そうだね」


「元気しか取り柄がないからね!」


「じゃあ行こうか、案内したらちゃんと動画撮らせてくれるんだよね?」


「もちろん!!!二言は無い!」


ここは東京。シティボーイ達の住処だ。我が彼氏飛雄ちゃんもシティボーイの仲間入りを果たして少し悔しい


今日は私が東京に遊びに来た。度々来るのでブラックジャッカルの選手やアドラーズの選手たちとも仲良しだ


しかし、何度来ても東京では迷子になる気しかしないので、いつも飛雄ちゃんに迎えに来てもらったりとか、悪人の黒尾さん、はたまた運が良ければ研磨に迎えに来てもらったりしている


ちなみにいつも何かしらの交換条件を提示されるが、今回は私がお重3段を毎日食べていたと言う話を聞きつけた研磨に、大食いの動画を撮らせて欲しいと頼まれた


そんなの見栄えしないのでは?と聞き返したが、この体であのエネルギー量摂取するというのが面白いんじゃん。と言われた時は私のスマホから嫌な音がした


流石に顔を公表するのは嫌だと話したら、「目だけ隠して犯罪者風にしとくよ」と言われ、私のスマホはバリフォンへと進化した





「はいここ、そろそろ覚えたら?」


「それは難しいなぁ?覚えると研磨とも会える理由無くなるしなー」


「……人たらし」


「え?何?その言葉??褒められてるのか貶されてるのかさえわかんないんだけど?」


人たらしって何?


「なんでもない。動画はいつでもいい、東京にいる時間は貴重だろうから、俺がまた宮城行くよ」


「ありがとう!そうして貰えると助かる!じゃあ行くね!」


「うん、いってらっしゃい」


「行ってきます!」





テクテクと練習所内を歩き回る。守衛さんに影山の、と言っただけで通された。ほぼ顔パスか?お?


Vリーグ選手の練習所顔パスの女ですけど何か??って強気で生きていけるな??ステータス高いな?


「おっ!! 」


「あっ!!」


「来たな!飛雄セコム!!」


「出たな!!ツムツム!!」


因縁のライバル、ツムツムが現れた!!


ツムツムと言うのは宮侑と言う同い年の選手だ。


いつか人生ツムツムしてくれたらな、と言う願いを込めてツムツムと呼んでいる


ツムツムは高校2年生の時に全国大会で初めて会ったが、その際に飛雄ちゃんを煽っていたのが忘れられず、喧嘩を売ったのが始まりだ


飛雄ちゃんを不快にする奴は絶対許さないマン!!!とディフェンスしてたら「あ、自分自身は棚に上げるスタイルな?」と言われ、飛びついたのも懐かしい思い出である


「ん?飛雄くんは?」


「まだ会ってない。現在捜索中!」


「そかそか、探すの手伝ったろか?」


「結構です。飛雄ちゃん、ツムツム見ると不快な気持ちになるから」


「んな訳あるか!?俺普通に苗字おらん時飛雄くんと話すけど!?」


「!!!………飛雄ちゃん可哀想」


「なんでなん!?」


飛雄ちゃんはいつも私といる時にツムツムと遭遇すると不機嫌になる


=ツムツムが不快にさせてる


という事でツムツムは飛雄セコムの排除対象となる


「さらば、排除対象!!」


「なんでなん??」





「おっ!!チビちゃんじゃねぇか!迷子か?」


「あ!!木兎さん!!ちわっす!迷子じゃないです、飛雄ちゃん探してます」


「影山ならさっき入口の方向かってったけど?」


「え!マジか!入れ違いになってしまった……」


「いつも待ち合わせとかしないのか?いつもこうやって探し回ってるじゃねぇか」


「入口で待っててくださいって言われるんですけど、なんか待つのは性にあわなくて!!」


「なるほどなぁ!お前らしいな!!」


ハッハッハ!!と快活に笑う木兎さん、見ていて気持ちがいい!


「じゃあ私は入口の方戻りますね!」


「おう、またなー!」





「????おらん」


入口まで戻ってきたが、飛雄ちゃんはいなかった。あのヘイヘイ人まさか嘘ついただろうか


「………苗字じゃないか」


「あ!牛島さん!」


ウシワカこと、牛島さんが現れた


牛島さんとは高校2年生の時の県大会決勝で戦い、その時はこのデカブツ!!出来すぎ!!顔も良い!!って嫌ってたけど(?)


飛雄ちゃんがアドラーズに入って、遊びに来た時。何故かお菓子をくれたので、私の中では良い人になった。


そして会うといつもお菓子くれたり、遊んでくれたりするので、私の中での旭さんポジションだ。


「こんにちは!」


「こんにちは。」


「飛雄ちゃん知らないですか?」


「…?先程までここにいたが」


「あれれれ」

じゃあ木兎さんは嘘つきじゃなかった。すんません!!


「電話するか?」


「いや!自分で見つけたいので、大丈夫です。捜索してきます!」


「苗字」


「へい!」


振り返ると鞄からお菓子の箱を出して渡してした。おっ今日はクッキーか!しかもここのやつ美味しくて有名なやつ!!


いつも牛島さんはちょっと良いお菓子をくれる。庶民はわざわざ買わないようなちょっと良いやつ。なので東京に来て牛島さんに会えるとラッキーだ!!


「わ!!ありがとうございます!これ好きなんです!!」


「そうか、なら良かった。気をつけてな。」


「はい!!」


牛島さんがくれたクッキーを手に、ガラガラキャリーバッグを鳴らして先を急いだ





「…………いひゃいひゃあ」


疲れたので練習所内のベンチに座ってもしゃもしゃ牛島さんがくれたクッキーを食べる。めっちゃ美味しい…!!


恐らくスマホには鬼のように飛雄ちゃんから電話かかって来てるだろうが、見ないようにしている


まぁ練習に戻る時は連絡もやめて練習に行くだろうし、練習所の中を1人でうろちょろするからこそ会話出来る人だっているのだ、これはこれで楽しい!


「…………??………!!あ!!!いた!!」


「!?」


急に聞こえた大声にびっくりして、クッキーを喉に詰まらせる。げっほげほ


「苗字さん!!やっと見つけたぁ」


「翔陽!!久しぶりー!」


「久しぶりって言っても1ヶ月くらいですよ…先月も苗字さん来たじゃないですか」


「そだっけ?」


「影山が探してましたよ!こんな顔して」

と目をつり上げる翔陽、あまりに想像出来て笑えてしまう


「あっはっはっは!!マジかぁー!誰から目撃情報聞いたかな?」


「侑さんと牛島さんが影山に教えてくれたみたいで、走り回ってましたよ」


「そっかそっかー……それで飛雄ちゃんどこにいるの?」


「えっと、さっきあそこにいたから……あれ?いないな……?ちょっと見てきます」


そう言って走り去った翔陽、……これはまた逃げるチャンス?


飛雄ちゃんに探してもらうのは気分がいい、飛雄ちゃんは最悪だろうが。でも楽しんだもん勝ち!と私はまたクッキーとキャリーバッグを手に歩き出した


…………………………


「あれ!?」


「おい、いねぇじゃねぇか!?日向ボケェ!!」


「い、いや!さっきここに居たんだよ!!ここでクッキーもしゃもしゃ食べてて……」


「……また牛島さんに餌付けされたのか、名前さん。またお礼言っとかねぇと…」

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