「轟くん!ちょっと私を殴って貰えませんか!?」
「!?」
「い、いいいきなり何言ってるんだい苗字くん!?」
「そ、そそそうだよ!!轟くんフリーズしちゃったよ!?」
「す、すいません!!誤解を生むような言い回しをしてしまいました。」
轟くんがそのままの意図を汲み取って殴りかかってきたら危うく保健室行きだった、危なかった!!
「実はですね、サポート科の課題で防御力の高いサポートアイテムを作るよう言われたのです。どこを防御するかなどは自由でして、防御力はある程度指定されているのですが…………。」
そのある程度、と言うのがなんとも曖昧な目安。という事で!!
「せっかく防御特化のアイテムを作るのであれば、ヒーロー科の人が本気で攻撃しても傷つかない程!!と言うのを目指そうと思いまして!!なのでその破壊力を記録するために、こちらのベイビーを持った私を殴って頂きたくて!!」
そう言って懐から出したベイビー。
「な、なるほど……それでそのベイビーは?」
「こちらは、圧縮シールド!このように収納可能な優れものでして、」
ボタンを押すと目の前に盾のようにして攻撃を守る。
「こちらのベイビーを殴って頂くと、破壊力が数値化して記録出来るようになっています!記録した数値を目安として製作に勤しもうと言う算段です。」
「なるほど……それで俺に殴ってくれって話か……。」
「はい、駄目でしょうか?」
「俺は良いけど、俺以外の……例えば緑谷や飯田のも記録した方が良いんじゃねぇか?」
「……なるほど?」
「俺は基本中遠距離攻撃が多い、でも緑谷と飯田は近距離だ。俺より物理攻撃としては高いと思うぞ。」
「なるほど!!」
「…………って勝手に推しちまったけど良かったか?」
「全然良いよ!」
「あぁ!理にかなっているしな。」
「本当ですか!なら3人分お願いします!こちらのデータは明ちゃんも使うので、明ちゃんのためにもよろしくお願い致します!」
「……発目くんか…………。」
飯田くん、体育祭での事は知ってるし気持ちはわかるけど、中々に酷い顔をしてるよ?もう少し隠しませんか?
◇
「ではお願いします!!」
念の為にフルアーマーも装備して、コスチュームを着た彼らに対峙する。
「じゃあ……行くよ!!」
その言葉と同時に緑谷くんが一瞬で目の前に。
本当に、比喩では無く一瞬。目なんか追いつく暇もなく目の前に来て
「うぐっ!!」
シールド越しに衝撃が来る。す、凄い……!!あんなに素早く移動したのにここまでのパワーも維持するなんて!!
ベイビーに表示された数値を書きなぐりつつ、緑谷くん相手にならどのようなベイビーが望ましいか思考を巡らせる。
「え、苗字さん……?大丈夫!?」
「はい!!大丈夫です!!」
シールドに埋もれたまま、思いついたことを忘れないように書き殴る。なるほどなるほど……あのスピード感だと全方位式じゃないと、まず防げない……。
「お待たせしました!飯田くんお願いします!」
「では、行くぞ!!」
飯田くんはスピード特化の個性。ならば緑谷くんよりも速くて
いっしゅ
ドゴォオオン!!!
「……え、お、おい!?苗字くうううん!!?」
「…………ふふ、へへ……。」
構える隙も無かった……一瞬ですら無かった。なんだ今の。本当に人間の動きか??
……やっぱり凄いなぁ個性って。それを磨いた人の技も本当に凄い。見聞が広がる広がる!!
