「…………大丈夫か?」
「えぐっ…………は、はいっ……。」
有精卵程度まで出来上がっていた第72子が亡くなったことと、夢にまで見た轟くんが今目の前にいること。それらの出来事からとりあえず咽び泣く。
「えと、……どのように改良したいとかありますか?」
ぐすん。と涙を飲み込んで、彼がここへ来た意図を聞く。
「……俺の個性は、右から氷結」
「左から炎熱を放つ個性ですよね!!基本的には右側の氷結を使うことが多く、敵の足止めや拘束などで利用の幅が広くそして高火力広範囲に使える個性!!」
「お…………おお…………。」
「……………………。」
や、……やっちまった…………。
意気揚々と彼について語ってから気づく、ご本人の前だと。
…………私が気持ち悪いぐらいに彼を見ていたことがバレた。否バラした。せっかく目の前に憧れの彼がいる訳だが、今すぐにでも逃げ出したい。それが出来ないのなら埋めて欲しい。
「…………すいません……忘れてください……。」
「え、……いや、すげぇなって思ったんだが。」
「え?」
「ヒーロー科との関わりなんてそんな無いのに、一人一人の個性把握してんのか、すげぇな。」
……ち、違う――――!!
でもそうする事にしよう、うん。まぁ、それしか無いし。違いますって言ったらその先は地獄だし、うん。
「そ、そうなんですよ!!サポート科たるもの!ヒーロー科について知っておいて損は無いですからね!!」
明ちゃんの突き刺さるような視線が非常に気になるが、放っておいて声高らかに笑う。
「そ、それでその個性でどのような事を?」
「……左と右をバランス良く、ある程度コントロールして使えるようにしたい。」
「なるほど……。」
とか言って悩んだふりをするが、実は何度も何度もシミュレーションした内容だったりする。彼のその個性は強いが、コントロールをものにしたらさらに強くなる。
しかし、そこでサポートアイテムを使うのは賢い判断だ。きっと頭も良いのだろう、ここに推薦で入ってるだけある…………。
………………と言うか彼は、やはりと言うかなんと言うか。私の事は覚えていないのかな。
いや、まぁほとんど話したことは無いけれど一応同じクラスだった訳だけども…………。
「どうだ、難しいか?」
きょとん、とした顔でこちらを見ている轟くん。……うん、聞くまでも無さそうだ。
「いえ、それならバングルはどうでしょうか?」
「バングル?」
「腕に嵌めるタイプでして、このように……。」
ベイビーを持ってきて彼に説明する。あぁ、夢にまで見た光景。あの氷壁を生み出す轟くんに、私がサポートアイテムの提案をしてるなんて。
胸がわくわくとどきどきでいっぱいだ。話す中で彼の体にも触れさせて頂く。
…………意外と腕が太い。既存のベイビーでは入らないな。
なるほど。と触れては設計図に殴り書きを残す。これらを繰り返し、
「1週間もあれば形に出来ますがどうでしょう、私が作っても良いですか!?」
興奮もそのままに彼を見上げると、思っていたよりもずっと近くて驚く。しかしながらここで負けてはいけない、明ちゃんの方が良いとか、パワーローダー先生が良いなんて言わせない。眼力強く彼を見つめる。
「お、……おお。……頼んだ。」
「ありがとうございます!!!!」
やった!!!念願の!!
こうしちゃいられない、新たなるベイビー第72子を生み出さなければ。彼に苗字に任せて良かったと思わせなければ!!
「必ずや満足いくものを用意します!!暫しお待ちください!!」
部品や工具を片っ端から集めて、私は工房の奥へと引っ込む。彼は少しぽかんとしていたが、まぁ良い。言質はとった、頼んだ。と言う言質を!!
片付けなんて後だ後!!今はただただ生み出したい!!彼が喜んでくれそうなベイビーを!!