冬から雪解け春先へ

「もしもし?」


『もしもし、俺だけど、』


「ふふ、わかってますよ轟くん!」


冬休み。帰省していても関係無く学校の工房へ通おうとしたら、パワーローダー先生に私と明ちゃんのみ冬休みの間工房出禁、とされてしまった。


大量のベイビーで攻撃しながら反論したが、いい加減休め!!と怒られてしまい、泣く泣く実家で大人しくしている。


『元気か?』


「はい、元気ですよ!強いて言えば開発が出来なくてフラストレーション溜まってるぐらいでしょうか。」


『ふふ、お前らしいな。』


そんな冬休みが始まってから数日後、轟くんからの着信。


電話越しでもあの芯のある声はご健在で、より耳元に近い場所から聞こえる故か少しばかりドキドキしてしまう。


「そういえば、ベイビー使ってみましたか!?」


『あぁ、使ってみた。すげぇなあいつ。』


「そうでしょうそうでしょう!良さが伝わって安心しました!」


『かなり素早い動きで、すぐマーカーつけられる。さっきもやって来たとこで、俺の腕マーカーまみれだ。』


「あははは!!それはとても見てみたかったです。」


『写真送るか?』


「いいんですか!?」


『おお。後で送る。』


「ありがとうございます!」


なんとも不思議な気分だ、轟くんとこうして話せる日が来るなんて。


1年生の頃、高校に入って出会った時は目の前にいることが夢かと思ったのに。


今となっては休みの日にこうして電話するほどに。……仲良くなれたなぁ、非常に感慨深い。


『でもこいつ、収納して丸くなってる時結構可愛いよな。』


「え、そうですか?出来るだけ小さくなるよう意識はしましたが、可愛さはあまり……?」


『可愛いぞ。なんか丸っこくて。』


可愛い。イケメンのイケボが言ってる可愛い。相乗効果が凄すぎる、バフがバフにバフってる。


「そ、そうですか……?それなら沢山使って可愛がってあげてください!」


『あぁ、……お前だと思って大事にする。』


「あ、でも全然ボコボコにしてもらって大丈夫ですからね!!それはそれで改良の余地ありですから!!」


『……………………あぁ。』





「……って事があったんだ。結構勇気出してお前だと思って大事にする、なんて言ったんだが。」


苗字さぁぁん…………!!!


冬休み明け、轟くんとあけましておめでとうございますをしてから話題は休み中の出来事へ。


そして彼女から特別にたった一つのベイビーを授かった轟くん。そちらの方はどうだったのか聞いてみたところ、想像以上に悲しい出来事が起きていた。


「あそこまで言ってスルーされるって…………脈ナシか?」


「う、あ、ど、……う、うーん…………??」


クラス1のイケメン。なんなら今となっては雄英ビッグ3に数えられ、将来有望容姿端麗が揃っている轟くんは学校でも有名なイケメン。


そんな彼をここまで悲しませる彼女は、もっと轟くんの気持ちに気づいても良いと思う……と言うか気づいてあげて欲しい……!


「あ!轟くん!緑谷くん!」


すると聞こえた声。僕らは聞こえた方へ振り返る。


「あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願い致します!」


にっこり笑った苗字さん。


「……あぁ、よろしくな。」


そしてそれに対してこれまた嬉しそうに笑った轟くん。


………………ちょ、ちょろいよ轟くん!!!??


そんなんだからいつまで経っても仲良しな友達から抜け出せないのでは!?


と内心大荒れしながらも


「こ、こちらこそよろしくね苗字さん。」


なんとか平然を保って言葉を放った。





「……轟くん、卒業する前にちゃんと伝えた方が良いんじゃないかな?」


「……………………あぁ。」


……長い間だったね、溜めたね。


「このまま仲良しな友達を続けてても楽しいかもしれないけど、いつか誰かに盗られちゃうよ?」


「……わかってる、けど。」


そう言って黙り込んだ轟くん。


「………………あいつにその気が無かったとして、この関係が崩れる方が俺は怖い。」


しゅん。さっきまで話せた喜びからほこほこしていたのに、今はもうしょんぼりしてしまった轟くん。


「轟くん……。」


「でも、……そうだよな。盗られたら……正気保ってられねぇかもしれない。」


そんなに………………?


「だから、頑張るよ。」


「う、うん!!応援してる!!」


そう言って彼は、卒業式を迎え、そしてそして。


どこかで予想は出来ていたが、彼は悩みに悩んで言葉を選んでこう言ったそうだ。


「これからも仲良くして欲しい。」と。


その結果。


「あぁ、だから違うんだ。あの報道は誤報で、そう。だから、違う。」


たまたま現場が被った彼は、ヴィランの受け渡しが終わった途端にスマホ片手に飛び出して。


そしてそんな彼に声をかけようと近づけば、微かに聞こえる電話越しの笑い声。


『あははは!!わかりました、と言うかなんでそこまで必死になって電話してくるんですか!』


「そ、それは……。」


『ふふ、相変わらずよくわからない人ですね。明日打ち合わせでしたよね?その話も含めて楽しみにお待ちしておりますね!』


「あ、あぁ。」


携帯を耳から離した轟くん。


「えっと、苗字さんと話せた?」


「あぁ、悪いすぐ抜けちまって。」


「いや全然大丈夫だよ、引渡しは終わってたし!それより……反応はどうだった?」


「……相変わらずよくわからない人って言われた。」


苗字さぁぁん…………!!!


しょんぼり、高校卒業して数年が経過し事務所も独立した僕達。


しかしながら浮かべた表情はあの頃と何一つ変わっていなくて、轟くんの一途さも凄いけれど苗字さんの鈍感さも凄いな。と思い始めた今日この頃だ。

list
top