17歳の秋のこと

「……。」


「何してんだよ?」


放課後、日向と歩いていると校舎裏で見つけた光景。


「本当に、影山くんってモテるんだね。」


「え?……うわっ!?あ、あんなのじっと見るもんじゃありません!!」


日向の手に目元を覆われる。なんでさ、いいじゃないか!見るだけなら!!


なんとか振り切り、再度視線を寄越す。ぷるぷる震えた可愛らしい女の子に頭を下げる影山くん。


また1人、女の子を泣かしている罪深き影山くんを見て、改めて思った。モテるんだなぁ。


「いつか、彼女作るのかな。」


「……?どうだろーな、あいつバレーの事で頭いっぱいだろうし。」


「それは日向もでしょ。」


「お!俺は違う!!あいつと一緒にするなよ!?」


「あははは!!そんなに全力で言わなくても!」


必死に違う、俺は違う。と弁解してくる日向に笑えてくる。


「でも、影山に彼女できたら今みたいな関係は難しいんじゃねぇ?」


「それな。せっかく仲良くなれたのに、虚しい。」


「まだ彼女出来てねぇだろ?」


チクチク痛む胸に、そんなに寂しいか、私の心よ。と驚いてしまう。


影山くんと話すのはそれなりに楽しい。でも謎の緊張感もあるから、正直日向と話してる方が楽しい。


なのに、彼女出来たら。って思うと酷く痛む心。そんなに私は影山くんに執着していたのか。


「まぁ、いつも断ってるし今は作る気無いんじゃねぇ?」


「そうなのかなぁ。」


「……何、もしかして苗字、影山の事気になんの!?」


「え?違うけど。」


「即答!!」


「えぇ?なんか、そういうのじゃ無いんだよ。恋愛とかよくわかんないけど。」


キュンキュンもしてないし、甘酸っぱくもない。


かろうじてある恋愛に対する知識に当てはまらないことから、恋愛ではないと断定する。


「苗字って、恋するの?」


「知らない。いつかするんじゃない?」


「ふーん…。」


「聞いといてふーんって。酷い。」


「悪ぃ悪ぃ!!んじゃ俺部活行くから!また明日な!」


「うん、頑張ってね。また明日。」


日向に手を振り、下駄箱へ向かう。


恋、かぁ。


今は楽しいこの人間関係も、いつかは日向も結婚して影山くんも結婚して、クラスの女の子たちも結婚して……。


私はいつか一人ぼっちにでもなってしまうのだろうか。


漠然とした不安に駆られる。でも恋をしないと、結婚は出来ない。


誰かと一緒に生きていく事が出来ないと、私は一人ぼっちになるのかな。


自分の恋心が芽生えないことがこんなにも不安になる日が来ようとは。


突如、将来に対する不安を感じ始めた17歳の秋のこと。

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