緊急会議

「……あ!」


「…あ。」


「おはよう、影山くん。見たよ全国大会。凄かった!!」


「…おう、ありがとう。」


まさか男子バレー部が全国まで行くとは。日向から県の決勝戦後速報で聞いた時はびっくりして声を上げた。


学校側もあまりの快挙に、全国大会の時は学校で試合を見せて貰えた。


なので、他にも試合を見たい人達の中に混じって試合を見させてもらったのだ。


この時初めて日向や影山くん、月島くんや山口くんのプレーを見た。す、凄かった。


日向が見せたい!と言う理由もよくわかった。確かに凄かったし、その、か、かっこよかった。


そもそも整った顔立ちをしているなぁと中学生の頃から思っていたが、それから少しだけ大人びて、尚且つあんなにかっこいいプレーを見せつけられて、


かっこいいと思わないでいられるのは難しいだろう。


「…苗字って、家近かったよな。」


「え?そ、そうだったっけ?」


唐突にそんな事を聞いてくる影山くんに動揺する。


そもそも同じ中学出身なので、そう遠くは無いと思うけれど。


「……そんな事を聞いた。中学の時。」


……そんな話、しただろうか。


「えっと、誰かからって事?」


「違う、苗字から。」


ムッ、と唇を突き出す影山くんにやってしまったぁ!!と思う。


完全に影山くんとの会話を忘れてる、いやでもあの3年間のどこで会話したかさえわからないような会話、覚えているのも凄いな。


「ご、ごめん。あんまり覚えてなくて……じゃあ近いんだと思うよ。」


「…今日、部活無いから、」


「うん?」


「……一緒に、帰りませんか、コラ。」


うん??





「どう思う。」


「………………………………怖い。」


「それな?」


日向と向かい合って緊急会議を開く。どういう意味だ、全然わからん。


日向も日向でめいいっぱい考えて、怖い。と言う結論が出た。それな、怖いんだよな、何考えていらっしゃるのか全くわからなくて。


「それに対してなんて返したんだよ?」


「……キョドりながらも、はい、って返した。」


「えぇ!?じゃあ今日一緒に帰んのかよ!?」


「で、でも影山くんそんな悪い人じゃないし、」


「いやいや、悪い人だろ!?」


それは(口が)悪い人、だろう。


「悪い人じゃないよ、お礼だって言えるし?」


「それ当たり前じゃね?」


「…………………なんてこった。」


影山くんがあまりに怖い顔をしているので、お礼言えるだけで凄い!!と思ってしまっていた。そうじゃん、当たり前じゃん。


「で、でも、そんな意地悪された事だって無いし、中学の時はそれなりに会話出来てたし!」


少し成長した影山くんと会話できるかは置いておいてだな。


「……まぁ、苗字が大丈夫って言うなら良いけどさ?嫌なら嫌って言わなきゃ駄目だぞ?」


「い、言えるわけなく無い?影山くんだよ?」


「言える言える!!むしろあいつ、ちゃんと気持ちは言って欲しいと思うぞ。……中学で色々あったんだろ?」


色々。中学3年生の時の話なら噂で聞いたことがあった。その事かなぁ。


「……そうだね、ちゃんと、ちゃんと仲良くなってみる。」


「……おう。」





「苗字。」


「かっ………げやまくん、お早いですね。」


「そうか?終わってからすぐ来た。」


「そ、そか。帰ろっかぁ。」


「ん。」


チラリ、私の味方を見る。グッ!と親指を立てて健闘を祈られた。


任せろ。と言わんばかりに私も影山くんにバレないよう、親指を立てた。





「…………………。」


「…………………。」


ですよね!!知ってた!!


会話なんて生まれないよ、当たり前じゃん、何話すの。皆何話してんの(錯乱)


「……あの、影山くん。」


「……ん?」


「なんで、一緒に帰ろうって誘ってくれたの?」


思い切って聞いてみた。私と日向の脳みそでは疑問符しか浮かばなかった答えを。


「……………一緒に、帰りたかったから。」


「………………………そっか………?」


翌日、再びお日様と緊急会議が開かれたのは言うまでも無い。

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