「爆豪くん……結婚出来なくなっちゃいますよ……?」
「あ???」
冷蔵庫の中身を見た途端、失礼極まりない発言をした技術者。
突然の呼び出しにも対応し、あの頃と同じく寸分の狂いも無い手さばきで直された俺のコスチューム。
気づけば19時を回っていて、道理で腹が減ったと感じてなんとなしに声をかけた。
夕飯食ってくか、と。
すると苗字は目を輝かせて頷く。今日自炊しなくて良いなんて!!!と。
こいつはいつになったら自主的に自炊すんだ……?と疑問に思いつつも食ってくならまぁそれはそれで良いとして。冷蔵庫を開けて何を作ろうか思考を巡らせた途端聞こえた言葉が冒頭だ。
「だって……作り置きがこんなに……しかもびっちりタッパーに詰めてあって……。」
「作り置き便利だろうが。今度レシピ送ったろか?」
「違いますよ!!そういう意味じゃない!!私に出来るとお思いですか!?」
「その意味わかんねぇプライド捨てろよ!!女としてどうなんだてめぇ!!」
「仕事バリバリしながらでも作り置きとかでちゃんと毎日手作りご飯を食べてる爆豪くん……しかもどうせ美味しいんでしょう……?ただえさえみみっちぃのにこんな爆豪くんに勝てる女子なんていないでしょう……。」
「わかった、とりあえず歯ァ食いしばれ。」
青筋を浮かべながら言えば、ひゃああ!!と逃げていった苗字。恐らく工具の片付けにでも戻ったのだろう。
結婚なんざする気はねぇ、ヒーローなのだから大切なものを作れば作るほど危険に晒される。
だから1人でなんでもやらなくてはならない。その結果あの発言だ、その通りだが他人から言われると何故か腹立つ。
今に見てろ、俺は結婚出来ないのでは無く結婚しないのだとわからせてやる。この、お前には出来ない料理のテクニックで。
冷蔵庫の中身との相談の結果決まった献立を頭に浮かべながら、材料をいくつか抜き取った。
◇
「爆豪くん……良いお嫁さんになれますね……!!」
「あぁ!!?」
それがどうしてこうなった。
「こんなに美味しいご飯を毎日食べさせてもらえる旦那さんは幸せですよ……!!」
「俺は女じゃねぇわ!!!」
「知ってますけど……。それにしたって凄いです、私が作ってもいつもなんかまずそうなのに。」
「実際まずいのか?あれ。」
毎日送られてくる写真は、大体なんか黒い。火の通しすぎが大体の原因だろうが。
「いえ?それなりに美味しいですよ!」
「それなりかよ。」
「はい。でもやっぱり私は料理苦手です…………あ!!そうだ!!私、家事が出来る人と結婚すれば良いのでは!?」
「女としてのプライドはねぇのか。」
「そんなのとうの昔に捨てました。」
とうの昔、というのが学生時代なのではないかと思わされる。あの頃からこいつは機械にばかり触れていて、それ以外の行動を見たことがない。
「逆に爆豪くんは私みたいなプライドのない女と結婚するのが良いのでは?絶対喧嘩にならないし、家事に対するこだわりも貫けるし!」
苗字と結婚……?
「…………誰がお前なんかと。」
「例え!!!例えですって!!」
想像して、ゾッとした。こんな女っ気ないやつと何がどうして結婚なんて。
「お前とは絶対有り得ねぇ。」
「だから冗談ですって!!そんな本気で言わないでくださいよ!?泣きますよ!?」
こいつは世話焼くぐらいで丁度良い。恋人なんてくさい関係なんかごめんだ、結婚なんて更に有り得ない。
「てめぇは精々機械でもいじってろ。俺が困らねぇよう健康第一でな。」
「言い方はあれですけど……言ってることはお母さんですよね爆豪くん……。」
「あぁ!?」