ラブコメディ
「ぎゃっ!!」
「もー、やっと起きた!!ほら、さっさとお風呂入るよ!!」
「きょ、響香ちゃ……。」
「私たち最後になっちゃったから早く!」
「う、うっす!!」
何が起きた。とりあえず顔がびちょびちょ。…………頭に水を掛けられたのか。響香ちゃん、中々やる事が酷い。
慌てて着替えを持ってお風呂に。そしてもう皆いなくなってしまった露天風呂へと浸かった。
「っはああ…………気持ちいー……。」
「……目が、覚めるよ…………。」
「あんた結局ずっと寝てたからね。轟に感謝しときなよ?」
「轟くん?」
「うん。名前食堂で倒れるようにして寝てから、轟が休憩所のソファーまで運んでくれたんだから。」
「え!?そ、そうだったんだ……。」
てっきり響香ちゃんが引きずりながら運んでくれたのかと。
…………やっぱり優しいなぁ轟くん。
きゅ。と胸が詰まって少しだけ苦しい。
「……ねぇ、名前。もう1回聞いて良い?」
「うん?」
「………………好きな人、いないの?」
にやにや。そんな顔をして響香ちゃんが見てくる。
それは、その。その確信に満ちた表情は。
「………………私、なんか変な顔してた?」
「べっつにー?……ただ、轟の話したら……こう……好き過ぎる!!って顔に書いてあっただけ。」
「変な顔してるじゃん!!もう!!」
「あはははは!!……で?本当なの?」
「………………う…………はい。」
恋してしまいました、気になるどころじゃない。今日1日だってドキドキって沢山したんだ。
土魔獣と戦う姿を見た時、私を守ってくれた時、駆け寄って来てくれた時、肩貸してくれた時。全部全部口から心臓が出るかと思った。
「そっかー!!そんな気はしたんだよねぇ。……どう?脈はありそう?」
「脈!?あ、ある訳無いじゃん。轟くんだよ?ぽやーってしてる、轟くん!!」
「……確かに。恋愛とか興味無さそうかも。」
「絶対そうだよー!!こんな気持ち伝えたところでご迷惑になるだけだよ……。」
うぅ、とお風呂に沈み込む。私の恋心も沈み込ませられれば楽なのに。
「まぁーでも……わかんないじゃん?頑張ってみたら?」
「…………どっちみち、簡単に好きでいるのを辞められそうも無いから。……迷惑にならない程度に頑張ってみる。」
「うんうん、その意気だ!頑張れ名前!」
◇
「……………………とける。」
のぼせた、完全にのぼせた。
あれから響香ちゃんに上がるけど、まだいる?と聞かれて、まだ色々と自分の個性のことや轟くんの事、1人でじっくり考えたかったので、彼女を見送り1人残ったのだが、
気づけば長時間お風呂に浸かっていて、上がると同時にふらふら。あやうく風呂場で転けるとこだった。
なんとか着替えて部屋へと向かうが、なんとも足元が覚束無い。
もっと早く上がるべきだった。もう、こんなのになったのは轟くんのせいだ。轟くんがかっこよ過ぎるのがいけない。うん、それがいけない。
今日も散々きゅんきゅんさせて来やがってぇ……と憎たらしく思いながら歩いていると、どん。
「わ、ご、ごめんなさ、」
誰かにぶつかってしまって、慌てて距離を取るがふらふらで足がもつれて、
「ぅわ、」
転ぶ、……まえ、に。
「っと……大丈夫か?」
後ろへと傾き始めていた私の体を、引き寄せたのは
「とっ!!!」
「お。」
轟くんのせいだ、とか責任転嫁していたのがバレたのだろうか。ご、ごめんなさい。お願いします、は、離れて……!!ち、近過ぎる!!
「ああああ、あり、ありがとう!!助かった!!」
「お、おお…………大丈夫か?」
「え!?何が!!?」
「元気そうだけどよ…………顔真っ赤だぞ。」
それは!!轟くんに出会っちゃったから!!近過ぎたから!!
なんて言える訳もなく、あわあわとしていると迫る轟くんの右手。
え!?な、なに、ちょ、手おっきい、じゃなくて!!
何されるのかわからずぎゅ。と目を閉じると頬がひんやりと涼しくなる。
……………………お?
恐る恐る目を開けると、私の頬に手を添えた轟くん。
ちっっっっか!!!
思わず身を引こうとするが、それより早く轟くんの左手が追いついてくる。何その瞬発力!?流石ヒーロー科だね!!実力者だね!!
「待て、まだ赤い。……のぼせたんだろ。」
ちゃんと熱冷ましてから寝ないと駄目だ。なんて、言ってることはお母さんっぽいのに、顔面はイケイケなメンズなので困ってしまうな。ほんと、本当に困ってる。
何を話しても今は駄目な気がして、黙って轟くんに冷やされる。……今思ったけど、こういう使い方も出来るなら結構便利だなぁ。
「……ん。だいぶ熱引いたな。大丈夫か?」
「あ、ありがとう……ごめんね、わざわざ個性、」
「いや。いつも怪我治してもらってるし。これで礼になるとは思ってねぇが…………役に立ったんなら良かった。」
ふわり。空気を含むように笑った轟くん。
まってまってまってまって。眩しすぎる、夜なのに、眩しすぎる、ちょ、ま、あの、
「ああ!ありがとう!!猛烈に眠いから寝るねおやすみ!!!」
「!?お、おお…………おやすみ……?」
駄目だ駄目だ、かっこよすぎる。心臓痛すぎ。過労だ、過労。働きすぎ!!轟くんのイケメンパワーも働きすぎ!!!
せっかく冷やして貰った頬も、既にもう真っ赤へと戻っていることだろう。
この気持ち、抑えきれないこの気持ち、どうしたら良いんだ!!
部屋に戻って響香ちゃんに泣きついたのは、言うまでもない。