「……ここかぁ。」


着いた先はカメイアリーナ仙台。


今日はここで数年ぶりに帰ってきた親友と大好きな彼氏が戦う。


堪えきれない笑みを浮かべて、私は会場へと足を進めた。





「あ!!苗字さん!!」


「谷地さん!山口くんに月島くんも!!」


「久しぶり。」


「久しぶりだね!!」


「元気だったー!?」


「うん、元気だったよ。皆も元気そうで良かった!」


「苗字さんこそ!卒業してからも、2人とは連絡取ってた?」


あ…。


皆も知らないのか、私と影山くんが交際していること。


皆も、と言うのは日向も知らない。


交際し始めてすぐ、影山くんに約束して欲しいと言われた。自分の口で言いたいから言わないでくれって。


という事はだ。たぶん今日初めて伝えるんじゃないか?


既に付き合って数ヶ月が経過している。なのに教えて貰えなかったこととか、なんで影山なんだとか…。


うるさそうだし、面倒くさそうだ…。


「うん、取ってたよ。日向に会いにブラジルにも、影山くんに会いに東京にも行ってた。」


「えぇ!?凄いね!?」


「そんなに動き回って疲れないの。」


「毎日そんな移動してる訳じゃないから、大丈夫だよ。」


げんなりとした顔で聞いてくる月島くんに笑ってしまう。確かに楽な移動でもないし、ブラジルなんて遠すぎたし。でも彼らに会うとその他では味わえない楽しさがあるのだ。


「そう言えば皆は今なにを、」


「あ!!苗字さん!!」


え?


振り返るとそこには美人さんこと、田中さんがいた。


「田中さん!!お久しぶりです。」


「久しぶり!元気だった?」


「はい!」


「え、え、え?清水先輩と苗字さん知り合いなの?」


「たまたま買い物しに行った時に会ってね、その時烏野高校だったって聞いて!」


「……ああああああ!!!」


うわ!?今度はなんだ。


振り返ると、長身のロン毛のお兄さん。怖…。


「どうかしたの、東峰。」


「何大声出してんだよー、女の子ビビらすなよ。」


「き、君、苗字さん?」


「えっ。」


怖い人に名前知られてる。怖い。


「あああ、怪しい者じゃないんだ!!」


「いや、この時点で怪しすぎるだろ。」


「だ、大地は少し黙ってて!…俺、って言うか俺たち、西谷の先輩なんだ。」


「……西谷さん!!」


嵐のような彼を思い出す。そうか、田中さんもいる時点で気づくべきだった。


「この写真、見たよ。それで今日の試合も来るかもだから、もし見つけたらこれ渡しといてって。」


何やら袋を差し出される。


「約束のブツだ。って言ってたけど……大丈夫?受け取る?いらなかったら処分しとくけど…。」


約束のブツて。きっと世界旅行のお土産だろう。言い方からしてきっとこの東峰さんは見てないんだろうなぁ。


心配そうにこちらを見る東峰さんはきっと、優しい人なんだろう。


「大丈夫です、なんか変なもの入ってたら直接西谷さんに文句言うので!」


「…あははは!!そうだな、そうしてやってくれ。」


「……え?結局どういう関係なの?」


泣きぼくろのあるお兄さんが私を覗き込む。


「苗字さんは、日向と影山くんの友達ですよ!日向とはすっごい仲良いんだよね?」


「え、あ、まぁ…うん。」


今は影山くんとの方が仲良いかもしれない、そう思ってしまった。


しかし影山くんが隠していたいのなら、そうしよう。私は黙って頷く。


「私は、働いてるスポーツ用品店で会ったの。プレゼントは無事渡せた?」


「はい、あの時はお世話になりました!」


「ほうほう…じゃあ西谷とは?」


「西谷さんとは、財布落としたのを見つけて渡したんです。その時に……なんか仲良くなって、写真撮って日向と影山くんに送り付けたりしてました。」


「なんだそれ!!」


「西谷らしいなぁ。コミュニケーション能力たっかい…。」


「にしても苗字さんは、バレー部との縁が凄いよね。」


「確かに。色んなところで会ってるかも。1年の皆と会った時もそうだったもんね。」


あははは…と笑ってしまう。バレー部じゃないのに、何故か今バレー部のOB達に囲まれてる。不思議だ。


「そう言えば西谷はいまなにして、」


「あ、始まるぞ!!」


その声に慌てて席に着く。


始まるんだ、彼らのライバル関係が再び動き出す瞬間。

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