彼氏力の強さと言ったら
『で?どうだったよ、影山くんとのデートは!!!』
「デートじゃないってば!……すっごい楽しかった。」
『んなっ……!?』
「え?何。」
聞かれたからそう答えたのに、なんだそのリアクション。
『か、影山に、女子を楽しませるテクニックがあるだと…!?』
「いやいや、女子って言うか私だし。」
確かに彼氏力強めでいっぱいドキドキしたが、そういう目で見ている訳では無いだろう。
高校生の間、特に3年生になってからはずっと一緒にいたんだ。今更過ぎる。
と言っても、そんな彼に今更ドキドキしているのは私なんだけども。
『どこ行ったんだよ?』
「えっとね、スカイツリー行ったよ!」
『うわ!!いいなぁ。俺も行きてぇー!』
「日本戻って来たらまた行こうよ。凄いんだよ、すっごい大きくて首もげそうなくらい上見ないとね、」
『あははは!!とにかく凄かったんだな?』
「そう!でかくて!凄かった!!」
『苗字がそんなに興奮するなんて、余計見たくなったじゃねぇかー!』
「じゃあ早く帰ってきてよ。」
『……少々お待ちを。』
「全然少々じゃないくせに。…気長に待ってるよ。」
『……ん、俺が日本帰っても、ちゃんと俺とも会ってくれよな。』
「?当たり前じゃん。」
『………当たり前だな。……っし!!もう寝ろ苗字!!俺もバイト行く!』
言われて時計を見る。22時、確かにそろそろ寝ないと。明日こそ影山くんと買い物なんだから。
「わかった、おやすみ。」
『おう!良い夢見ろよ!』
◇
「えっ……は、早いね影山くん。」
「そういう苗字こそ。」
時刻は9時45分。集合は10時にホテルの待合室だったのに。
「わ、私は昨日影山くん待たせちゃったし今日こそ先に来ようって思って来たんだけど。」
昨日、駅まで迎えに来てくれた影山くん。
しかし私が東京に来るまでにもたついてしまって、新幹線に乗るまでのバスに乗り遅れてしまったのだ。
その為影山くんを待たせてしまった罪悪感から今日は早めに出てきたのに。
「俺も、苗字待たせたくなかったから。……俺の勝ちだな。」
にやっ、と笑う影山くん。何に勝ったんだ一体。
◇
「ひ、人凄いね…。」
流石都会。人が多い。
大きめなショッピングモールに来たは良いが、あまりの人の多さに人酔いしそう。
「大丈夫か?」
「う、うん。なんとか。…迷子にならないよう気をつけないとだね。」
ここで迷子にでもなってみろ、私はきっと宮城に帰れない。
「…手、繋いどくか。」
「えっ。」
手を差し伸べてきた目の前のイケメンを見て固まる。
い、いや待てよ。でも確かに手を繋いでおいた方が安心ではある。ぼけーっと歩いてても、影山くんに引っ張ってもらえるし。
「うん、お願いします。」
大きな大きな手に私の小さな手を重ねた。
優しくゆっくりと握りしめられ、おう。と笑顔を向けられる。
迷子防止迷子防止。頭の中で繰り返す。
だってこんなの、勘違いしそうになる。
ドキドキうるさい胸を抑えて、私もそっと握り返した。