『ごめんなさい、轟くん。今日一緒にご飯作るって話でしたけどキャンセルしても良いでしょうか……?』
送られてきた文面を見て、目を瞬かせる。
珍しい、あいつがドタキャンなんて。……何かあったのか?
そう思い、その旨のメッセージを送ると、
『実は個性事故に巻き込まれまして……かなり不自由な体になってしまったのです。ご迷惑になってしまうかと思いまして……。』
個性事故?しかも不自由な体ってどんな……。
『そんな状態で家まで帰れるのか?身の回りの事出来るのか?』
『それはなんとか頑張ってみます!!』
不安しかねぇ。複雑な機械を組み上げる頭脳を持ちながら、あいつは意外と脳筋だ。ゴリ押しで色々と解決しようとする。
『迎えに行く。今日は定時上がりか?』
『えっ!?大丈夫ですよ。すいませんご心配かけて。』
『定時上がりか?』
『えっ、』
『定時上がりか?』
『は、はい……。』
悪いが俺も折れられない。ゴリ押しで迎えに行っても良いという権利を貰わないと。
『わかった、定時頃迎えに行く。』
はたしてどんな姿なのか、少しだけ楽しみな気持ちと不自由な体という苗字への心配が入り交じった。
◇
「……………………。」
「えっと、轟くん?」
「写真撮っても良いか?」
「え?」
「写真。」
「ダメですよ!?」
そう言って怒っている苗字。だがその目線はいつもよりずっとずっと低い。
幼児化、と言う個性らしく現在おおよそ5歳程度の見た目になっているそうだ。
………………………………可愛い。
可愛い。すげぇ可愛い。
写真…………。
「写真……駄目か?」
「うっ……だ、駄目です。」
「どうしても……?」
「うぐっ。」
「苗字……。」
「……と、轟くんも一緒になら良いですよ!!」
折れた。俺の勝ちだ。
「あぁ、わかった。」
本当は苗字単体で欲しかったけれど、妥協の結果なのだ。意思が変わらぬうちに小さな苗字の横に並んでスマホを起動する。
「……?これどうやって内側に、」
「これです、これ押すと内側に。」
「お。」
教えて貰って画面に映る俺たち。腕を伸ばせばなんとか2人とも画面に収まるが、
「苗字、もう少し寄れるか?」
そう頼むととことこと近づいてきて、ちょん。と俺の膝に手を乗せた。
「これで入りますか?」
そして想像以上に至近距離の苗字(5歳)。
…………………………可愛い。
「あぁ、撮るぞ。」
撮れた写真は緑谷にやり方を教わって鍵をつけた。緑谷の顔はなんか変だった。
◇
「なぁ、俺の家に来ねぇか?」
「……はい!?」
苗字の荷物を腕から下げて、もう片腕に苗字を乗せながら駅へと向かう。
「だってこんな状態のお前1人にするのは不安だ、でもあの部屋で2人いるのはきついだろ。」
「……狭い部屋で申し訳ねぇです…………。」
「俺の部屋、多少苗字の家より広いから2人いても平気だと思うけど……。」
「い、いや!そこまでお世話になる訳には!!それに……。」
「それに?」
「……い、いつ元に戻るかわからなくて。一晩経てば戻るって言われてるんですけど……。」
そう言われて、その意味を考える。
…………明日の朝戻っているかもしれない。
その時、この服は。
……………………………………。
「……変なことはしないって誓う。」
「い、いや!そこじゃなくて!!見られたらと言うか、轟くんが見てしまったらって言うのが問題で!!」
「わかった、なら見ちまったらその瞬間俺の頭に目掛けて膨冷熱波する。」
「はい!!?」
「記憶を確実に飛ばすから。」
「記憶どころじゃなく頭が吹っ飛びそうですけど!?」
「だから、お前を連れ帰させてくれ。……その体じゃ本当に何も出来ねぇだろ。むしろ家事やろうとして怪我する気しかしねぇ。」
「それは…………。」
「……駄目か?」
「……轟くん、私がその顔に弱いって知ってますよね。」
「………………。」
ば、バレてたのか。苗字は多少の頼みならこうやって頼み込むと大抵頷いてくれるから。
「…………わかりました、すいませんお世話になります。」
「あぁ、任せろ。」
苗字の個性が解けるタイミングとか、初めて家に苗字を呼ぶこととか。
色々と気になる点があって平常心でいるのが難しいが、とにかく苗字が怪我しないよう見守れる。その状況に持ってこれた事に一安心だ。