ビーチバレーで繋がれる
『ほんっとごめん苗字!!頼む!!』
そう情けない声で言うのは我が親友日向翔陽。
そして彼の頼みを聞いた私は、スポーツ用品店へ向かっていた。
◇
「え?夏ちゃんもうすぐ誕生日なの?」
『そうなんだよ!今中学でバレー頑張ってるみたいで……それでバレー用品あげたいんだけど、俺そっち帰れねぇから、代わりに買って渡しといてくれねぇ!?』
「それはもう私から夏ちゃんへのプレゼントとして渡すよ?」
『か、金は今度会った時に返すからぁ!兄ちゃんからって事にしてくれぇえ!!』
という事だ。日向は良き兄である。そして夏ちゃんも良き妹だ。美しい兄妹愛。
しかし日向は期限付きでブラジルに行っているため、中々戻ってくる時間は無い。その為こんな形になったのだろう、夏ちゃんも日向の家に行くと愛らしい笑顔で迎えてくれる可愛い子だ。
そんな2人のためなら一肌脱ぎましょう。そして辿り着いたスポーツ用品店。
えっと………日向に言われたバレー用品の名称を書いたメモを見ながら探し回る。
へぇ……靴って意外と高いんだ……それにボールとかもそれなりにするんだなぁ…。
これまでお世話になったことの無いスポーツ用品店。初めて見るものが多くて少し楽しい。
「あの、何かお探しですか?」
え?
振り返ると、すんごい美人が立っていた。
「うぇっあ、そ、その、」
「バレー用品ですね、ご自身用ですか?」
す、すんごい美人だ、こんな美人出会ったことない。ツヤツヤサラサラな髪の毛。色気のあるほくろ。あまりの美人さに緊張してしまう。
「あ、い、いえ、私じゃなくて………友達の、妹に。」
「お友達の、妹さん…?仲の良い人なんですね。」
仲の良い人、日向の方か夏ちゃんの方か分からないがどちらも仲が良いので頷く。
「バレー部なんですか?」
「あ…はい、妹も兄も両方。兄の方がブラジルに行ってて誕生日プレゼント渡せないからって…。」
「……ブラジル?」
「はい、ビーチバレーの勉強しに。」
するとふむ。と口元に手を添える美人さん。名札を見ると田中と書いてある。田中さん。
「あの、つかぬ事をお聞きしますが、」
「えっ?あ、はい。」
「その、兄って日向って言いますか?」
「え!?」
なんで!?
「……やっぱり。私、烏野高校で男子バレー部のマネージャーやってたんです。」
!?!?
「え、え、マネージャー……じゃあ谷地さんと一緒に…?」
「えぇ。仁花ちゃんとは1年一緒に。私は3年生だったのですぐ卒業しちゃいましたけど。」
ま、またしても烏野高校男子バレー部……!!
どこまでも縁がある、なんで、私何かに取り憑かれてる?別に嫌ではないけど、悉く日向や影山くん関係の人ばかりに会うんだけど。
「実は私……。」
と日向と影山くんとの関係性について話すと、田中さんも大きな目を更に見開いて驚いていた。特に影山くんについて。
「影山が女子と仲良くしてるの見たことない。」
「……………割と私もですね。」
「じゃあ影山にとって特別な女の子なんだ。」
ふふ、と楽しそうに笑った田中さんに惚れちゃいそう。可愛すぎる。
日向の知り合いなら……とプレゼントのメモを差し出す。
「ここに書いてあるやつを夏ちゃん……妹にあげたいみたいなので、ください。」
「はい、かしこまりました。少し待ってて?」
メモを見て頷き、店の奥へと消えた田中さん。
これはまた、日向と影山くん、そして西谷さんにも報告だな。
◇
「!!!苗字ちゃん!!」
「こんにちは、夏ちゃん。」
「わぁ!!久しぶり!!」
兄同様人懐っこい笑顔を浮かべて抱きついてくる夏ちゃんを抱き留める。今日も可愛いヤツめ。
「今日、誕生日だよね?」
「うん!!なんで知ってるの?」
「にーちゃんから聞いた。」
「そうなんだ!!……でも今年にーちゃん帰って来ないの。」
「うん、知ってる。……………でもね、これなんだ?」
隠していたプレゼントの袋を見せる。
「…………え?プレゼント!?」
「正解!にーちゃんからだよ。」
「にーちゃん!?なんで苗字ちゃんが持ってくるの!?」
「にーちゃん忙しくて夏ちゃんに会えないから、代わりに届けてくれって頼まれた。にーちゃんやっぱ優しいね?」
本当に良い兄ちゃんだ。その言葉にうんうんと頷いてプレゼントを受け取る夏ちゃん。
「ありがとう!!苗字ちゃん!!………夏ね、にーちゃんのことすっごい好き。」
「きっとにーちゃんもだよ。」
「知ってる!!プレゼントくれたし!!……でもね、苗字ちゃんにならにーちゃんあげても良いよ。」
「え?」
「苗字ちゃん以外の人は嫌!!」
そう言って笑う夏ちゃん。何か私と日向の関係を勘違いしているようだが、ご機嫌に笑っているのでそっとしておいた。
家に帰ってから、日向にその話をした所、
『ばっ!!べっ!!別に!!苗字とそうなりたいとか!!そんな話してたわけじゃ!!』
と笑えるくらいに慌てて、お腹痛かった。