仲良しこよし?

「ふん!!」


「お!!良い感じ!!レシーブ返せるようになって来たな!?」


何やってるんだ私は。


日向が他の部員が来るまで、バレーやろうぜって言ってきて。


それでとりあえずレシーブを、と私にやらせてみたらびっくりするぐらい出来ない。


そして始まったお日様先生のレシーブ教室。


「ひ、日向……もう辞めよ…疲れた……。」


「この程度で疲れるなんてまだまだだなぁ!」


まだまだで良いよ……私鍛えてないんだから……。


「あ!!!」


体育館の床に座り込んでいると聞こえる高い声。


ほらもう部員さん来始めたじゃん……私見る所じゃないくらい疲れてるんだけど……。


床を這うようにして、壁際に寄る。邪魔ですよね、ごめんなさい。


移動して、ふぅ。と一息ついてからチラ、と声の方を見て、固まる。


「………あれ、あの時の。」


「お、お久しぶりです!!」


「え?2人とも知り合い?」


「……あ!!」


「……あ。」


「おっす!山口!月島!!」


「………あれ、あの時の……。」


「あ!!影山ぁ!!苗字来てるぞ!」


「……苗字?」


「………あ。」


「…………え?なんで全員固まってんだ?」





「ええええ!?じゃあ全員苗字と会ったことあるって事!?」


「そうなるね…。」


「な、なんで苗字も気づかなかったんだよ!俺結構皆の特徴とか話してただろ!?」


「でも日向の言う特徴って、バレーのプレー的な特徴だからよく分かんなかった。月島くんがもしかしてあの人かも?なんとか思ったぐらい。」


それに私だって驚きだ。これまで会ってきた名も知らぬ人々が揃いも揃ってバレー部だったとは。


「…苗字。」


「…あ、か、影山くん。」


随分お久しぶりな気がする。中学生の時は毎日視界には入ってたし。


「久しぶり。」


「久しぶり!」


「日向と同じクラスだったんだな。」


「うん、そうそう…って、なんで私が烏野だって知ってたの?」


素朴な疑問を久々にちゃんと見た形の良い頭に向かって投げかける。


すると、向こうは見るからにやべぇ!!と言う顔をして、


「………………風の噂で。」


「絶対嘘だよね!?」


3秒でバレる嘘をついた。どういう事なの。


「影山くんに進路の話なんてしたっけ?」


「……いや、聞いてない。」


「じゃあ、なんで、」


「い、良いから!!」


何が!?


「そう言えば苗字って、影山と仲良かったんだな?」


「えっ。」


仲良い、なんて言うには程遠い間柄だったと思うけど…。


「おい、日向、」


「だって、影山さ?苗字と俺が同じクラスだって聞いたら、」


「おい!!!!辞めろボゲェ!!!」


「うわ!?な、なんだよぉ!?」


聞いたら?なんだって?


「ひ、日向。何?」


「こいつ、同じクラスだって聞いたらさ?すんげぇうらやま」


「日向!!!テメェ!!」


顔を真っ赤にして、日向の頭をその大きな手で掴んでしまう影山くん。


いででで!?と暴れ回る2人はさながら同い年には見えない体格差だ。


「……苗字、なんでもねぇから。本当に。なんにも。」


「え、あ、そ、そうなの?」


「あぁ。何も無い。」


良いな?と変わらぬ目力で言われてこくこくと頷く事しか出来ない。怖い。


「あ、あの!」


「は、はい!?」


若干震えていると声をかけてくる女の子。谷地さん。


「あの時は、本当に怪我とか無かった?大丈夫だった?」


「大丈夫だよ。気にしないで!」


にこにこ笑って平気だよ、とアピールする。


すると表情が明るくなる谷地さん。良かった。


「苗字って、結構優しいよなぁ。」


「……テストの時勉強教えてあげた恩を忘れたと言うのかね?」


「うわぁ!?ち、違ぇよ!!結構って言うか、凄く!!凄く優しい!!」


本当に思ってるのか?とジト目で日向を見る。


「……苗字は中学の時から、優しい奴だ。」


「えっ?」


「よく助けてくれただろ。」


助けた、と言うのは授業中のあれらだろうか。


「うん、まぁ…。」


何度助けないと行けない現場に遭っても、影山くん次の授業にはまた寝るから、何回かそうやって助けたような気がする。


寝なければ良いのに……と思った回数は助けた回数より遥かに多いだろうが。


「……やーっぱり仲良いんだなぁ?」


「悪くはねぇ。」


「そ、そうだね、悪くは無い。」


「ふーん?」


なんだかジロジロと見られるのにいたたまれなくなった私は、疲れてしまったのを言い訳にして、その場から逃げ出したのだった。

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