お日様暴走

「おい!!苗字!!!」


「おはよう、日向。」


「おはよう!!!じゃなくて!!」


「教科書の事なら良いよ、バナナオレ1本で。」


「ありがとう!!!じゃなくて!!」


え?じゃなくて?


「影山と中学同じだったのかよ!?」


「……………へ?」


今更?いや、と言うかどこからの情報だ。


「昨日、苗字の話してたら、影山がお前と同じクラスだったのか、って!!」


「…え、影山くん私の事覚えてたの。」


「え!?忘れる事なんてある!?3年間同じクラスだったんだろ!?」


いや、でも、あの影山くんだし。


それになんで私が烏野高校にいるって?


「烏野高校に進学するなんて言ってないんだけど、なんで知ってるんだろう。」


「え、そうなのか?…それは知らねぇけど、同じ中学だったならどんな奴か知ってて聞いてただろ!」


「そりゃ、まぁ。」


「それなら入学当初!俺に影山がどんな奴か教えてくれれば!何か対策出来たかもしれねぇのに!」


「あの影山くん相手にどう対策を…?」


「……。」


「……。」


「……ごめん、でっかい声出して。」


「いや、全然気にしてないけども。」


むしろ内緒にしていたようで、ごめんね。





「え?じゃあ影山と同じクラスだったけど、あいつがバレーやってんのは見たことねぇの?」


「うん、見に行く機会無いし。」


もぐもぐ、とご飯を食べながら話す昼休み。


日向は相変わらずその細っこい体のどこに入っていくのかわからない量のご飯を頬張っている。


「勿体ねぇ!あいつムカつくやつだけど、すげぇ上手いんだぞ!?」


「そうなの?」


でも私、バレーボールの上手い下手すら全然わかんないけど。


「なぁ、今日見に来ねぇ?」


「何を?」


「部活!」


「えぇ!?」


ワクワクと目を輝かせているお日様。いやいや待ってよ。


「い、いや、入部する訳でもないのに見学とか、」


「全然良いと思うぞ?先輩達には俺から聞いてみるからさ!な?」


な?じゃなくてだね。


「うーん、でも、流石に…。」


「あ…。用事ある??」


「いや無いけど…。」


そこじゃなくてね?


「じゃあ来いよ!興味ねぇ?バレーボール!俺のプレーも見て欲しいし!影山の凄さも見たらきっとわかる!」


「えぇ……。」


そんなこんなで放課後。


「まままま、まって、まってよ日向!?お、怒られるし!!」


「大丈夫大丈夫!!この時間に先生とすれ違ったことない!」


とんでもないスピードで腕を引かれて走る。


はは、はやすぎ、腕引っこ抜けそう。


「よしゃ!ちょっと待ってて!着替えてくる!」


そう言って部室に走っていった日向。


体育館前に置いていかれた私は、ぜぇぜぇと息切れしていて死にそう。同い年なはずなのに、どうしてここまで人間としての差が……。


「お待たせ!!」


「は、早いね…。」


「今日早く来れたからなぁ、まだ誰も来てねぇなぁ。……そうだ!苗字!こっち!」


腕を引かれて体育館の中へ。シューズなんて持ってないから靴下のまま上がる。


「これ!バレーボール!」


「…流石に知ってるよ、体育でやった事あるし。」


「じゃあやろうぜ!」


「…はい?」


やろうぜ?

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