初めまして?
「えー、じゃあここは……影山!!」
ま、まずい。
ギギギ、と音が鳴りそうなほどぎこちなく、隣の席で授業を受けているはずの彼を見ると、その形の良い頭を黒板に向けて、目は伏せられていた。
「か、影山くん、影山くん!起きて!」
小声で声をかけながら肩を叩く。
「んぁ……?」
「お前なぁ………これ、解答はなんだ?」
「は……?」
寝起き早々問題を当てられて、眉間のシワが深くなっている。元々鋭い目付きだが、それが更に怖くなっている。
「こ、これ、影山くん。」
先生にバレないよう、こっそりノートの端に書いた答えを見せて、影山くんが解答する。
少し驚いた様子の先生は、これからは寝てないでちゃんと聞けよ。と呆れ気味に言った。
ほっ、と一息着くと、ビシビシ伝わる視線。
恐る恐る隣を見るとこちらを凝視している影山くん。見方によっては睨まれてるようにも見える。
な、なんだろうか。お前なんかの助けなんていらなかったぞ、と言う意味でしょうか。
「……助かった。」
「へ?」
「…だから、助かった。ありがとう。……えっと、……?」
「……もしかして、名前?……苗字だよ。」
「ありがとう、苗字。」
ううん。良いんですよ全然。
でもね、影山くん。私達同じクラスになるの3回目なんだけど?
◇
「影山くん、影山くん。」
「……んぁ?……なんだ、苗字。」
「帰りのホームルーム終わっちゃったよ、部活行かなくていいの?」
「!!!やっべぇ!」
そう言った瞬間、目がかっぴらかれて、ドタバタと教室を出ていった影山くん。
確か影山くんは男子バレーボール部だったような?
いつも慌ただしく部活に向かっているので、きっと部活が大好きなんだろう。意外と熱血だったりするのだろうか。
男子バレーボール部と言えば、及川先輩。もうなんかアイドルと言うか、象徴と言うかそんな感じの先輩だ。在学中は女子生徒の歓声がよく聞こえてた。
教室から窓を開いて、外を見る。
すると体育館に向かって走る影山くんが見えた。
確かに及川先輩はイケメンで、見かけた時はうわ、かっこいい。と思ったが、飄々としている印象で、
そんな先輩とあんな風にバレーボールしか見えていないような影山くんが一緒に練習していたんだなぁ、変な感じ。
バレーボールって体育でしかやった事ないけど、うちの男子バレーボール部は強豪って言うんだから、きっとレベルが違うのだろう。
影山くんはいつも寝ていて、私の名前もやっと最近覚えたぐらい日頃適当だ。
そんな彼が夢中になっている、バレーボール。
少しだけ気になったり、しなくも、無かった。