そんなカウンター酷い

《今話題の影山選手への質問!!》


と大々的に書かれたページをつい眺めてしまう。


「あー、影山選手だ。今すっごい人気ですよねぇ。」


担当してくれている美容師さんに言われる。すっごい人気なのか。


「……かっこいいですよね。」


「苗字さんも思います?私の周りでもファンの子多いですよ!」


へぇ……と思いながら手に持つ雑誌に意識が向く。


《好きなタイプは?》


《優しくて、一緒にいて楽しい人。》


へぇ…………タイプとかあるんだ……。


少し意外だ。影山くんはバレーが恋人っぽいし。それくらい女っ気が無い。


すっごくかっこいいしきっと表情豊かになって更にモテているであろうが、以前家に泊まらせて貰った感じを見ると、色恋沙汰にうつつを抜かさず、きっちりバレーと向き合っているようだった。


なのに、好きな人のタイプはあるんだ。意外だ。





「好きなタイプとかあったんだね。」


「…………?」


目の前でこてん、と首を傾げるのは、先日雑誌に載っていた有名人こと影山くん。


「タイプ?なんの?」


「女性の。」


「……………あぁ、あれか。読んだのか?」


「たまたま美容院で。ちょっとびっくりしちゃった。」


今日もふかふかなソファーに横になる。このソファー好きだなぁ、選んだの私だけど。


「何が?」


少し唇を尖らせながら、ダンベルを床に置く影山くん。


「だって、バレーが恋人っぽいから。」


「……んな訳あるか。」


「いやいや、日向と影山くんに対してだけはあり得ると思ってるよ。」


「日向だけだ。」


「嘘?結婚願望とかあるの?」


「………ある。」


「えぇ!?」


びっくり過ぎて思わず身を起こす。すると、少し不満そうに更に尖った唇。え?


「おかしいかよ。」


「い、いえ……全然、おかしくないよ。」


「…苗字は。」


「うん?」


「苗字は、結婚したいとか思わねぇのか。」


「……うーん。よくわからない、かも。」


「は?」


恥ずかしながら、この歳になるまでちゃんと恋愛出来たことがない。


告白は、高校生の時そして大学生になってからも何回かされたが、1人残らずときめかなくて、こんな私じゃ駄目だろう。そう思ってお付き合いすらした事ない。


人のことを好きになった事が無いのだ、片想いをしてみたい。


「……人のことを好きになる努力から始めないとだ、私は。」


「好きになった事ねぇのか。」


「…無い。」


一瞬、目の前にいる影山くんの事が過ぎったが、彼に対するのは憧れとか、羨望とか、整い過ぎている顔立ちなどに対して起こる生理的現象だ、たぶん。


「ふーん…。」


「……え、もしかして影山くんはあるの。」


20歳になってこんな話をするなんて。普通恋したことがあるのか、なんて中学生ぐらいの話題だろう。


「…ある。」


「えぇ!?」


「と言うか、現在進行形だ。」


「ええええ!?」


びっくり過ぎてひっくり返りそう。なにそれ、知らない。


「聞いた事ないけど!?」


「言ったことないからな。」


しれっと言う彼に口が開いたまま閉じれない。なんという間抜け面を晒しているんだと思うが、それどころじゃない。


「ひ、日向は知ってるの?」


「知らない。」


「なんと…。」


「言うなよ、日向には。」


「は、はい。」


真っ先に話したかったが、先に釘を刺されてしまった。


「い、いつから片想いしてるの?」


「…中学生。」


「……………え?」


長くない?すっごい長くないか?今年20歳だよね?


思わず固まってしまう。5年以上片想い…?


と言うか、中学生と言うと私も知ってる人なのでは。


「え、だ、誰。私知ってる人?」


「知ってる人っつーか…。」


ごにょごにょと言葉を濁す影山くん。知ってる人なのかな…。それなら言いたくないのかもしれない…。


「ご、ごめん。無神経だったね、言わなくて大丈夫だよ、」


「………苗字。」


「うん?」


「………苗字、だ。」


「何が?」


「………片想い、してる人。」


「…………え?」

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