ずっと先の話

「あ!!」


「あ!!!!」


「……あ。」


張り出されたクラス表。


そこには私と日向、そして影山くんの名前が並んでいた。


「同じクラスだね!影山くん!」


「おう、よろしくな。」


「仕方ねぇからよろしくしてやる!」


「あ??」


「いだだだだ!!!」


今日も仲良しな2人を眺めて思う。楽しい毎日だけど、あと1年。


あと1年経ったら、私はこの学校を卒業して進学する。


そうなったら日向とも影山くんともお別れ。


「……寂しいなぁ。」


「「何が?」」


「うわっ!?」


こ、声に出てた。恥ずかしい。


「何が寂しいんだよ?」


「え、えっと……2人とこうやって毎日話せるのもあと1年かーって思っちゃって。」


「………………苗字も可愛いとこあるんだな。」


「日向?」


「何言ってんだ、苗字は可愛いやつだろうが。」













「日向。」


「うす、緊急会議っすね。」


「は?」


「影山は参加出来ないからな!!」


「なんだよそれ。」


「これは俺と苗字のみ参加出来る会議なのだ!!」


そうだ、これを影山くんに聞かれたらまずい。


2人で真剣に悩んで影山くんの言動を研究してるなんて、聞かれたらまずすぎる。





「だからあの試合はここがこーであーなってて!!」


「違ぇだろボゲェ、あそこがこうなって、」


もはや次元の違う会話に、私は聞き返すことを諦めて食べ物を咀嚼する事に集中した。


「苗字はどう思う?!」


「ごめん、全然話わからん。」


「なんでだよ!?」


「わかんねぇのか!?」


ぐわっ!と2人に覗き込まれて体を少し引いてしまう。


「わ、わからんです。そもそもこーとかあーとかばっかりで何の話かさえわかんない。」


試合、という言葉からかろうじてバレーの話かな。としかわからない。


「お前の言い方が悪いんだよ。」


「はぁ!?影山の方があーとかこーとか言ってたし!!」


「んだと!?」


話題が変わっても尚、言い争う2人にもはや笑いが込み上げてくる。


「あはははははは!!」


「……おい、影山がおかしなことばっか言うから苗字壊れちゃっただろ。」


「ち、違ぇよ!!ど、どうしたんだよ苗字。」


目尻に浮かんだ涙を拭いて、向き直る。


「2人とも本当に仲良いねぇ。」


「「良くない!!」」


「あははは!!仲良しだ。……2人は高校卒業してもずっとこうやって言い争ってるんだろうなぁ?」


ずっとずっと言い争って、同じ高い舞台を目指してずっとライバルなんだろう。


「……?まぁ、そうだろうな。」


「俺、こいつと仲良くなれる気が一生しないからな!!」


「んなのこっちのセリフだ!!」


「また言い争って……大人になったらもうちょっと落ち着いてよ…?」


「……さっきから苗字、自分はいないみたいな言い方してるけど、」


「え!?んな訳無いだろ!!」


「へ?」


バレーボールでの繋がりのない私は、卒業したらお別れなのでは?


「俺、絶対苗字の連絡先消さないからな!?」


「いや、消さなくてもいいけど。」


「絶対!!どこにいても!!1週間に1回はメールするからな!?」


「彼女かよ!?い、いいよそんなに、」


「なんだよ!!俺とはもう友達辞めたいのか!?」


「ち、違うよ、落ち着いてよ日向。」


明らかにしょんぼりしてしまった日向。


日向は本当に良い友達だ、優しいし明るいし、色んなことを一緒に笑い飛ばしてくれる人。


卒業しても、私との縁を切らずにいてくれるなんて。嬉しいのはこちらの方だ。


「ずっと、ずっと日向の友達だから。」


「……おう!!」


「……俺は?」


「か、影山くんも!ずっと友達!!」


「……………友達、だけか?」


「………………………?」


で、出た。私を宇宙へ誘う言葉たち。


つい固まってしまい、私の頭の中に宇宙が広がる。猫の鳴き声すら聞こえた。


「おい、苗字。これは議題になる案件じゃ無いか?」


「……そうだね。」


「緊急会議だ!!影山は参加不可!!」


「またかよ!?なんだよその会議って!?」

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