威力も緑谷くん同様とんでもない。のに速い。これだけ見たら飯田くんは最強になってしまう、だが彼を抑え込むには速さを上回る遠距離攻撃と、行動範囲を狭めるような、
まさに轟くんの氷結のような攻撃が好ましいだろう、とは言えこの攻撃力……防御特化で考えればどう防ぐべきか……フルアーマー一択かなぁ……。
「次、良いか?」
「……はい!!お待たせしました!お願いします!」
次に私の前に現れたのは轟くん。
……もう一度、こんなに近くで魅せてもらえるんだ。
轟くんには近距離攻撃と遠距離攻撃、どちらもお願いしている。だから、
あの氷壁を、もう一度。
「……行くぞ。」
轟くんはスピードでは彼らに劣るが、恐らく地力が高く、
「っ!!」
個性無しの蹴りでもやはりそれなりの数値を叩く。そして、
迫る氷壁。何故だろう、少しの恐ろしさを感じているのに。
……どこまでも綺麗だと思ってしまって。しかし綺麗だけじゃない彼の氷壁がシールドにぶち当たった際の破壊力。
…………拘束メインの攻撃なのに、攻撃力としてもここまでの……!!
「凄い、凄いです!!轟くん!!足止めだけじゃなくて、この氷結自体が攻撃にもなっているんですね!!ここに炎でもぶち込めば、更に高い攻撃力が!!」
「苗字さん……冷たくないの……?」
「冷たいです!!」
あまりの技と美しさに感激してしまっていたが、今や私は足の先から首元まで氷漬け。
冷たい、なんてもんじゃないが3人とも素晴らしい個性と技をお持ちで興奮してしまう。
「悪ぃ、すぐ溶かす。」
「あ!今度は炎熱で攻撃してもらっても良いですか?」
「えぇ!?流石に危ないよ苗字さん!!」
「そうだぞ!?焼かれてしまうぞ!?」
「大丈夫です!!このシールドは轟くんの高温低温攻撃にも耐えられる温度設計をしてあるので!!それに、多少髪の毛等が燃える程度は気にしませんよ!!」
なので、お願いします!!と彼に頼み込むと、
「駄目だ。破壊力は充分取れただろ。」
「それはもう、充分に!」
だがしかし、憧れの轟くん。そして魅了された彼の個性。中々こうして間近で見れる機会なんて無いのだ、余すことなく堪能したい。
それに中学の時は氷結の技しか見られなかったのだ、今はそれに加えて左側の炎熱も使っていると聞く。是非とも是非とも見せていただきたい!!
「ですが、私の趣味のようなものでして……データ取りだけでもお願い出来ませんか!?」
「……危ねぇよ。まだ左側はバングル使っても右側より制御出来てねぇんだ。」
「大丈夫です!シールドありますから!!」
中々首を縦に降ってくれない。……むむ。
「それに、多少の怪我も想定済みです!無傷で帰ろうだなんてこだわりもありませんから!!なので」
「駄目だ。……自分のこと大事にしろ。」
そう言って轟くんは氷を溶かしきって、私のシールドへと手をかけ、
「……。」
バキッ。
「ぎゃああああ!!?ベイビーがあああ!!!」
なんで!?なんでぇ!!?轟くんが手をかけたシールドへとヒビが入り、そしてボロボロと崩れた。
「す、凄いね轟くん……!?僕たちが蹴ってもなんともなかったのに、…………ってそうか!!」
「金属疲労か……!!」
「あぁ。さっき攻撃した時微かに綻ぶ音が聞こえた、だからそこを熱で少しでも脆くして、こうだ。」
「な、なんてこった…………ベイビー……改善の余地あり……。」
とは言え彼らの攻撃4、5発程度しか耐えられないとは。ベイビーの耐久度は彼らの破壊力を侮っていた。
「まぁとにかく……これでシールドは壊れた、炎熱での攻撃は無理だな。」
「はっ!!!」
なんて事だ!!!悲しみに満ちながら轟くんを見上げると、なんとも満足気な表情。やられた……!!
「……今度、今度は更に強靭なベイビーを生み出してリベンジします!!諦めませんから!!」
なんて負け犬じみた台詞を残して工房へと逃げ帰った。ちゃんとご協力ありがとうございました!も残して。