2年生

「よっしゃ!!今年もよろしくな!苗字!!」


「こちらこそよろしく!日向!」


いぇい!とハイタッチする我ら。無事2年生も同じクラスになる事が出来たのだ!


「……………。」


そんな私達の隣で1人、仏頂面をしている影山くん。


「こ、今年こそ同じクラスになれたら良かったのにね…。」


なんと声をかけたら良いのかわからず、こんな事しか言えない。


1年生の最後ら辺から影山くんとはそれなりに仲良く出来て、たまに一緒に帰ったり、日向も含めて皆でご飯食べたり。


しかし意味不明な発言や、行動は未だ解明されていない部分が多いので、そんな事がある度に日向と緊急会議が開かれた。


「まぁまぁ!今年も昼とかに遊びに行ってやるからよ?な?苗字!」


「そ、そうそう!テスト勉強も皆でやろ?ね?」


「………おう。」


しょんぼりしてた影山くんが少しだけ元気になった、気がする。


表情が豊かとは言い難い影山くん。しかし、中学よりずっと近い距離感で話すようになってから、表情の変化が少しずつわかってきたのだ。





「苗字。」


「あれ、影山くんどうしたの?日向ならトイレ行ったけど。」


「いや。明日、部活ねぇから、」


「一緒に帰る?いいよ!」


影山くんは部活が無い日、必ずと言って良いほど一緒に帰ろうと誘ってくる。理由はわからない、一緒に帰りたいから。だそうだ。


「ん、それだけ。じゃあな。」


「うん、ばいばい。」





「それでね、日向がすっごい大きい声で寝言喋っちゃって、」


「ほんとあいつ馬鹿だな。」


「ほんとにね!!」


声を上げて笑う。それが出来るくらい影山くんとの距離は近づいた。


「もうすぐインハイ予選なんだよね?」


「おう。」


「じゃあまた暫く部活漬けだね。」


「……そうだな、次一緒に帰れるのは先になりそうだ。」


「仕方ないよ、頑張ってね!話し足りなかったらお昼一緒に食べよう!」


「……あぁ。」


ふんわりと笑った影山くんはやっぱりかっこいい。綺麗なお顔だ。ちょっとだけ、恥ずかしくなってしまう。


「そ、それじゃ!」


「ん、おやすみ。」


「おお、おやすみ!!」


逃げるようにして我が家に入る。


そ、そう言えば影山くん。彼女とかいないのだろうか。あんだけ綺麗な顔してるんだ、彼女作ろうと思えば作れそうだけど。





「え?影山に彼女?いるわけなくね?」


「日向も大概失礼だよね。」


「いいや、影山には負けるね。」


ふん、と漏らしてご飯を詰め込む日向。


「でもさ、影山くんかっこいいじゃん。モテそうじゃない?」


「……それについてお話があるんですけど、苗字さん?」


「え?何。」


箸を置いて、私と向き直る日向に私も箸を置く。


「影山が春高以来、びみょーーにモテてんだよ。」


「え、やっぱり?そうなの?」


「うむ。そんで、苗字と影山が一緒に帰ってるのを見かけた奴がいるみたいでな?」


「…なんてこった。」


つい声を漏らしてしまう。み、見てる人いたんだ、影山くんちょっと有名人だし仕方ないのかもしれないけど…。


「それで、2人と知り合っている俺は聞かれるんだよ。あの二人付き合ってんの?って。」


「はい!?」


「な、そうなるよな。だからちゃんと俺はきっぱりと付き合ってない!!って言ってる!言ってるけど、そう見られてるからな?お前ら!」


「そ、それは……困ったね。」


「?嫌なのかよ。」


「い、嫌とかじゃないけど、影山くんに迷惑が……。」


「……それは、まぁ、気にしなくて良いんじゃない?」


「いやいや、駄目でしょ。私なんかと付き合ってるって思われたら、流石の影山くんもキレるでしょ。」


「ふっつーにいつもキレてるけどな?」





「ってことを聞いてね?一緒に帰らない方が良いんじゃないかと。」


放課後、体育館に向かって走ろうとする影山くんを引き止めて、まだ人の少ない廊下でそう告げた。


「………俺は、別に気にしねぇけど。」


「え?そんな、不名誉な肩書き持たされるよ?私なんかと付き合ってるだなんて。」


「………俺は、気にしねぇし。それで良い。」


「…………………………そっか…………?」


じゃあな、と耳を赤くして去っていった影山くん。


日向、明日も緊急会議を開かなければならなくなったぞ。

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