縁
「……ここかぁ。」
着いた先はカメイアリーナ仙台。
今日はここで数年ぶりに帰ってきた親友と大好きな彼氏が戦う。
堪えきれない笑みを浮かべて、私は会場へと足を進めた。
◇
「あ!!苗字さん!!」
「谷地さん!山口くんに月島くんも!!」
「久しぶり。」
「久しぶりだね!!」
「元気だったー!?」
「うん、元気だったよ。皆も元気そうで良かった!」
「苗字さんこそ!卒業してからも、2人とは連絡取ってた?」
あ…。
皆も知らないのか、私と影山くんが交際していること。
皆も、と言うのは日向も知らない。
交際し始めてすぐ、影山くんに約束して欲しいと言われた。自分の口で言いたいから言わないでくれって。
という事はだ。たぶん今日初めて伝えるんじゃないか?
既に付き合って数ヶ月が経過している。なのに教えて貰えなかったこととか、なんで影山なんだとか…。
うるさそうだし、面倒くさそうだ…。
「うん、取ってたよ。日向に会いにブラジルにも、影山くんに会いに東京にも行ってた。」
「えぇ!?凄いね!?」
「そんなに動き回って疲れないの。」
「毎日そんな移動してる訳じゃないから、大丈夫だよ。」
げんなりとした顔で聞いてくる月島くんに笑ってしまう。確かに楽な移動でもないし、ブラジルなんて遠すぎたし。でも彼らに会うとその他では味わえない楽しさがあるのだ。
「そう言えば皆は今なにを、」
「あ!!苗字さん!!」
え?
振り返るとそこには美人さんこと、田中さんがいた。
「田中さん!!お久しぶりです。」
「久しぶり!元気だった?」
「はい!」
「え、え、え?清水先輩と苗字さん知り合いなの?」
「たまたま買い物しに行った時に会ってね、その時烏野高校だったって聞いて!」
「……ああああああ!!!」
うわ!?今度はなんだ。
振り返ると、長身のロン毛のお兄さん。怖…。
「どうかしたの、東峰。」
「何大声出してんだよー、女の子ビビらすなよ。」
「き、君、苗字さん?」
「えっ。」
怖い人に名前知られてる。怖い。
「あああ、怪しい者じゃないんだ!!」
「いや、この時点で怪しすぎるだろ。」
「だ、大地は少し黙ってて!…俺、って言うか俺たち、西谷の先輩なんだ。」
「……西谷さん!!」
嵐のような彼を思い出す。そうか、田中さんもいる時点で気づくべきだった。
「この写真、見たよ。それで今日の試合も来るかもだから、もし見つけたらこれ渡しといてって。」
何やら袋を差し出される。
「約束のブツだ。って言ってたけど……大丈夫?受け取る?いらなかったら処分しとくけど…。」
約束のブツて。きっと世界旅行のお土産だろう。言い方からしてきっとこの東峰さんは見てないんだろうなぁ。
心配そうにこちらを見る東峰さんはきっと、優しい人なんだろう。
「大丈夫です、なんか変なもの入ってたら直接西谷さんに文句言うので!」
「…あははは!!そうだな、そうしてやってくれ。」
「……え?結局どういう関係なの?」
泣きぼくろのあるお兄さんが私を覗き込む。
「苗字さんは、日向と影山くんの友達ですよ!日向とはすっごい仲良いんだよね?」
「え、あ、まぁ…うん。」
今は影山くんとの方が仲良いかもしれない、そう思ってしまった。
しかし影山くんが隠していたいのなら、そうしよう。私は黙って頷く。
「私は、働いてるスポーツ用品店で会ったの。プレゼントは無事渡せた?」
「はい、あの時はお世話になりました!」
「ほうほう…じゃあ西谷とは?」
「西谷さんとは、財布落としたのを見つけて渡したんです。その時に……なんか仲良くなって、写真撮って日向と影山くんに送り付けたりしてました。」
「なんだそれ!!」
「西谷らしいなぁ。コミュニケーション能力たっかい…。」
「にしても苗字さんは、バレー部との縁が凄いよね。」
「確かに。色んなところで会ってるかも。1年の皆と会った時もそうだったもんね。」
あははは…と笑ってしまう。バレー部じゃないのに、何故か今バレー部のOB達に囲まれてる。不思議だ。
「そう言えば西谷はいまなにして、」
「あ、始まるぞ!!」
その声に慌てて席に着く。
始まるんだ、彼らのライバル関係が再び動き出す瞬間。