「…………か、影山選手!?」


な、なんで抱きしめて!?


「…………苗字さん。あんた、」


「は、はい?」


少しだけ体を離して、超至近距離で見つめられる。


「俺の事好きだろ。」


そして言われた言葉に目を瞬かせ、固まった。


「………………え?」


「だって、ファンとしてじゃなくって言ったじゃないっすか。」


「…………言いました。」


「それは、選手としての俺じゃないっすよね?」


「…………ですね。」


一緒に記憶を遡り、どんどん顔が熱くなる。


な、なんて、なんて恥ずかしい言葉を…………!!!


「き、消えたい……。」


「は?なんで。」


「恥ずかしすぎる……。」


「……俺は嬉しかったっすよ。」


そう言ってにぃ、と笑った影山選手は少年のようで可愛くて。きゅん、とまたも空気を読まない胸は鳴った。


「苗字さん。」


「はい?」


「ちょっと順番逆転しましたけど、」


「?」


「好きです。」


凛とした瞳でそ、そんな事を言われると、し、心臓が、心臓がと、とま


「俺と付き合ってください。」


「………………はぃ。」


止まりかけの心臓で、蚊の鳴くような声で返事をした。


そうすると満足気に微笑んで、今日から彼女っすね。なーんて言われてしまって。


ファンとしては、と言うか苗字としてもと言うか、とにかくかっこよすぎて直視出来ない。


「次から試合来る時は関係者席にしましょうね。」


「関係者!?」


「あと、外で歩く時は出来るだけ一緒にいましょうか。」


「な、なんで!?」


「また変なやつらに狙われたら困ります。……あぁあと、その内一緒に住みましょう。その方が色々助かるし。」


「ど、同棲……!?」


「楽しみですね、これから。」


そう微笑んだ影山選手は、綺麗で綺麗で。


こんな人の彼女なんて務まるのだろうか、そう思ったが、言ったところで怒られるだけなので声にはならなかった。


「苗字さん、よろしくお願いします。」


にっ、今度は楽しそうに笑った影山選手に、私も倣い私たちのこれからに思いを馳せて、


「よろしくお願いします!!」


そう笑って、近づいてきた唇に応えた。


fin.