発想負け

「…………ん?あれはなんだ?」


「え?何?飯田くん。」


「あそこ……何か飛んでないか?」


「………………パラシュート?」


「しかも2つ……。」


飯田くんの指し示す方向を見ると、半円状に広がったパラシュートのようなものが2つ。ゆらゆらと空を漂っている。


「なんだろう……?」


「…………おい、あれ人じゃねぇか?」


「え!?」


轟くんの言葉に驚き目を凝らしてよく見てみると、確かに。パラシュートの繋がった先に人影らしきものが見える。


「あれは……危機的状況なのか?それとも意図的……?」


「……わからない、けど困っていたら大変だから、」


「…………あぁ、見に行くぞ。」


「うん!」


「あぁ!」





「いやぁ、名案だと思ったんですけどねぇ。」


「私も思ったんだけどなぁ、安全策のパラシュート。」


明ちゃんとゆらゆら空を漂いながら、うーむ。と唸る。


何故2人で空の旅をしているのか、事の始まりは数日前に遡る。


パワーローダー先生は、相変わらず工房に籠っている私達を見て溜息をついた。


「お前らなぁ……いい加減寮帰れよ。」


「嫌ですよ!!ベイビーの製作に忙しいので!」


「同じく!!」


「……じゃあせめてあの爆発事故減らせよ。」


「それも無理です!失敗は成功のもとですから!!」


「いやそれはマジで減らして、明ちゃん。」


一日の終わりが爆発オチ。なんてことがざらにある。それ程に明ちゃんの発明は画期的かつ危険なものが多いのだ。


なのにあまりに失敗を恐れないものだから、爆発事故は何度も起きて。私諸共吹っ飛ばされるのだ。


「いつかお前らが吹っ飛んで転落死でもしてねぇか怖いんだけどな。」


「て、転落死……!?」


「あははは!!いつかするかもしれませんね!!」


「笑い事じゃないよ!?」


そんな事になったらたまったもんじゃない。という事で、我々は考えた。


明ちゃんの爆発事故はどう頑張っても止められないらしい、ならば爆発した体で転落死しない方法を考える。


その結果、これだ。


「パラシュート、良いと思ったんだけどね……。」


「……これを開いてる時点で、ガラスをも突き破って外へ出てるのでどっちみち血まみれですね!」


「ね……パワーローダー先生に怒られるよ……ガラスも割りまくったし……。」


今日の爆発は一際大規模だった。そりゃあもう、工房の扉は勿論吹き飛び、ガラスも私達も吹き飛んで血まみれ空の旅をする程度には。


「とは言え、このような事態を考えてパラシュート装備していただけマシでしたね!」


「それはそうだね、してなかったらまさに転落死……。」


「は、発目さん!?苗字さん!?」


「「……ん?」」


聞こえた声に下を向くと、案外近づいていた地面から見上げてくる緑谷くん、飯田くん、轟くん。


「な、何をしてるんだ君達は!?」


「何を……話すと長くなります。」


「本当に何してたんだ……って怪我してんじゃねぇか。」


「こんなもの、怪我のうちにははいりませ」


ブチッ。


「……?明ちゃん?」


「……すいません、誰か受け止めてくださああい!!!」


ブチブチブチッ!!


「ぎゃああ!!明ちゃああん!!?」


明ちゃんのパラシュートから体へと繋がっていた紐が一斉に切れてしまって、明ちゃんは真っ逆さまに落っこちた。


しかしながらそこは流石ヒーロー科の皆々様。


「だ、大丈夫!?」


瞬時に反応した緑谷くんが明ちゃんをお姫様抱っこで受け止めた。か、かっこいい!!王子様じゃん!!


「明ちゃん大丈夫!?」


「は、はい……なんとか!!」


逞しく笑った明ちゃんに安堵しつつ、私も怪我しないよう着地せねば……と思っていると、ぽすっ。


ぽすっ?


腰へと回された腕、いつもは見上げる綺麗なお顔が自分より下にある。


これは……。


「……と、轟くん?」


「そのままゆっくり落ちても上手く受け身とれねぇだろ。」


た、確かに。それは想定済みだ。明ちゃんとも着地時は倒れ込むようにして使用するぞ、と話していた。


「そんな血まみれで、危ねぇだろ。」


そう言ってゆっくりと私を地面に降ろした轟くん。


ひ、ひぃ……優しさ故とわかっているが、かっこいいな轟くん……優しさとイケメンは掛け合わせちゃ駄目だろう……。


「あ、ありがとうございます。とんだご迷惑を……。」


「別に迷惑とかじゃねぇけど……とにかく早く手当てしねぇと。」


「そうだね、ここからだったら保健室行くより……寮戻って救急箱使った方が早いかな?」


「そうだな緑谷くん。見る限り2人とも深い傷は無さそうだから……行こう!」


「え!?ちょ、大丈夫ですよ!工房戻れば救急箱とかありますし、」


「……どうせ適当に処置するだけだろ、お前。」


じとりと轟くんに見られて、動揺する。あれ!?いつから轟くんの中で私は大雑把な奴になってしまった?間違いないけど!!


「変に処置すると顔に傷残るぞ。」


「別に大丈夫ですよ!元から大した顔でも無いですし。」


平々凡々。そんな顔に傷なんて別段、


「そういう事言うな、女子なんだから。」


「おっ…………。」


またしても破壊力とんでもない、イケメンが吐いてはいけない台詞だ。私じゃない面食い女子だったら今頃失禁してるぞ。


とは言えそこまでお世話になる訳には!とせめて明ちゃん連れてお暇したいと彼女を見ると、


「寝てる!!!」


「は、発目さん何故か僕の腕の中で寝始めちゃって……。」


神経図太いにも程があるよ!?大丈夫!?どこがとは言わないけど!!


「ほら、友達も起きねぇし行くぞ。」


「…………すいません、お世話になります。」


「よし。」


項垂れるようにして彼らと共に2度目の来訪、A組寮へと向かった。

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