「ふふふ、あはははは!!!」


声を上げて笑う影山選手。何をしていたかって?ただ話してただけなんだけどな。


どうにも私は影山選手の一挙一動に過剰な反応をしてしまうようで。


いや、当たり前だと思うんですけども、だって推しだよ?どう頑張っても平常心ではいられないよね??


その反応が影山選手のツボらしく、私が驚いたり、悩んでる様子を見てるだけで笑い出す。


是非ともここにプロのカメラマンさんを呼んでもらいたい、この一瞬を切り取ってくれ。お金なら出すから……!!


それにしても今日も笑顔がとんでもなく素敵だ。無表情でもかっこいいのに、と言うか普段試合会場で見られるのは無表情の方なので、そっちが通常運転と言うか。


なのに今、目の前で無邪気に笑っている影山選手に胸打たれるのは仕方ない。仕方なさ過ぎる。だって推しだし、………すっごい美形だし、……優しいし。


「はぁ……なんで苗字さんそんな面白いんすか。」


「お、面白くしている訳では無いのですが……?」


「俺、笑えってよく言われるのに。苗字さんの前だと笑い過ぎます、頬も腹も痛い。」


そう言って楽しそうに笑った影山選手に、きゅーん。と胸が鳴った。


特に何もしていないけれど、大好きで大好きな影山選手の笑顔に貢献出来て、幸せ。


「なんか俺ばっかりすいません、……楽しくないですか?」


「え!?た、楽しいですけど!?」


ごめんなさい、嘘です!!楽しむ余裕なんてどこにも無いです!!


以前会った試合後より、ずっとずっとかっこいい服装をしている影山選手は非常にかっこよくて、直視出来ない。


それにコロコロと見たことの無い程、表情を変える影山選手なんて私のデータフォルダには無くて、凄くはじめましてで緊張する。


さっきからなんとなくご飯を口に運んでいるが、デート。と言う言葉が邪魔して何食ってるかわかんない、何味だこれ。


「ほんとっすか……?苗字さん全然笑わねぇから。」


「わ、笑ってますよ!!影山選手が笑い過ぎなだけで、ちゃ、ちゃんと私も楽しいですよ。」


推しに不快な思いをさせる訳にはいかない!!嘘を吐きながらも冷や汗をだらだらとかきながらも笑って見せた。


「…………迷惑、ですか?」


「…………え?」


「無理しなくて良いです、……その、迷惑にまでなりたくない。」


悲しそうにそう言った影山選手。


迷惑……?そんな訳ない、こんな時間幸せ過ぎる。緊張するし、ご飯の味もわからないけど、それでも幸せだ。


だって、試合の時では見られない、月バリを読んでも知ることの出来ない影山選手を見られるんだから。


ファンとして、これ以上ない幸せ。


だからその言葉はむしろ、


「……それは、私の台詞、です。」


「え?」


「影山選手が心配されるような、その、迷惑とか楽しくないとかそんなの全然無くて。……でもなんで影山選手が私といてくれるのかも全然わからなくて。…………迷惑なら離れます、私も影山選手の迷惑にまでなりたくない。」


影山選手は私の気持ちがきっとよくわからないんだろう、笑って無いし、ぎこちないし。


でも、それは私だってそうだ。影山選手の意図が全然わからない、だから……お互いに不安なのかな。


「あの、私は影山選手のファンです。大ファンです。……出身地に1人で遊びに行ってしまうほどには。」


「……そうでしたね。」


「だから、あんまり気にしないでください。あまりにも酷い事をされない限り嫌いになんてなれないですし、大抵の事は影山選手に関われただけで幸せだって思うので!!」


推しがいるって幸せだ、それだけでファンは強くいられる。


簡単に、幸せになれるんだ。


「……それは、ファンとして?」


「…………???はい、ファンなので。」


オタクって言えば良いのか?影山選手のグッズは勿論、交友関係や家族構成、出身地や出身校。好きな食べ物、身長体重。ただのファンでも得られる知識は全て揃えたつもりだ。完全なる影山選手オタク。


「俺は、」


机の上に乗っていた私の手を優しく握られる。


「ファンとしての苗字さんからも、苗字さん自身からも、好かれたいです。」


「……………………??????」


???????


………………ど、どういう。


待て待て落ち着け、整理しよう。処理落ちするな。


優しく握られた私の手。こ、これが1番問題だ、とと、とん、とんでもない事案だ。


そして切なそうに出した声。これもやばい、非常にやばい。耳が、ただえさえイケメンボイスなのに、なな、なんと言うことだ。


そして目の前には少しだけ頬を赤らめた影山選手。


………………頬を赤らめた?


影山選手?


頬を??赤く染めてる???あれ?どんどん赤く……。


え????


!!?!?!!