苦労人or容疑者


『人気イケメンバレーボーラー影山選手に熱愛!?』


「…………………………は?」





ピンポンピンポン!!!


「ったくうるせぇなぁ!?誰だコラァ!?」


「た、田中さん!!」


「って、影山かよ!?なんだよ、どうした!?顔色悪いけど、」


「名前さん知らないっすか!?」


「は?苗字?知らねぇけど。って言うかお前が知らねぇのに俺が知るわけねぇだろうが。」


「っすよね……。」


「何かあったの?」


「清水先輩……。」


「もう田中、ね。」


「あ、…田中先輩。……この間の報道見ました?」


「報道?……あぁ、お前の熱愛!って奴?見たぞぉ、まぁ有り得ねぇな!って思ってたけどな!!」


「私も。それに他の元烏野高校のメンバー皆そう思ってたよ。」


「それなら良かったっす……あの報道出た日から名前さんと連絡取れてないんです。」


「は!?」


「え!?」


「勿論、すぐに連絡しました。誤報ですって、なのにそのメッセージに既読がついただけで、電話も、メッセージも返事が無くて…。」


「い、家は!?こっち来たんだから行ったんだろ?」


「勿論です。……でも、いなくて、鍵もらってるんで入っても、いなかったんです。」


「そ、そんな……。」


「危険ね……。」


「やっぱりそうですよね……。」


「あいつ、落ち込んでるだろうしなぁ……。」


「……クソ、警察に捕まる前になんとかしねぇと…!」


「どこの飲食店にいるかな……、どこか、食糧難に陥れてないといいけど…。」


「…すんません、ありがとうございました。他探してみます。」


「おう、俺達も聞き込みしてみる。何か情報があったらすぐ連絡する!!」


「あざっす!」


「もし警察に捕まりそうなレベルで飲食店を襲っていたら、SNSに情報上がってくるかもしれないから、SNS上でも探してみる。」


「すんません……あざっす、おねしゃす!!」





「知らないっすか……。」


「まぁ、あれだな。とりあえず通報があって苗字っぽかったら連絡する。他にも目撃情報無いか聞いてみるよ。」


「すいません、澤村さん…。」


「いや、影山が謝ることじゃないぞ。……全く、苗字の奴大人になっても影山に心配かけて。」


「俺が報道出るような行動取ったから、いけないんです。」


「でも、根も葉もない内容だったんだろ?」


「……はい。」


「じゃあ防ぎようが無い!気にすんな!!とりあえず皆で苗字を探すべ!」


「……あざっす。」





「!!も、もしもし!?名前さん!?今どこにいるんすか!?」


『……んぐっ、……飛雄ちゃんには言わない。……んぐ。』


「なんか食ってますね!?どこの飲食店襲ってるんすか!!」


『おそっ…!?襲ってなんか無いよ。……むぐっ、浮気者の飛雄ちゃんには絶対言わない。』


「浮気なんてしてないっすよ!!メッセージ読んでくれました!?」


『読んだけど、なんとでも言えるじゃん。好きだとか愛してるとか。』


「………本気でそんな事言ってんですか。」


『言ってるよ。だってじゃあなんであんな距離感の女の人がいるのさ!!』


「それは、たまたま身をかがめた時に近くなっただけで…。」


『言い訳なんか聞きたくない!!んぐっ、飛雄ちゃんなんか!んぐ、知らない!!』


ブチィっと切られた通話。


怒りながらずっとなんか食ってたなあの人。


とりあえず今は意固地になっているようなので、連絡するのは辞めておこう。それにしても本当に、どこに行っちゃったんだ……。





「影山あああああ!!!!」


「田中さん!?」


「苗字見つけたぞ!!」


「ど、どこですか!!」


「東京だ!!」


は?


「と、東京……!?」


「これ見ろ!潔子さんが見つけた!」


田中さんの持つスマホを覗き込むと、


『これで18杯目!!この人の胃袋どうなってんの!?』


と言う投稿と共に、カレーを頬張る名前さんらしき人の写真が映っていた。


「この人にDM送ってどこですか、って聞いたら東京だってよ!!」


「東京……なんでそっちまで出てきたんだあの人……。」


こっちは宮城で走り回ったというのに。


「とりあえず、東京戻って1発殴ってこい!」


「はい。あざっした!」


田中さんに頭を下げて、駅に向かう。





「もしもし?」


『……名前さん。』


「居場所なら言わないよ?飛雄ちゃんの顔みたらムカつくかもしれないし。」


『……はい、それは俺もです。』


「え?」


俺もです?


電話越しにざわざわと騒がしい声がする。


カレーをたらふく食べ終え、2軒目に天丼をたらふく食べ終えて飛雄ちゃん宛の請求書を書き終え、電話に出ていると、周りが騒がしく感じる。


え?何?


ざわざわとざわめいてる人たちを見ていると、私の背後を見ているようで。


その瞬間、酷く目立つ身長や端正な顔立ちを持った近しい人間を思い出す。


「……飛雄ちゃん?」


『はい。』


「………今どこにいるの?」


『………今。』


とん、肩に何かが乗る。


『名前さんの後ろにいます。』





「ってことがあったからね?それからは下手に困らせるのは辞めたんだ!」


「と言いつつ、この間も練習所の中探し回らせてましたよね……?」


「ちなみにその後、飛雄くんから制裁は受けなかったん?」


「受けた。飛雄ちゃんの家に運ばれて、逃げ出そうとしたら驚きの瞬発力とJAPANの力で押さえつけられて、拳で脅迫された。」


「こわぁ!?」


「もう二度と逃げ回らないとしないと誓いますか?って言ってた飛雄ちゃんはちびりそうなくらい怖かったなぁ!!あはははは!!」


「翔陽くん……俺はいつか飛雄くんが容疑者にならないか心配や……。」


「俺もです……。」


「困った飛雄ちゃんの顔が好きだからさ?ついね、やりたくなっちゃうんだよ。」


「……実際、あの報道見た時は怒ったんですか?」


「え?全然。」


「意外とそこら辺は寛大なんやな。」


「だって飛雄ちゃんが浮気なんてする訳ないじゃん!してたらそこは大乱闘〇マッシュ〇ラザーズが始まるよ!?」


「始めないで下さい……、まぁいつも通り仲良しなんですね。」


「おうよ!……あ!飛雄ちゃーん!!」


「あれ、名前さん。今日来るって言ってましたっけ?」


「言ってない!けど会いに来たよ!」


「……そっすか。嬉しいっす。」


そう言って抱き着いた名前さんを抱き留める影山。


笑い合う二人は喧嘩もするが、やっぱり仲が良いようだ。

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