2年生
「よっしゃ!!今年もよろしくな!苗字!!」
「こちらこそよろしく!日向!」
いぇい!とハイタッチする我ら。無事2年生も同じクラスになる事が出来たのだ!
「……………。」
そんな私達の隣で1人、仏頂面をしている影山くん。
「こ、今年こそ同じクラスになれたら良かったのにね…。」
なんと声をかけたら良いのかわからず、こんな事しか言えない。
1年生の最後ら辺から影山くんとはそれなりに仲良く出来て、たまに一緒に帰ったり、日向も含めて皆でご飯食べたり。
しかし意味不明な発言や、行動は未だ解明されていない部分が多いので、そんな事がある度に日向と緊急会議が開かれた。
「まぁまぁ!今年も昼とかに遊びに行ってやるからよ?な?苗字!」
「そ、そうそう!テスト勉強も皆でやろ?ね?」
「………おう。」
しょんぼりしてた影山くんが少しだけ元気になった、気がする。
表情が豊かとは言い難い影山くん。しかし、中学よりずっと近い距離感で話すようになってから、表情の変化が少しずつわかってきたのだ。
◇
「苗字。」
「あれ、影山くんどうしたの?日向ならトイレ行ったけど。」
「いや。明日、部活ねぇから、」
「一緒に帰る?いいよ!」
影山くんは部活が無い日、必ずと言って良いほど一緒に帰ろうと誘ってくる。理由はわからない、一緒に帰りたいから。だそうだ。
「ん、それだけ。じゃあな。」
「うん、ばいばい。」
◇
「それでね、日向がすっごい大きい声で寝言喋っちゃって、」
「ほんとあいつ馬鹿だな。」
「ほんとにね!!」
声を上げて笑う。それが出来るくらい影山くんとの距離は近づいた。
「もうすぐインハイ予選なんだよね?」
「おう。」
「じゃあまた暫く部活漬けだね。」
「……そうだな、次一緒に帰れるのは先になりそうだ。」
「仕方ないよ、頑張ってね!話し足りなかったらお昼一緒に食べよう!」
「……あぁ。」
ふんわりと笑った影山くんはやっぱりかっこいい。綺麗なお顔だ。ちょっとだけ、恥ずかしくなってしまう。
「そ、それじゃ!」
「ん、おやすみ。」
「おお、おやすみ!!」
逃げるようにして我が家に入る。
そ、そう言えば影山くん。彼女とかいないのだろうか。あんだけ綺麗な顔してるんだ、彼女作ろうと思えば作れそうだけど。
◇
「え?影山に彼女?いるわけなくね?」
「日向も大概失礼だよね。」
「いいや、影山には負けるね。」
ふん、と漏らしてご飯を詰め込む日向。
「でもさ、影山くんかっこいいじゃん。モテそうじゃない?」
「……それについてお話があるんですけど、苗字さん?」
「え?何。」
箸を置いて、私と向き直る日向に私も箸を置く。
「影山が春高以来、びみょーーにモテてんだよ。」
「え、やっぱり?そうなの?」
「うむ。そんで、苗字と影山が一緒に帰ってるのを見かけた奴がいるみたいでな?」
「…なんてこった。」
つい声を漏らしてしまう。み、見てる人いたんだ、影山くんちょっと有名人だし仕方ないのかもしれないけど…。
「それで、2人と知り合っている俺は聞かれるんだよ。あの二人付き合ってんの?って。」
「はい!?」
「な、そうなるよな。だからちゃんと俺はきっぱりと付き合ってない!!って言ってる!言ってるけど、そう見られてるからな?お前ら!」
「そ、それは……困ったね。」
「?嫌なのかよ。」
「い、嫌とかじゃないけど、影山くんに迷惑が……。」
「……それは、まぁ、気にしなくて良いんじゃない?」
「いやいや、駄目でしょ。私なんかと付き合ってるって思われたら、流石の影山くんもキレるでしょ。」
「ふっつーにいつもキレてるけどな?」
◇
「ってことを聞いてね?一緒に帰らない方が良いんじゃないかと。」
放課後、体育館に向かって走ろうとする影山くんを引き止めて、まだ人の少ない廊下でそう告げた。
「………俺は、別に気にしねぇけど。」
「え?そんな、不名誉な肩書き持たされるよ?私なんかと付き合ってるだなんて。」
「………俺は、気にしねぇし。それで良い。」
「…………………………そっか…………?」
じゃあな、と耳を赤くして去っていった影山くん。
日向、明日も緊急会議を開かなければならなくなったぞ。