戦慄した。
それは齢15で感じた驚愕とも感動とも圧倒でも。何か言葉一つでは言い表せないような感覚。
ふぅ、と彼が息をつくと白くそして儚いCO2が舞い上がる。
それはそれは、その氷壁は。父親の仕事部屋に齧り付いて、実験や創作ばかりを繰り返していたなんの面白みも無い私からしたら。
これ以上なく魅力的に見えて、これが化学を伴わない力。これがたった1人の力。なんと鮮やかにそして一息に。
これが、個性の力。なんて他人からしたら当たり前であり社会の礎である事実を理解した。
無個性なりに、理解した。それが齢15の私、中学3年生の私。
◇
そして彼を追うようにして雄英高校へ入学した高校一年生の私。
「…………?あれ、ちょ、これ、明ちゃ、これ!!」
「ん?………………あ!!!」
Boooooooom!!!!!
「…………あ!!!じゃないんだよ、明ちゃああん!!」
「ごめんなさい!気づいたら爆発寸前だったものだから!」
「なんで爆発寸前まで放っておくのさぁ!!」
てへ!と可愛子ぶってる明ちゃんに溜息をつく。
それにしても……とだいぶ荒れてきた工房にパワーローダー先生の顔が過ぎる。やばい、いよいよ出禁にされそう。
「明ちゃん、そろそろ1回片付けよう?」
「うーん……今ベイビーの組み立て途中なんです……名前も今途中かけなのでは?」
「私もベイビーまだ骨組みまでしか出来てないけど…………そろそろ片付けないとパワーローダー先生に怒られそうだから。」
つい最近、この雄英高校は全寮制へと変わった。ヒーロー科のヴィラン関係が故に。
様々な声がある中始まった全寮制は、私や明ちゃんのような発明オタクには持ってこいな生活だった。
夏休み中は毎日のように入り浸り、新学期が始まってからも基本的には授業以外入り浸ってるような生活。
毎日が楽しくて楽しくて仕方が無い。様々な設備、部品、参考書。私にとって宝の山だ。
それは明ちゃんも同じで。同じくサポート科にて同じクラスだった彼女とはすぐに意気投合してこの有様だ。
2人揃って機械油に塗れた作業着、荒れた工房。華の高校生と言う言葉がどんどん走って逃げてる気がする。
しかしながら楽しいのだから仕方が無い。こうして工房でベイビーを生み出すのも、ヒーロー科の人々を見てどんなサポートアイテムや、コスチュームが見合うだろうかと考える事も。
そして何より、初めて感じたあの高揚感を与えてくれた彼。轟くんには一際注目してきたこの半年。
主に見れたのは体育祭だが、本当に凄かった。まだ高校生という未発達な体であそこまでの高火力。
しかしながらコントロールや微調整が難しそうで、そう言ったところは是非サポートアイテムで補うべきだと。
バングルのような腕につけるようなものであれば手軽に着脱可能だし、是非とも私が作って彼につけて欲しいぐらいだけれども。
とりあえず骨組みだけでも出来たベイビーを抱えて、保管場所へ運ぶ。彼に自分の考えたサポートアイテムを捧げるのが夢だが、まぁそもそも接点が無い。それに明ちゃんとは違って私は体育祭で大した成績も修めてない。イコールどこの馬の骨かもわからない。怪しいヤツ確定。
そんな奴からのサポートアイテムなんて誰が受け取るか、と言う話だ。彼が常識人であるならきっとそうなる。悲しい。
「ほら、明ちゃんも片付けよう。」
「うぅ…………仕方ないです…………ん?」
悲しそうに明ちゃんが眉を下げた時、ノックする音が。
やばい、パワーローダー先生来ちゃっただろうか。そう焦り身構えると、
「こ、こんにちはー!」
「あぁ!あなたでしたか。」
なんだ、緑谷くんか。最近何度かやって来ている緑谷くん。明ちゃんにコスチュームの改良を頼んでいるようで、よくここへ足を運ぶ。
今ヒーロー科はヒーロー免許の仮免を取得するために、必殺技を編んでいるのだとか。その関係でコスチュームの変更が必要な人が何人も出てきていて、私もそのお手伝いをさせて貰っている。
緑谷くんは明ちゃんが担当しているので、私はベイビーを抱え直して背を向けると、
「おや?あなたは…………名前!!」
呼ばれて振り返る。
「何ー?」
「ちょっとこっち戻ってきてください!」
なんだろう、首を傾げながら抱えたベイビーそのままに戻ると
「同じくサポート科の苗字名前です、私は緑谷さんの方へ当たるので、名前に頼んでください!」
「そうか、わかった。…………A組の轟だ。コスチュームの改良やサポートアイテムについて色々頼みてぇんだが……。」
「…………………………。」
ガシャーン!!
思考停止。
「あああああああ!!!!名前のベイビーがあああ!!!!」
「……っえ、あ、え!!いやあああああ!!!!私の第72子がああああ!!」