何が欲しい?


「飛雄ちゃんに誕生日プレゼントをあげようと思います!!」


「恐怖のトラウマとか辞めろよ?」


「忘れられないトラウマとかな?」


「もはや苗字さんの存在がトラウマじゃないですか?」


「「「あははははは!!」」」


「……お、ま、え、らああああああ!!?」





「それで、何がいいと思う?」


田中と力の頭に小さなお山を作り上げて、満足した所で聞いてみる。ツッキーには避けられた。


「……あいつって何が欲しいんだ?バレー以外に興味とかあんのか?」


「そう、そこなんだよ。しかもお金も持ってるから大抵のものは自分で買えちゃうしね?」


「んー……じゃあ買えないもの?思い出系?」


「それだと……トラウマになりませんか。」


「なんで?????」


「苗字さんが与えられる思い出なんて、トラウマぐらいでしょ。」


「ここがメガネの墓場だ!!」


「はいはい。」


ツッキーに頭を鷲掴みにされて動けない。もはや相手にすらされてない、だと……!?


「思い出なぁ。あいつそういうの喜ぶのかー?」


「割と冷めてるし、感動系とか効かなそうだよなぁ。」


「それなー?飛雄ちゃん、バレー以外の部分での感情どっかに捨ててきたっぽいし。」


「……でも、苗字さんに対しては結構感情的だと思いますけど。」


「…………まぁ、確かに。」


たまにちびりそうなぐらい怒るしね?


「うーん…………………もう、本人に聞いてみたらどうだ?」


「……やっぱそれしか無いかぁ。」


「そうだな、下手に失敗するよりはマシじゃない?」


「そうだね……………聞いてみる!!」





「飛雄ちゃん!!」


「うっ…………こんにちは、名前さん。」


「こんにちは!!」


「(今名前さん、どんくらい飛んだんだ…最高到達点、いくつになんだこの人……。)」


今日も練習所に来て、飛雄ちゃんに抱き着く。


なんか変な声が聞こえた気がするけど、抱き留めてくれた飛雄ちゃんの匂いに安心する。


「飛雄ちゃん、誕生日プレゼント何が欲しい?」


「……え?」


「なんか毎年手袋とか、ハンドクリームとか。悩んで悩んでそんなやっすいのばっかりあげてたから、」


「値段なんか気にしないっす。名前さんが選んでくれるなら。」


「……………気絶しそう。」


「ちょ!?す、すんません、かっこいい事言い過ぎました!?」


本気で心配する飛雄ちゃん。はたから見たらただのナルシストだ。


「んぐっ………それで、何が欲しい!?せめてカテゴリーだけでも!」


「カテゴリー……………。また今度でいいですか?考えときます。」


「いいよ!」


「じゃあ、2階いってて下さい。人襲っちゃ駄目ですよ?」


「あいよ!!牛島さんだけ探してきていい?」


「!?お菓子貰いに行くの辞めてください!!」


「牛島さああああん!!!」


「む、苗字。」


「こんにちは!!お菓子下さい!!」


「あぁ。」


「(聞いてねぇなあの人…。)」





「飛雄ちゃん帰ろー!」


「はい。」


いつも通り指を絡めて手を繋ぐ。今日も大きな手だ、なんのボールまで持てるかな?バスケいける?重いか?


「プレゼント、決めた?」


「………………あ。」


「忘れてたな…………?」


「あ、ちょ、すんません。目力半端ないっすよ名前さん。」


「決めてよ!!その為に来たのに!!」


「か、考えます!!」


「うむ!!」





「…………名前さん、決めました。」


「お、決まった?何何?」


ご飯を食べ終え、のんびりタイム。お風呂上がりでもしっかり顔が整っている飛雄ちゃんはたぶん神に愛されてる。


「名前さんとの時間が欲しいです。」


「……?いつも遊びに来てるじゃん。」


「そうじゃなくて、俺だけの為の時間が欲しい。」


「…………?」


「誕生日当日、平日です。仕事あると思うんすけど…………その、有休取って会いに来てくれないかなぁ……って。」


……だめっすかね。大きな体を縮こまらせながら言った飛雄ちゃん。


「…………………………いいよ、全然。会いに来る。」


「鼻血出てますよ。」


「全然、飛雄ちゃんの為なら、可愛い飛雄ちゃんの為なら私なんだって出来るよ。」


「いやだから、鼻血」


「ほんと、可愛すぎるよ飛雄ちゃん????」


「鼻血出てますってば!?」


シュッシュッとティッシュを手に取り私の鼻へと押し当てていく飛雄ちゃん。


しかしながら私はそれどころじゃない。彼氏が可愛すぎる。でかいのに、イケメンなのに、可愛すぎる。


ドボドボと鼻血は止まらない。


「…………ここが私の墓場か…?」


「は!?死なせませんよ!?」





「という事で、当日は向こうで過ごすことにした!!」


「お前出血多量でよく死ななかったな……?慌てた影山から電話来たぞ。」


「え?そうなの?」


「ずっと鼻血が止まらないです、気絶しました。し、死にますか!?って。ついに死んだか……って思ったんだけどよぉ。」


「よし。後のことは任せろ。潔子さんは私が生涯をかけて守りきるから、」


「おい、ちょ、なに、え、その拳は何、」


若干顔が変形した田中を家に送り返した時、潔子さんに怒られたのは言うまでもない。

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