「…………ん?あれはなんだ?」
「え?何?飯田くん。」
「あそこ……何か飛んでないか?」
「………………パラシュート?」
「しかも2つ……。」
飯田くんの指し示す方向を見ると、半円状に広がったパラシュートのようなものが2つ。ゆらゆらと空を漂っている。
「なんだろう……?」
「…………おい、あれ人じゃねぇか?」
「え!?」
轟くんの言葉に驚き目を凝らしてよく見てみると、確かに。パラシュートの繋がった先に人影らしきものが見える。
「あれは……危機的状況なのか?それとも意図的……?」
「……わからない、けど困っていたら大変だから、」
「…………あぁ、見に行くぞ。」
「うん!」
「あぁ!」
◇
「いやぁ、名案だと思ったんですけどねぇ。」
「私も思ったんだけどなぁ、安全策のパラシュート。」
明ちゃんとゆらゆら空を漂いながら、うーむ。と唸る。
何故2人で空の旅をしているのか、事の始まりは数日前に遡る。
パワーローダー先生は、相変わらず工房に籠っている私達を見て溜息をついた。
「お前らなぁ……いい加減寮帰れよ。」
「嫌ですよ!!ベイビーの製作に忙しいので!」
「同じく!!」
「……じゃあせめてあの爆発事故減らせよ。」
「それも無理です!失敗は成功のもとですから!!」
「いやそれはマジで減らして、明ちゃん。」
一日の終わりが爆発オチ。なんてことがざらにある。それ程に明ちゃんの発明は画期的かつ危険なものが多いのだ。
なのにあまりに失敗を恐れないものだから、爆発事故は何度も起きて。私諸共吹っ飛ばされるのだ。
「いつかお前らが吹っ飛んで転落死でもしてねぇか怖いんだけどな。」
「て、転落死……!?」
「あははは!!いつかするかもしれませんね!!」
「笑い事じゃないよ!?」
そんな事になったらたまったもんじゃない。という事で、我々は考えた。
明ちゃんの爆発事故はどう頑張っても止められないらしい、ならば爆発した体で転落死しない方法を考える。
その結果、これだ。
「パラシュート、良いと思ったんだけどね……。」
「……これを開いてる時点で、ガラスをも突き破って外へ出てるのでどっちみち血まみれですね!」
「ね……パワーローダー先生に怒られるよ……ガラスも割りまくったし……。」
今日の爆発は一際大規模だった。そりゃあもう、工房の扉は勿論吹き飛び、ガラスも私達も吹き飛んで血まみれ空の旅をする程度には。
「とは言え、このような事態を考えてパラシュート装備していただけマシでしたね!」
「それはそうだね、してなかったらまさに転落死……。」
「は、発目さん!?苗字さん!?」
「「……ん?」」
聞こえた声に下を向くと、案外近づいていた地面から見上げてくる緑谷くん、飯田くん、轟くん。
「な、何をしてるんだ君達は!?」
「何を……話すと長くなります。」
「本当に何してたんだ……って怪我してんじゃねぇか。」
「こんなもの、怪我のうちにははいりませ」
ブチッ。
「……?明ちゃん?」
「……すいません、誰か受け止めてくださああい!!!」
ブチブチブチッ!!
「ぎゃああ!!明ちゃああん!!?」
明ちゃんのパラシュートから体へと繋がっていた紐が一斉に切れてしまって、明ちゃんは真っ逆さまに落っこちた。
しかしながらそこは流石ヒーロー科の皆々様。
「だ、大丈夫!?」
瞬時に反応した緑谷くんが明ちゃんをお姫様抱っこで受け止めた。か、かっこいい!!王子様じゃん!!
「明ちゃん大丈夫!?」
「は、はい……なんとか!!」
逞しく笑った明ちゃんに安堵しつつ、私も怪我しないよう着地せねば……と思っていると、ぽすっ。
ぽすっ?
腰へと回された腕、いつもは見上げる綺麗なお顔が自分より下にある。
これは……。
「……と、轟くん?」
「そのままゆっくり落ちても上手く受け身とれねぇだろ。」
た、確かに。それは想定済みだ。明ちゃんとも着地時は倒れ込むようにして使用するぞ、と話していた。
「そんな血まみれで、危ねぇだろ。」
そう言ってゆっくりと私を地面に降ろした轟くん。
ひ、ひぃ……優しさ故とわかっているが、かっこいいな轟くん……優しさとイケメンは掛け合わせちゃ駄目だろう……。
「あ、ありがとうございます。とんだご迷惑を……。」
「別に迷惑とかじゃねぇけど……とにかく早く手当てしねぇと。」
「そうだね、ここからだったら保健室行くより……寮戻って救急箱使った方が早いかな?」
「そうだな緑谷くん。見る限り2人とも深い傷は無さそうだから……行こう!」
「え!?ちょ、大丈夫ですよ!工房戻れば救急箱とかありますし、」
「……どうせ適当に処置するだけだろ、お前。」
じとりと轟くんに見られて、動揺する。あれ!?いつから轟くんの中で私は大雑把な奴になってしまった?間違いないけど!!
「変に処置すると顔に傷残るぞ。」
「別に大丈夫ですよ!元から大した顔でも無いですし。」
平々凡々。そんな顔に傷なんて別段、
「そういう事言うな、女子なんだから。」
「おっ…………。」
またしても破壊力とんでもない、イケメンが吐いてはいけない台詞だ。私じゃない面食い女子だったら今頃失禁してるぞ。
とは言えそこまでお世話になる訳には!とせめて明ちゃん連れてお暇したいと彼女を見ると、
「寝てる!!!」
「は、発目さん何故か僕の腕の中で寝始めちゃって……。」
神経図太いにも程があるよ!?大丈夫!?どこがとは言わないけど!!
「ほら、友達も起きねぇし行くぞ。」
「…………すいません、お世話になります。」
「よし。」
項垂れるようにして彼らと共に2度目の来訪、A組寮へと向かった。